第七話 幻術士
その後、座学を終えたジェイは、魔力器の検査を受けることになった。
なにやら、水晶球のような魔法具に手を当て、その反応でどれくらい活性化しているか調べるという形式だったが、弱弱しい光が少しちらついた程度だった。
ジェヴォンズの話ではやはり、エーテルの外部供給に頼っていたために、魔力器がだいぶ弱っているという。しかし、帝国人にしては強いほうではないか、と言われた。
帝国にいたころはおもに害獣・害虫の駆除を行っていた。下水道とか路地裏で、魔界からの魔力により変異したおぞましいそれらを、魔法銃で撃ちぬいたり、魔力で剣を作って斬っていた。もっとも、帝国ではこちらに比べて魔界からの穴の、サイズも出現頻度も比べ物にならないほど小さく、敵もカルドランドの冒険者からすれば鼻で笑うようなものなのだろう。
ジェヴォンズからはひとまず、剣に魔力を篭める訓練は欠かさないようにしたほうがいいと言われた。ほぼ未使用のために鈍っている魔力器が活性化すれば劇的に持続力は上がる。ひと月ほどでそこそこ戦えるようになるだろう、とのことだった。
授業が終わり、司祭やリトに挨拶して帰ろうとすると、ともに講習を受けていたひとりの少女が話しかけてきた。
銀縁の眼鏡をかけた、どちらかと言えば地味な容貌だったが、妙な皮製のマスクで鼻から喉までを覆っている。
マスクの少女はフランチェスカ・ワデルと名乗った。王都から旅をしてここに辿り着いたという。今年で十八歳、学校卒業を機に、本格的に冒険者としてやっていくつもりで、相棒を探していたのだという。
「わたしは隠密・隠蔽特化の幻術士。このマスクはわたしの祖先が使っていた〈影呑み〉という魔法具です、古代帝国の盗賊が持っていた秘宝を改造したもの、とのことですが、これがあれば機械や植物すら欺く、魔界的隠蔽を可能にしてくれる」
生来この少女――フランは隠蔽の魔法に長けていた。それがマスクの力でさらに強化され、随一のものとなったが、彼女は攻撃魔法は不得手、力もない。しかし、先ほどジェイが司祭に話していた、「何でも斬れる」というざっくりした説明を聞いて閃いたそうだ。
「ジェイ、あなたにはわたしの剣となってもらいたいのです。わたしはあなたを覆い隠す外套となる。即ち無敵、一騎当千。ハルミナの財布にかけて」
淡々と語るが、フランはすでにこの戦略での成功を確信しているようだった。
ジェイは、いいアイデアだが剣を使いこなせるまで待って欲しい、と言い、パーティ結成を承諾した。
フランは、その剣をギルドに登録したか、と尋ねた。探知の魔法をかければ盗まれた場合の追跡を可能にすると同時に、所有者でない人間がそれを持って城壁を越えると分かるようになる、とのことだ。もちろん、前日にオルテンシアに言われて済ませていた。
あとは剣の名前が必要、象徴的銘が。考えてほしい、と言ってフランは宿に帰った。なんともマイペースだな、とジェイは思いながら、腰の剣を見つめた――名前か。




