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Adventurer J/隣国への転移  作者: 澁谷晴
第一章 寄波の魔剣士
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第十一話 捕縛指令

 ジェイが漂着して一週間が過ぎたころ、入国管理局から派遣されてきた役人がギルドを訪れた。

 思った以上に転移者はいるらしく、手馴れた様子で写真を撮影したり、帝都の冒険者ギルドに問い合わせたり、書類を書いたり、手続きはつつがなく進んだ。

 そういえば検疫等の必要はないのかと聞くと、それは入門の際にしているはずだ、と言われた。何もしていないように見えてギルが鑑定を行っていたらしい。ギルド証を確認したとき顔をじっと見られたが、そのときにだろうか。


 無事に在留許可は出たが、管理局の女性は、帝国人が王国に来たら大抵すぐに帰国を求めるのにあなたは珍しいですね、と言った。

 原因となった剣に関しても、迷宮での第一発見者ということなら所有していて構わない、廃棄には申請が必要だ、と告げて早々に立ち去った。

 

 その後、ジェヴォンズによる講習を終えたリトと他の新人たちが挨拶しに来た。そういえば、自分もここの支部長に挨拶をしていない。

 グレイスが支部長を呼んできた。それは〈山羊髭亭〉にいた老魔術師の爺さんだった。ごく簡単な挨拶と激励で終わり、新人たちにギルド証が配られた。フランはというと、〈酔漢〉討伐作戦時にすでに入手していたらしく、新人たちを横目に手ごろな依頼を探して掲示板の貼り紙を読んでいた

 新入りのジェイソンという少年が自己紹介すると、オルテンシアが「ほら見ろジェイ、お前と同名のやつが来たぞ。私があだ名をつけてやらねば混乱が生まれていたじゃないか」などと言い、ジェイことジェームズ・ジョンソンはただ曖昧に頷くだけだった。


 一度に多くの新人が入り、支部としてもめでたいとジェイが言うと、オルテンシアがそうでもない、と言った。冒険者は廃業したり休業することも多いし、仕事を探して別の支部に通うこともあるので、この支部の人員が永続的に増えるということではないそうだ。それに頭数よりも個々の実力が大事で、高い能力を持つ自分やルイスのような精鋭が活躍しても、それはその人物自体が評価されるにすぎない、とも。これもまた、帝国とは異なるところだ。向こうでは一箇所に依頼を出したらよそに持っていくことは基本的にご法度だし、くだを巻くだけの有象無象も、同じギルドの精鋭の威光を笠に威張っていることが多いのだ。


 その日はピーマン頭を何匹か、いつも通り姿を隠した上で仕留めて日銭を稼いだ。

 ギルドに戻ると、口髭を生やした、荒くれの冒険者といった風情の大男がいたが、その人物は保安官だった。いかめしい帝都警察(ヤード)警官(グラスホッパー)とは大違いだ。マイルズというその男はグレイスと話している。


「マイルズ、また野菜泥棒でも出たのか?」オルテンシアが保安官に言った。城壁の外の畑は広大で、警備の手が回らない部分も多い。夜中に盗んでいく不届きな輩を、数日前に冒険者が捕らえたばかりだ。


「いいや姉さん、たちの悪い追いはぎだよ。あんたもご存知の帝国野郎(インプ)さ」


 マイルズが掲げた手配書の写真には、目つきの悪い男が写っていた。それを見るなり、オルテンシアの顔はこれまでに見たことがないほど忌々しげに歪んだ。


「ホーニゴールド、あの馬鹿がまだここらにいたとはな。しかも追いはぎだと? 魔界的(ネザー)なクソ野郎だな。よし、私が直々にひっ捕らえてやろう」


 どうやらそれは、話に聞いていた帝国人らしい。大口を叩いてオルテンシアと組んでいたが実力が足りず、すぐに追放されたという男だ。


「だけど姉さん、変だよ」とルイス、「あいつは魔法もろくに使えないし、武器の扱いもひどいものだった。追い出してから二ヶ月は過ぎてるのに、どうやって生きてたんだろ?」


「そこで追いはぎだろう……いや、確かに妙だ。ここいらを通る商人や旅人は護衛を連れてるか、戦えるやつかだ。貧弱な帝国野郎(インプ)がカモにできるのはジェイのような同郷のジャンパーくらいなものだし、そもそもなぜ横断鉄道に乗ってこの国を出て行っていない? なんともきな臭いな」


 オルテンシアは説明を求めるように保安官を見た。彼はそれに応じる。


「襲われた被害者の生き残りによるとだ、こいつは魔法を使わず、棍棒を振り回して襲い掛かってきたそうだ。だが、その力が異常で、動きも人間とは思えないほど速かったそうだ。まるでルー、お前みたいな獣人さながらだったという話だよ」


 それを聞いてルイスは少しばかり嫌そうな顔になった。


「ますますきな臭いな。いろいろと手段は思いつくが、やつが一人で会得したのではなく、何者かが手引きしたのではないか?」


「詳しくは本人にお聞かせ願おう、可能なら生かして連れてきてくれ。あんたならたやすいだろう、姉さん」


「苛立ちのあまり、やつを即死させない限りな」オルテンシアは実際そうしそうな声で言った。

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