第十三話:遭遇
セリシア国。偉大なる東の王、雷が建国した大国である。
その領土は東の大陸のほとんどを占める。
その国名は雷王が唯一愛した偉大なる西の女王の名から付けられたと言われている。
その現在の王が居を構えるこの城塞都市が、王都セリシアである。
西の大陸とのつながりを持つ港を有する唯一の街であるので、人の往来は非常に多い。
「うう…二度と乗りたくない…」
「乗る前はあんなにはしゃいでたくせに…ほら、とっとと行くぞ」
王都セリシア、中央通り。
そこに面した飛空挺乗り場からよろけながら出てきたのは白波である。隣には鉄男。
「えっと、これからどこへ行くんだっけ?」
白波が聞く。
「まずはこいつをとっとと引渡しちまうか」
とジャドを指して答えつつ、鉄男は辺りを見回す。
「人目を引いて仕方が無いからな」
「そうだね」
「王城に何か用か?旅人よ」
王城の門番が尊大な態度で尋ねる。
「一足先に手紙が来てると思うんだが」
鉄男がそう答えると、門番は少し考えてから、
「ああ、ということはその男が例の盗賊の頭目か。よし、私が預かろう。」
と言った。
「あの一帯に害成す盗賊の頭目を捕らえたとなれば、王より褒美を頂けることだろう。しばし待つがよい」
「褒美だとさ。よかったな」
再び大通りを歩きながら、鉄男は白波に言う。
「私は別にいらないよ」
そう答えた白波を、鉄男は信じられないと言った目で見た。
「お前それ本気で言ってるのか?」
「うん、もう村長さんからももうお礼は貰ってるし…」
「普通は多く貰う分にはよ、大歓迎するもんだぜ」
「そうかな?じゃあ鉄男にあげるよ」
「え、いや、それは…」
「ほら、鉄男だって遠慮してるじゃないか」
「それとこれとは話が別だぜ…」
「それはともかくとして」
白波は真面目な表情になった。
「占い師を探したいんだけど、どこにいるのかな」
「ああ、そういやそんな事言ってたな…」
鉄男は少し考えた。
「このデカい街で有名になるくらいなら、適当に探しても遭遇できるんじゃないか」
「それもそうだね、じゃあ適当に聞き込みしながら探そうか」
そういって白波は辺りを見回した。
「……?」
そして、何かに気付いたような顔をした。
「どうしたんだ?」
「いや、なにか…どこかで感じたような気配が」
そう言って、白波は向かいから俯き気味に歩いてきた人物に声をかけた。
「あの、すみませんが」
呼び止められて、その人物は顔を上げた。
「なんでしょうか?」
「私に見覚えが無いですか?」
その人物…若い女性は、怪訝そうに白波の顔を覗き込んだ。
「いえ、別に…」
「そうですか…ならもう一つ、失くし物が必ず見つかると噂の占い師は知っていますか?」
「……あなたはそこに用があるんですか?」
「ええ、まあ」
「そうですか、そちらなら知ってますよ、ご案内しましょうか?」
「ありがとうございます、ではお願いします」
そう言って、先を歩くその女の後をついて行く白波であった。
「おや、君もついてくるのかい?」
白波は鉄男に問う。
「俺も気になるしな。占いの類は嫌いじゃないし」
しばらく歩くこと、10分ほど。
大通りをはずれ、裏路地のようなところに来ていた。
「つきましたよ」
女が言う。そこにはあやしいテントがあった。看板は出ていない。
「いかにも、って感じだな」
鉄男が言う。
「では私はここで」
女はそう言って背を向けた。
「ありがとうございました」
白波はそう声をかけた。
「あの…?」
白波がテントに入る。
「なんだ?誰もいないな」
後から入った鉄男が訝る。
「このベルを鳴らせばいいのかな?」
そういって白波は机の上にあったベルを手に取る。その時。
「お客様ですね…いらっしゃい」
「え、あなたは…?」
先ほどの女が、奥から出てきたのだった。
「なんだ、ここの人ならそう言ってくれれば…」
「改めてどうも、フェルと申します。あなたが来ることは分かっていたのでお迎えに上がったのですよ?」
「えっ、そんなまさか」
「ええ、冗談です」
驚く白波をからかうように笑うフェル。
「むぅ…まあそれはそれとして。失くし者が必ず見つかる、というのは本当なんですか?」
「ええ、私にかかればそれくらい、朝飯前というやつです」
「なら、私の…」
「その前に」
フェルが遮る。
「あなた、不思議な何かを…持っていますね?」
そう白波に、囁いたのだった。
続く




