第十四話:依頼
「不思議な……?」
突然の言葉に、白波は聞き返す。
「ええ、あなたは普通の人とは違う……そう、『能力』を持っているはず」
フェルは確信めいた口調で言う。
「何故…そう思うんです?」
「あなたも私から感じたのでしょう?妙な…既視感のようなものを」
「ええ、確かに…って、それってもしかして……」
「その通り、私も『能力』を持っています」
「まさか、本当にそうだったとは……」
白波は考え込むふうを見せた。
「そこで、あなたに頼みたいことがあるんです」
フェルは切り出す。
「私の『占う』能力が告げるのです…理より外れし力を持つ者が救いをもたらすと」
熱っぽく言うフェルに、白波は戸惑ったように、
「ちょ、ちょっと待って下さい、そんな急に……」
と言うが、フェルは話を続ける。
「そう、そんな次の日…つまり今日ですが、町を歩いていればあなたが声をかけてきました。
これぞ占いの通り……私はそう確信したのです。この人がきっと私の憂いを取り除いてくれる…」
「あのー?ちょっと?」
白波が再度声をかける。
「はっ、すいません!占いの事となると人の話が聞こえなくなってしまうたちで…」
「それは…それとして、頼みたい事っていうのは?」
「…引き受けるのか?」
さっきまであっけに取られ一言も発していなかった鉄男が横槍をいれる。
「まあ内容次第かな」
「そうか」
「頼みたい事というのは……この街の城壁の外側、北東方向に古びた屋敷があるのですが、そこの様子を見てきてほしいのです」
フェルが説明を始める。
「……それだけですか?」
白波が問う。あまりにも簡単な内容すぎる。
「ええ…それだけです」
「何故?」
「…それは…ごめんなさい、今は…言えません」
「そうですか……」
しばし沈黙。
「どう考えても怪しいだろこれは……大丈夫なのか?」
鉄男は白波に囁く。
「うん、確かに…でもさ」
「ん?」
「悪そうな人には見えない…よね」
「おいお前まさか引き受けるってんじゃ……」
「うん、私はそうしたい」
「お前なぁ、度を越したお人よしは間抜けと一緒だぜ?」
鉄男は呆れた様子だ。
「ありがとう、誉め言葉と受け取っておくよ」
白波は受け流した。
「あの……?」
フェルが不安そうに白波を見つめる。
「分かりました、引き受けます」
その白波の言葉を聴くと、フェルの顔は明るくなった。
「本当ですか!ありがとうございます!」
「そうと決まれば早速行こうかな…鉄男はどうするんだい?」
白波は不意に鉄男に問う。
「えっ?」
「占い、気になるんだろう?」
「ああ……いや、お前についていくよ」
「え?そう…ありがとう、鉄男もなんだかんだ言ってお人よしじゃないか」
白波がからかい気味に言う。
「そ、そんなんじゃねぇよ、ただ……ただ気になっただけだ」
鉄男は慌て気味に返した。
「そう?まあいいけどね…じゃあ行こうか」
そういって二人はテントの外へ出た。
「しかしなぁ」
鉄男が呟くように言う。
「なんだい?」
「占いっていうからには婆さんかと勝手に思ってたが、案外若かったな、しかもなかなか美人…痛ッ!?」
「なーんか変だと思ってたらそういう目的ってわけかい?」
白波が鉄男の足を強かに踏みつけながら凄みのある声で問う。
「いやっ、違っ、そうじゃなくて…ッ!」
「もういいよ、さっさと行くよ!」
白波は足早に歩いて行く。
「ま、待てよ!……あいつなんであんなに怒ってるんだ…?」
いまいち理解のできない鉄男であった。
数分後、二人は街の門の前にいた。
「さてと、北東って言ってたかな」
「おい、待てよ、お前、足、早すぎ」
白波の凄まじい早歩きについて行くため走った鉄男は息も絶え絶えである。
「情けないなぁ、もう……」
「だいたい、お前なんでそんなに怒ってるんだよ?」
「別に?全然怒ってなんか無いよ?多分ここからでも見えるあの大きな黒い建物だね、さあ行こうか」
そう口早に言うや否や白波はまた足早に歩き出す。
「ちょっと待てってばおい……あの建物?」
鉄男の見る先には、かなり大きな屋敷。黒く聳え立つそれは、なにか不吉なものを感じさせた。
「おいおい、ますますもって怪しいぜ…」
そんな鉄男の不安を映すかのように、広がる空の色はどこまでも灰色であった。
謎めいた占い師、フェルの抱える「憂い」とは……?続く




