第十三話 密談
魔力の鎖で捕縛された追いはぎを伴ってフェルネストへ戻ったオルテンシアは、門衛のギル、ならびにギルドの同僚たちにその戦いを話し、さらなる屈辱をホーニゴールドへ与えた。保安官マイルズへ引き渡して賞金を受け取り、一件落着と思われた。しかしもちろん、犯人に人狼の力を与えた人物がいるはずだ。
吸血鬼や人狼などの〈呪われ〉――当人たちやソルフォール出身者に言うと怒られる――は、噛んだ相手が即座に同族となるわけでもないし、全員がそうなるわけでもない。込み入った儀式が必要だし、個人差の大きい適合率によってどれほどの変異が起こるかが左右され、完全に変わるまで数ヶ月かかる。
こたびの〈感染源〉となった人狼が、ホーニゴールドに協力したのかもしれないし、あるいは大都市の路地裏に潜んでいるような〈引き込み屋〉が金ずくで彼をそうしたのかもしれなかった。
聴取は叶わなかった。牢に入れられた人狼から聞き出す――あるいは、犯罪者相手にのみ使用が許可されている読心の魔法で調べるかして真相を暴きだす――その前にことは起こったからだ。
牢屋にて屈辱に震えるホーニゴールドの前に、そいつは姿を現した。牙をむき出しにした、凶暴な印象の男だった。警備はなぜか彼に気づくことはなく、その堂々たる歩みを引き止める者はいない。
「よお、お前さん、こっぴどくやられちまったじゃねえか」
男の来訪に気づくと、虜囚はすがり付くように言う。「あ、あんたか……だ、出してくれ! あんたに人狼にしてもらうまでは良かったんだ。もう一度チャンスをくれよ! あのエルフのやつを倒すための力を――」
「おいおい、一対一の決闘、そいつで負けといてまだやるつもりだってのかい? なんとも負けず嫌いな話だなあ。だが、欲しいってならもう一度機会を与えてやらねえこともない。〈隠れたる群狼〉は新入りには優しいんだ。とは言え……」
男はじろじろとホーニゴールドを見る。急に何か、嫌な予感がした。この協力者であるはずの男が、まさに獲物を狙う狼のように恐ろしげに感じられたのだ。
「……いささか力不足ってのは否めねえよなあ。ああ、特別製の力をくれてやらなきゃならねえな」
男は右手でホーニゴールドの首を鉄格子ごしに掴み、恐るべき力で締め上げる。左手は急激に黒っぽい獣の毛で覆われ、爪が肥大化していく。そして、おぞましい魔力を纏い、そいつを哀れな囚人の顔に近づけた。
「半分じゃだめなんだ。全部本物の化け物狼にならねえとな。〈六番目〉はお前さんを勝たせたがっている」




