反省室の悪魔
ハザマ様の後をこっそりつけると、昔の映画に出てくるような座敷牢に辿り着いた。そこが『反省室』と呼ばれている場所らしく、中には小夏さんが入れられていた。
牢に入ったハザマ様が小夏さんを見つめると、彼女は――
声帯が引き裂けそうなほどの濁声で、もの凄く口汚い言葉でハザマ様を罵り始めた。
「偽善者め! 貴様の腹の底にある腐った欲望、醜い嫉妬、ぜんぶ丸見えだぞ! どの口で道理を騙るか!」
「その生意気な貴様を引き裂き、己の血で溺れさせてやる!」
「魂の最後の一滴まで啜り尽くし、永遠に地獄の底を彷徨わせてやる!」
それはまるで、悪魔祓いの映画で見るような悍ましい光景だった。 しかし、ハザマ様は顔色一つ変えず、静かに告げる。
「小夏。……その姿を、御影に見せられる?」
その言葉に、悪魔に支配されていたはずの小夏さんが、ピタリ。と、一瞬だけ黙り込んだ。
その隙を見逃さず、ハザマ様は小夏さんの背中をバシッと強く叩く。
すると彼女の中から何かが抜け落ちたように、小夏さんはヘナヘナと崩れ落ちて倒れた。
悪魔の引き剥がしを終えたハザマ様は、踵を返して別の部屋へと移動していった。
*****
ハザマ様は、封印された卵型の宝飾細工を陸様に渡し、「これで全部、回収した」と告げた。
陸様は深く頭を下げ、
「透青様、お疲れ様でした。後はお任せください」
「あぁ、頼んだよ」
*****
私は目を覚ました小夏さんに熱いお茶を渡し、彼女が黙って飲むのを傍で見守った。
ハザマ様から言われた「愛されている者が持つ、無自覚な凶器」。それで私は小夏さんを傷つけてしまっていた。だからこそ、彼女のために何が出来るかをずっと考えていた。
次の日。
私は五ヶ月間アルバイトをして貯めたお金を銀行からおろした。 お金を封筒に入れ、惟光さんに手渡して頭を下げる。
「これでは全く足りないとは思うのですけれど、このお金で、小夏さんを学校に行かせてもらえませんか?」
すると、惟光さんはいつも以上に穏やかな笑みを浮かべた。
「このようなご心配は、初音様がなさることではありません。小夏を学校へ通わせるぐらいの資金は、室生家に潤沢にございます。それに、御影様からもすでに同じお申し出をいただいておりますよ。ですから、この封筒は初音様にお返し致しますね」
「御影様も……!」
私は嬉しくて胸がいっぱいになり、惟光さんの元を辞したあと、そのまま御影様の部屋へ駆け込んで彼に抱きついてしまった。
御影様は少し照れくさそうに
「あんな事があったからさ、この家から通わせるのは酷だろ? だから俺のマンションに住まわせて、そこから通わせようと思ってな。……俺は本家で初音と暮らそうかと。ここならハザマと美麗さんもいるし、そっちの方が退屈しないだろ?」
私は彼の胸に顔を埋めた。
「……大好き♡」




