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第十一話 始まり

森を抜けた後、ステラさんが町まで案内してくれることになり、僕らは草原を歩いていた。

ステラさんはギルドで依頼を受けているため、報告しなければならない。

道中、ステラさんは町とギルドについて話してくれた。

ここから一番近くにある街は『ソーバ』というところらしい。

そこでは多くの人が生活しており、他の街とも交流があるため、

地方から様々な品物が運ばれてくる。

また、ギルドもあり、そこで冒険者試験を受け、合格すれば冒険者として認められるようだ。


「試験は僕でも受かりますか?」

「今のままだと無理ね。ちゃんと試験勉強してからでないと」

「難しそうですね・・・」

「そうでもないわ。ちゃんと勉強すれば受かるようにはなってるから」


ステラさんがはにかみながら言う。

僕は冒険者としてというよりも人として知らないことが多すぎるのでまずはそこからだろうが・・・。

そうなると普通に生活していけるかも怪しい。


「そんなに心配しなくても、ギルドでサポートしてくれるから大丈夫よ」

「サポート?」

「そ。ギルドは冒険者だけじゃなくて冒険者になりたい人も助けてくれるわ」


どうやら僕が思っていたよりも手厚い対応のようだ。


「そういえば、ナナシってお金持ってる?」

「お金なら持ってません」

「そうよね。まぁ仕方ないか」

「お金が必要なんですか?」

「町に入るときにね。まぁ心配することでもないわ」


何やら僕が街に入るにはいろいろな問題がありそうだ。


やがて草原を抜け、切り開かれた道を歩いていくと目の前に大きな石の壁が現れた。

徐々に近づいてくる壁ドキドキしながら歩き、橋を渡ると門にたどり着く。


ふと見ると鎧をまとっている兵士が二人、門の両端に立っている。

手には長い槍を持ち、僕らを見つめてきた。

なかなかの圧だ。

じっと見られているような感じがして落ち着かない。


「すみません。街に入りたいのですが」


ステラさんが兵士の一人に話しかける。

僕もステラさんの横に立ち、話を聞く。


「分かりました。では身分証はありますか?」


身分証?僕はそんなもの持っていない。

焦っていると、ステラさんが小さい銀色の首飾りを取り出した。


「どうぞ。それとこっちの人は身分証はありません」


そう言ってステラさんは兵士にお金を渡した。

すると「確認しました。どうぞお入りください」と言って通してくれた。

僕は慌ててステラさんに確認する。


「どれくらいお金を払ったんですか?」

「ちょっとよ。気にしなくていいわ」

「そうはいきませんよ。ちゃんと返します」

「あははっ!期待してる」


そう言ってどんどん前に進んでしまう。

やがて大きな石の壁を超えるとそこには街が広がっていた。

石で舗装された大きな道に沿って様々な店が立ち並んでいる。

これが街か・・・。

どこからか肉が焼けるいいにおいが漂ってくる。

店にはいろいろな果物や、服などが並び、つい気になってしまう。


「ここが『ソーバ』よ」

「すごい・・・人がいっぱいだ」

「そこ?まぁいいけど」

「だって人がいっぱいいるじゃないですか」

「そりゃ街だからでしょ」


なにを言っているんだという目で見られるが仕方がない。

自分でも何を言っているのか分からないからだ。

そんなおかしなテンションになるほど僕は興奮していた。


「早くいくわよ」


バシッと頭をたたかれて我に返る。


「あ、はい。」


目の前に広がる大通りを抜け右に曲がると大きな建物にたどり着いた。

木で組み立てられているようだが、かなりの年季を感じる。

すると、背中に斧を背負い、防具を付けている男の人が三人出てきた。

男たちはこちらに防具の音を鳴らしながら、近づいてくる。

すれ違う時にちらっと見えたが、そうとう鍛えているようだ。

僕よりも腕や足が太い。

もしかして・・・ここがギルドだろうか?

そのまま、ステラさんは赤色に塗られた木の扉を開け、中に入っていく。

僕も続いて足を踏み入れた。

途端に歓声が巻き起こる。

僕が何かしたのかと思ったが違うようだ。

周りにいる人たちが食事をしながら話している。

どうやら周りの人たちはステラさんに注目しているようだ。

ところどころで「あれが翡翠(ひすい)の星か・・・」というような話声が聞こえる。

皆、剣や、槍を横に携えている。

目線も鋭く、圧を感じる。

僕がそんな人たちに怖気づいているのとは反対に

そんな声が聞こえていないようにステラさんは一直線に受付に向かった。

そこに座っている茶髪が似合う若い女性に話しかける。


「依頼完了報告に来たわ。ソフィ」

「お疲れ様。ステラ」


魔石を渡しながら会話をする。

気軽に話しかけていることから、相当仲がいいことが分かる。

友達だろうか?

僕はというとどこに行けばいいのかわからず、ステラさんの後ろについているだけだったからか、

周りからの視線が強い。

思えば、僕はずっとステラさんの後ろにいるなと場違いなことを考えて、気を紛らわそうとしていると

「この子がそうなの」とステラさんが言った。

慌てて意識を取り戻し、ステラさんと話している女性の顔を見る。


「初めまして。私はこのギルドで受付をしています。ソフィです」


丁寧にお辞儀をしながら自己紹介をしてくる。

僕もつられてお辞儀をして言った。


「はじめまして。僕はナナシです。よろしくお願いします」

「冒険者になりたいそうだから連れてきたわ。記憶喪失だから大変だと思うけどよろしく」

「え、記憶喪失?」


まじまじとソフィさんが見つめてくる。

茶色の瞳に見つめられて僕は少し照れながら言った。


「はい。そうです」

「森で迷子になってたから連れてきたの」

「ちょっと待って。何も分からないんだけど」


混乱しているのか少し口調が崩れている。

それからステラさんは僕と出会ってからのことを簡単に伝えた。


「それで冒険者・・・」

「そうよ。お願いできる?」

「お願いってどうすれば・・・こんなの初めてよ」


そう言いながらもソフィさんは腕を組んで考えた後、「分かった」と言った。


「できるだけのことはする」

「ありがと!」

「ほんと調子いいんだから」


そう言ってソフィさんは呆れながらも柔らかく微笑む。

やはり相当親密な中のようだ。


「そうしたら場所を変えましょうか。冒険者について説明いたします」


そう言ってソフィさんが受付から出て、奥に続く道を示してくる。


「分かりました。お願いします」

「私は待ってるから」


そう言ってステラさんは受付から離れ、近くの席に腰かける。

僕はソフィさんに従って部屋に向かう。

思えば、ずっと誰かの後ろを歩いている僕だった。

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