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Adventurer J/隣国への転移  作者: 澁谷晴
第二章 虚無からの軍勢
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第一話 帝都にて

 ノヴィレグナ帝都。アウレア(黄金郷)との名前とは裏腹に、大量のエーテルの蒸気で空は覆われ、どんよりと灰色に染まっている。

 馬鹿げた高さの建造物、道路を埋め尽くす車列。低くうなるエーテル供給塔。


 百年ほど前、稀代の魔導技師エルモア・フォーマルハウトが欠けていたピースを作り上げた。大気中から〈力〉を抽出する方法だ。この技術は文明を一段階上のステージに引き上げた。


 たちどころに帝国は機械の力で、かつての栄光もかくやというほどに繁栄した。大量生産された機械、安定制御の魔法によって人々はしかし、冒険を忘れてしまった。


 ジェームズ・ジョンソンは二十一歳、帝都外郭地区で働く冒険者だ。冒険とは言っても、実際は雑用係・下働きに等しい。三年間、小動物や害虫といっていい〈魔物〉の駆除で食ってきたが、いささか疲れた。しばらくどこか遠くへ旅行でもして、骨休めがしたかった。


 王国へ旅立つのもいいかもしれない。冒険者たちが築いた英雄の国、そんな伝説じみた噂ばかりが耳に入ってくる。この猥雑な街よりも少しは、心が休まるかもしれないな。


 ギルド前の通りを歩いていると、白い髪の女が話しかけてきた。


「ねえあんた、いい仕事があるんだけど乗らないかい」


「危ねえやつじゃないよな?」ジェームズは用心深く言った。「オレはもうじき休業して旅行へ行こうと思ってんだ。その前に怪我なんざしても、つまらねえだろ」


「大丈夫だって、ミスター・ジョンソン。危険なんてないのさ」白い髪の女はどこかからかうような口調だ。


 こちらの名を知っているということは誰かからオレのことを聞いたのだろうか。ジェームズは訝しむ。何度か彼女の顔を見たことはあったが、話したことはなかったはずだ。


 警戒を解かずにジェームズは詳細を話してくれ、と促す。


「大聖堂西で迷宮が発見されたのは知ってるね? 地下鉄延長工事の最中、入り口が開いたのさ。そこを探索してもらいたいんだよ」


 その話なら聞いていた。しかし、目ぼしいお宝は見つからず、大して広くもないということだった。


「いいや、まだ見つかってない魔法具があんのさ。東側の小部屋の奥、そこの壁が開くようになってんだ。その中にどうやら何かがあるらしい。どうだい、行ってみないかい」


「あんたが自分で行くってのはどうだい」


 疑いの視線を振り払うかのように女は首を振って笑う。どうにも胡散臭いな。


「何が狙いなんだい、あんた。はっきりと言ってくれたら嬉しいんだが」


「ああ、あたしはあんたと今後協力関係を築いてきたいのさ。そのためにゃまず信用されなきゃいけないだろう、ミスター・ジョンソン」


「オレと協力? どうしてオレなんだ。いったい何をさせたい?」


「我らの頭目の計画の助けとなる人材を探してるのさ。今はまだ話せない、だけどいずれ、またあたしはあんたの前に現れるよ」


 思わせぶりに言って、白い髪の女は立ち去った。こちらをきっと担いでいるのだろう。大して広くもない迷宮が探索された際、壁の隠し通路が見つからないなどということがあるだろうか。

 そしてその大層な計画とやらに、しがない冒険者の自分が選ばれるというのも疑問だ。


 しかし、ジェームズはその迷宮に向かうことにした。まさか罠ということもないだろうし、彼女が自分をからかっているというなら、次に会ったときに酒でも奢ってもらえばいい……


 この日を最後に彼は、しばらく帝国を離れることとなる。女の言う通り見つけた、魔剣の力によって――

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