癖に刺さる君
アルバイトを始めてから数日経ち、ある事に気がついた。
御影様は離れにある浴室とトイレを使うのだけれど、排水溝には髪の毛が落ちておらず、トイレもキレイなままだった。
ゴミ箱を見ると、洗髪後の髪とトイレ用の拭き取りクリーナーが捨ててあり、使用後にご自身で綺麗にされているようだ。
(私が掃除するから良いのに……) と思いながらも、彼は育ちが良いなと感じる。むろん、旧家だから躾が厳しかったのかもしれない。
キレイな状態を維持するため、私も念入りに掃除する。その心遣いをありがたいと思いながら。
服にアイロン掛けをしたり、寝室の掃除をしたり、障子の綻びを直したりと、忙しく毎日が過ぎて行く。
*****
家に帰り、玄関でスマホを見ると、LIMEにハザマ様からのメッセージが入っていた。
『初音の好きなトラシャム猫の動画送ったから、ゆっくり部屋で見て』
…………あぁ、回線を通じて部屋に侵入するつもりなんだな、と察して返信する。
『トラシャムの動画ありがとうございます。トラシャム大好きです。ゆっくり拝見致しますね、 玄 関 で 』
数分後、また彼から返信が来た。
『初音、丁寧な言葉なのに、嫌味なスパイスが効いた返信、ありがとうな^_^;』
御影様が結界を張ってくださってから、見えない手が身体を触る事はなくなった。
*****
後日、その事で御影様にお礼を言うと、
「へ? 初音のためにやってねーし。ハザマに嫌がらせしたかったんだよ。一応、ライバルだしな」
あぁ、この人ツンデレ体質だわ。 癖に刺さる……。




