第十四話 出会い①
あれからステラさんと別れ、僕はソフィさんとこれからのことについて助言をもらった。
僕は冒険者ではなく、冒険者見習いという形になるようだ。
冒険者見習いとは冒険者を目指している人のことを言う。
僕のように、まだ試験に受かっていない人のことだ。
そんな冒険者見習いは当然、依頼を受ける事ができないため、収入もない。
僕も、お金を一切持っていないため、このままでは冒険者になる前に死んでしまう。
そんな、冒険者見習いはギルドから、補助金として、生活の援助を受ける事ができる。
この時受け取った補助金は、ギルドへの借金という形になっていて、冒険者となったときに
少しづつ返していくようだ。
この制度を教えてもらい、僕はソフィさんに勧められるまま、契約書に名前を書いた。
正直、補助金が無ければ、生活もできないため、これは相当ありがたい。
ギルドは冒険者を支援する組織と聞いてはいたが、ここまでとは思わなかった。
「はい。これでナナシさんは冒険者見習いとなりました」
「これでお金が借りられるわけですか」
「そうですね。ただ、その代わり生活には制限が付きます」
そう言って説明してくれた制限はいろいろあった。
お金を借りる際には、ギルドに目的などを書いた書類を提出すること、
食事はギルド併設の食堂を使うことなど様々だ。
だが、どれも無駄遣いを防ぐ目的があるように思える。
その中でも一番大きいのは住居についてだろう。
僕はこれから冒険者になるまで、ギルドが保有している宿舎で生活することになった。
そこでは僕と同じように冒険者を目指す人たちが生活しているという。
だが、これも僕にはありがたい。
やはり冒険者を目指したのは間違っていなかったと思う。
「では今日ももう遅いので、ナナシさんの部屋に案内しますね」
そう言ってソフィさんは地図を渡してくれた。
「一応、ナナシさんには周辺地図を渡しておきます。何かあったら、これをご覧になってください」
「ありがとうございます」
見れば、ギルドの位置と宿舎の場所、周辺の店などの情報が細かく書かれていた。
武器屋、飲食店、服屋など・・・多くの店がある。
中でもぐるっと赤いペンで囲まれている場所があった。
分かりやすいようにしたのだろう。
そこにはギルドと書かれていた。
そして宿舎はギルドの裏側にあるようだ。
「それではご案内いたします」
そう言ってソフィさんは受付から出て、ギルド出口へ歩き始める。
僕も遅れないように後ろをついていった。
そうして歩くこと三分ほど。
ギルドの横を通る道を歩き続けると宿舎についた。
なかなかに古い建物だ。
木でできているのだろうか。
ギルドは堅いイメージだが、宿舎は脆そうだ。
風が吹いたら飛んで行ってしまうのではないかと思うほどだった。
「建造してから五十年ほどたっておりますのできれいとは言えませんが・・・」
申し訳なさそうにソフィさんが言う。
「いえ。全然気にしません。むしろ、屋根があるという点で素晴らしいです」
今まで森で寝泊まりしていたため、これくらいのことは気にならない。
そういうと、気づかいととられたのかソフィさんが「ありがとうございます」と言った。
「それでは入りましょうか」
「はい!」
「緊張していますか?」
「実は・・・そうです」
「フフッ。大丈夫ですよ。ゴーストはいないはずですので」
「そこは、考えてませんでした・・・」
「あら。では余計なことを言ってしまいましたね」
いたずらをする子供のような顔でソフィさんが言う。
「ナナシさんはゴーストは知っているのですね」
「そういえばそうですね。なんでだろう・・・」
「また、新しい発見ですね」
ゴーストか・・・。
もしかしたら記憶を失う前に、何かあったのだろうか。
「もしゴーストが出ても安心してください。彼が守ってくれますよ」
ソフィさんが言う彼とは誰のことか分からなかったが、よく見ると、扉の前に犬がいる。
大型犬だろうか。
黒い毛並みをなびかせながら、黄色の瞳がこちらをじっと見ている。
こちらを見定めるように見られているため、なかなかの圧がある。
鍛えられた足についている鋭い爪でなんでも切り裂けそうだ。
「ナイトウルフの『クロ』です」
「ナイトウルフ?」
「ナイトウルフというのは、オオカミの一種ですね。黒い毛並みが特徴です」
「魔物ではないんですか?」
「はい。とってもいい子ですよ」
そう言ってソフィさんはクロに手を伸ばす。
するとクロがコロンと寝転び、お腹を向けてきた。
「すごいなついていますね」
「はい。クロは私がギルド職員になる前からいるんですよ」
「というと・・・大先輩ですね」
「はい!それにものすごく強いです」
「確かに牙や爪が強そう・・・」
「それにものすごく頭がいいんです。普段はこうして宿舎の前で過ごしています」
「だから番犬・・・」
「クロがいれば安全です!」
クロのことについて話すソフィさんは少し口調が砕けていてほほえましかった。
僕もこれからお世話になる身だ。
挨拶しておこう。
「ナナシです。よろしくお願いします」
クロはこちらをじっと見つめた後、手を差し出してきた。
僕も手を出し握手をする。
なるほど。とても賢そうだ。
「ではいきましょうか」
ひとしきりクロをなでたソフィさんが扉を開けてくれる。
僕もクロをなでたい気持ちがあったが、まあ機会はあるだろう。
誘われるままに、一歩踏み出した。




