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Adventurer J/隣国への転移  作者: 澁谷晴
第六章 七番目の勇者
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第三話 封鎖計画

「愚痴を聞かせた後でなんだけど、本題に入ろうか。私とアデレードの邪魔になりうる、その〈眼〉を封じたかったんだ。先ほど〈洞穴を這いずるもの(ケイヴクロウラー)〉の正体を君は垣間見たはず。バラしてしまうけれど、彼は第五次災厄当時のフィルベルグ人だよ。竜に無謀な戦いを挑んだ冒険者のひとりだ。とても無残な最期だった」


 少女はまるで当時を見てきたように語る。彼女はエルフか吸血鬼なのか、いや、この異様な空間を考えればそれ以外・以上の何か――


「彼の幼馴染が重い病気にかかった。危険な洞窟にその薬の材料を取りに行かなければならないのに、誰も請け負ってはくれない。辺境地だから冒険者の数が少ないのもあったけれど、結局彼は自分で取りに行かざるを得なかった。もともと冒険者にあまりいい印象は持っていなかったけれど、まさか自分がそうなるなんてね。


 彼の希望は祖先伝来の魔剣だった。それでどうにか洞窟を攻略し、薬の材料も確保できたけれど、探索を終えて外へ出たら空を竜が覆っていた。魔剣も竜の群れには通用しなかった。薬を届けることもできず、彼は骨も残さず焼かれた」


「あなたはまるでそれを見ていたような――」


「見ただけじゃない。彼の〈物語〉を体験したんだよ。彼だけじゃない。他の何千、何万の冒険者の物語を、私は生まれる前に体験(・・・・・・・・)した。勝てるはずのない戦い。混乱、恐怖、焦燥、絶望。何度も何度も何度も。私たちはそんなことが起こらない、誰も冒険しなくていい世界を作りたいんだ」


 少女の表情は相変わらずうかがい知ることはできなかったが、声色は平坦なままだった。彼女は続ける。


「そのためにまずは迷宮公社を運用する。設立目的は君の知っている通りだよ。すべての迷宮の確保・管理。そして探索が終わったら順次閉じていく。あんな危ないものが国内にあったら困るからね。君の眼はちょっとばかり邪魔だから――」


「まさか僕の眼を抉り取るなんて言わないでしょうね」


 若干の不安を覚えてジェイは言った。少女は即座に首を振る。


「そんなはずはない。私たちは口外して欲しくないだけだよ。そういう魔法もあるけど、今回はもっと確実な処理をする。君の中からその〈ルート〉を取り除く。怪しい男を見たら過去の災厄の光景が見えた。それを人に話してしまう未来、世界を、ここで無くしてしまう。もちろん苦痛はないから安心してよ。君はこれまでの人生で無数の選択をしてきた。今回はそのひとつを、私が代わりに決めてしまうだけだ。一生入らない路地、会わない人、聞かない歌。それと同じだから」


 少女が手を伸ばす。ジェイは動くことができない。そして気がつくと、イザベルとダリルとともに迷宮の外に出ていた。白い空間も少女のことも、すべて彼の頭からは消えていた。


   ■


 いくらかの魔物や奇妙な冒険者たちと出会いはしたが、結局無事に脱出することができた。この事実は多少なりジェイの自信にもなった。


 その日は警察署に拘留されたが、翌日無事に解放された。どうやらバーナビー村で〈グリムの右腕〉は討伐され、ジェイの容疑は晴れたらしい。

 イザベルも仲間の吸血鬼が保釈金を積んで、釈放された。ダリルは実際に犯行に及んでいるのでまだかかるらしい。イザベルは、ダガーピークを訪ねることがあったら殺人鬼の噂でも手土産に挨拶に来てよねぇ、と別れを告げ、街を出て行った。


 何か忘れていることがあるような気がするが、思い出せなかった。

 迷宮で遭遇した男と同じ、黒いサーコート姿の迷宮公社の社員を見かけたとき、何かが連想されたが、彼らをいくら見てもそれは判然としない。


 違和感はひとまず置いておくことにして、ともかくこれからどうするかだ。

 手持ちはほとんどない。こうなれば、ここの冒険者ギルドで旅費を稼ぎ、王国へ戻るしかない。


 帝都へ来たのも何かの縁だし、両親が在籍していたというクランへ顔を出してみようかとも思ったが、その場所も分からないし、そこへ行く交通費も稼がなくては。どちらにしてもまずは最寄の冒険者ギルドへ行くべきだろう。


 警官に道を尋ねると、〈硝子の月〉亭という酒場に隣接してギルドはあるらしかった。

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