水天一碧に飾れ、幾万天の星々 其の二十七
《J》が早々【英雄の奇襲】を決めることができすぐ様攻撃に移る、《J》含む《Q》と《K》を【血の権力者】の元へ向かわせて残りの二本を両手に移す。既に攻撃を加えたことにより【血の権力者】が守護者の体の状態で攻撃するのには血攻撃だけしかできないのは明白だ。引き続き牽制も兼ねての攻撃を仕掛ける為【血の権力者】に近づく
《K》を【血の権力者】に攻撃を向けさせるがその時《K》に向かって血が飛びかかるが…
「【王の権威】」
《K》の周りに膜が現れ攻撃として飛ばされた血が膜にまとわりつくが振り払わずとも血が垂れていき攻撃などそもそもなかったように振る舞っていた。そのまま【血の権力者】に攻撃を与えようとするが即座に避けられ【英雄の奇襲】で負った傷を治していた。
『攻撃をしたと思ったのだが…何故か短剣に近づいた途端自身の血ではなくなった気がした…今攻撃した短剣か?』
「知って変わることはない…がそれを気にして行動を縛ることができるなら教えるのも一つかもしれないだろ…《J》!」
喋って相手の注意を引き既に準備を終えていた《J》が再度【英雄の奇襲】を行い【血の権力者】の腕を狙うが既の所で避けられてしまった。流石に始めの攻撃で警戒をしていたと考えれば無理はない。このまま追撃して【血の権力者】の動きを止めれればいいのだが…
『消える短剣は少々面倒だが…そこまで脅威ではないと理解できたのはいい』
「手数が少ないからな」
『抜かせ【血狂】』
近づいてきた私を捕らえようとするつもりなのか理解でいないが目の前で開くようにして現れた網は【金星】の素早さで避け切ると目の前に赤黒い剣を振り翳していた【血の権力者】がいた。予測していたか反応できるようになってきたのか…長期戦だと必ずしも不利になっていくようだがそれでいい。
『!?』
両手に持っていた短剣で攻撃をそのまま受け止め一瞬の硬直を狙い指示待ちだった残りの三本が攻撃に移らせる。身動きのできない状態の【血の権力者】は迫り来る三本に視線を動かすと背中から触手の類を生やして攻撃を止めようと動かし先端だけ皮膚に当たったのだが弾かれ体の関節を外したのか小さい体で出したとは思えない横からの繰り出された大振りの蹴りによって引き離され戦いの最中で崩れ瓦礫の山となった場所にまで吹き飛ばされた。
『とても気色が悪い、お前のその五本の短剣から繰り出す攻撃にそして支配下に置くことが未だにできていないこの体の主が生きたいと願うその気持ちを感じさせるのもだ』
「皮だけで暴れたとしても、魂が拒絶するのならお前にとってはいい薬だ」
『確かにいい薬だ。裏を返せば少しずつではあるが守護者と同化できている…魂を覗けば記憶を見ることができる。血は正確だ、その時何をしていたかなどハッキリ見せてくれる。現にその短剣が何なのかも多少は理解できた』
『さっきの呼び名はトランプ…という奴の一つだろう。海底でしか居場所がないこの体は何故か地上に上がり何かをしていた。断片的だがそのトランプという奴が記憶の中に残っていた…不思議だと思わんか』
瓦礫に埋もれた体で必死にもがいているとゆっくりとだが確実に近づいてくる【血の権力者】が喋っていたがとてつもない殺気を感じすぐ様【金星】を使って瓦礫から身を離し距離を取るのだが気配すら感じさせなかった鎌が首に狙いを定めており左手に握りしめていた《A》で弾き一直線に駆けつけさせた《Q》に魔力を流し込む。
「【女王の領域】!!」
鎌にぶつかった《Q》は指示通りに鎌の魔力を勢いよく消し去り血が水のように垂れていき難を免れた。首を触りどこも怪我をしていないことを確認していると背後から再度殺気を感じ攻撃用に待機させていた《J》と《K》で防御を取り一撃を耐えることができたが相手が持つ血の双短剣により弾き飛ばされていた。
《Q》で再度同じことをしようとしたがすぐに止めて《A》を前に出して【血の権力者】の攻撃を強制的に止めさせ足元から【淵箱】を展開させて【超煌弾】を撃ち出し爆破させ《A》を再び突き出して爆発に突っ込み爆発の中で見えた【血の権力者】に攻撃が当たりそうになるが…擦り抜けた。
「【透過】か…!」
『左様、今の爆発さっきよりも早かったが言っただろう?魂と同化し始めているのだと』
攻撃を読み切ったと思っていたが相手の方が一枚上手だったようだ。それまで使うことさえなかった【透過】を今更にして使い始めた、【血の権力者】の言う同化とはそういうことか。心の中で整理しながら段々と強烈になってくる攻撃を躱し、弾き、時には攻撃に移るのだが後少しの所で必ず【透過】が相手に攻撃を通すことはなかった。
右手に持っている〔道化師の切札〕の《A》だけキープしてそれ以外を攻撃に回し相手の攻撃の防御に、そしてカウンターに回して【透過】の効果が切れるまで殴り続ける。手数が少ないと判断したのか【血の権力者】の腕の本数を増やして対応してくるが〔道化師の切札〕の真骨頂は対応にある。
連続して切り刻んで来る短剣、斧、剣、刀と出せる限りの武器を振り続ける【血の権力者】よりも正確に、確実に〔道化師の切札〕が防ぎながら次に出す攻撃を見極めながら捌く。《J》が《Q》が《K》がそれぞれに備わる能力を全力で活用し癒し、守り、攻撃を加える中並走する【血の権力者】と何度も刃をぶつける。
さっきまでの攻撃が嘘と言えるくらいの速さになってきた。今は攻撃が全て【透過】による妨げで面倒事になっているだけだと言うのに勢いだけで押し切ろうと考えているのか…?体のスレスレを通る血で造られた武器を叩きつけ破壊し地面を弾き【血の権力者】に当てようとするが当たりそうになったところを事前に抉り取って攻撃を避ける荒技に出始める始末だ。
そして、足を踏み込み前進して直接間合いに入り込むとそれまで〔道化師の切札〕よりも私自身に攻撃の矛先が向くが《A》と《K》が瞬時に守りに動き短剣を前に突き出すが地面から現れた槍が進み先を妨害してくる。
即座に練り込んだ【風刃】と四本の〔道化師の切札〕が槍を八つ裂きにして進み道を無理矢理押し込み無防備になっている【血の権力者】に一点集中の攻撃を繰り出すが…
『追い込まれその度に魂はそれ相応の力を出す、俗に言う絶体絶命と言う時には以前よりも倍近くの力が出たりするらしいが…我は【血の権力者】人間の戯言は果たしてそれに値するものなのだろうか』
一瞬の出来事だと言うのに【血の権力者】の言葉がやけにゆっくりと感じ取れた…それまでが相手の術中だったとでも言うかのように…計算尽くして相手の【透過】が消えるタイミングを図ったが後ほんの少しの所で届かなかった。
周りを埋め尽くすほどの血の触手がジリジリと近寄ってきている…攻撃するタイミングを間違えたようだ、〔道化師の切札〕は全てこの攻撃に使ってしまい残っているのは《A》の一手だけ…
「だったらその絶体絶命を覆してやるだけだ【革命】」
手元にあった《A》は《J》《Q》《K》へと変化しその切札に備わる能力を発動させると一面埋め尽くされた血の触手が手品のように消え後退していた少女の姿をしている【血の権力者】が信じられない顔でこちらを見ていた。
『場に出ていたのは五本の短剣、特徴はそれぞれ違って攻撃、回復、防御と全て異なる筈なのに…何故お前が持っているのが存在しない二つ目の切札なんだ…!』
「嘘をつかれるのは生きてる中で初めてか?初めてだったら嫌になる程、味が出なくなる程噛み締めてろ。だって目の前にいるのは道化師だ手品くらいやってみせる」
『クソが!』
大きく吠えるだけの【血の権力者】は既に間合いに入り込んでいた私に攻撃をするために握り締めた私の大事な『燦澹』を振るうが手に持つ二枚目の《A》以外の〔道化師の切札〕が受け止め【血の権力者】の手から落とし【淵箱】に収納させる。攻撃手段がなくなった【血の権力者】は手から武器を造ろうとするが即座に手を斬り落とすが体から剣を飛ばし無理矢理攻撃を遮られる。
『【禍血】!!』
「《J》!」
真上を飛んでいた《J》に声を掛け目の前で溢れかえった血を断ち切り再度【血の権力者】に向けて腕を伸ばし短剣を差し込み感じ取れる核に向かって刃を動かし後を追うように他の〔道化師の切札〕を差し込もうとした時、周りで舞っている土埃を掻き分け刀を構えていた人影が突如現れた。
『グヌゥゥゥゥゥ!?また邪魔がァァァ!』
「目の前の道化師の芸を見ずに何の真似だ?もう終幕は近い、こっちだけを見ろ」
もう既に体に五本も〔道化師の切札〕が入り込んでいる。今アウェルが入り込んで攻撃を警戒するよりも危機的状況をどうにかするほうがいいと言うのに何故だ?
ある一つのもしかしてが頭の中で通り過ぎた。今戦闘をしているこの状況下で何故アウェルに視線を移したのか、あいつは今アウェルにとって親しみのある守護者の姿になっている。それは皮である【血の権力者】が見ただけの行動が魂が、血がよく知る人物をより鮮明にさせる…たったこれだけで乖離していたはずの魂と皮だけの【血の権力者】との間はより強固となり、そいつの言う記憶がより掘り出され技の引き出しが増えてしまう。
『【血余曲折】』
言った通りだった、斬りつけた傷もいつの間にか回復され一番近づいていた目の前で溢れ始めた光が視界を潰し始める。《A》を《K》に変え【王の権威】を発動させ、本物の《K》をアウェルの服の襟に差し込ませる。自分は死累人だから多少の攻撃は魔力による自己再生で何とかなるが生身でどのような効果があるか分からない光を浴びせるよりか建物にぶつけさせて避けさせる方がマシだ。
咄嗟の判断で光が周囲に浴びせるよりも早く動いた二本の《K》は共にその場の王を守る為に能力を発動させて攻撃を逃れる。光が止んだ所をタイミングで止まったままだった【血の権力者】に刃を振るが…
「【王の」
『目が霞んだか?』
いつの間にか背後に回っていた【血の権力者】に握り締められていた斧槍が《K》の【王の権威】を発動させる間も無く胸を滑るように斬りつけ嘲笑っていた。
斬られた、叩きつけられて出来た痛みよりもまだ演じられる。まだ騙せると言う感情が新しい私の動く原動力に火を付ける、〔道化師の切札〕の手品を見せ終えていない…まだ【血の権力者】に《鬼札》を見せていない。心の中で動く私でさえ理解できない衝動はそのまま体が実現していた。
「【完全再現】再現するのは親愛なる主…手元には何故か『変光星』が…」
血が垂れ倒れていく死累人は目を離した途端そこにいたのは親愛なる主の似姿、目を見開く【血の権力者】…今の道化師は何でもできる。もう魔力の制限は消えた、短剣は送りつけた、後は本命の登場までの場の掻き乱しが仕事だ。




