戸惑いの美麗さん
お正月が過ぎ、ハザマ様と沙藤美麗さんの仲が深まってきた頃のこと。
室生本家でアルバイト中の私のところに、沙藤さんがもじもじとした様子で相談にやって来た。
私はアイロンがけの手を止め、御影様に休憩を申し出て別室で話を聞こうとしたが、彼女はなかなか本題を切り出せないようだ。
そこへ御影様が様子を見に来ると、沙藤さんはびくっと肩を揺らし、
「だ、男性の前では話せないことなの……」
と顔を俯かせてしまった。
「あー、あれだろ? 夜、体をあちこち触ってくる『得体の知れない何か』が来るってやつ?」
図星を突かれた美麗さんは顔を真っ赤にして、こくこくと頷く。
「それ、ハザマだよ。な? 初音。お前も経験あるだろ?」
御影様にそう振られ、私はあっけらかんと答えた。
「それ、ハザマ様だから心配ないですよ〜」
それを聞いた沙藤さんは、驚きながら私を見た。
「室生さん、貴女もあんな事されてたの!?」
御影様は笑いながら、
「付き合ってるんなら、許してやれば? 健康な男子なら当たり前だろ、男は性欲の生き物なんだから。美麗さんに抵抗がなければ、いっそ婚前交渉しちゃえば夜這いも止むと思うぜ?」
美麗さんは視線を私たちから逸らしながら、
「そ、そうなの? ありがとう……考えてみる……」
と言い残し、慌てた様子で部屋から走り去ってしまった。
その微笑ましい後ろ姿を見送りながら、私はふと思いついたことを口にする。
「……避妊具、あげた方が良かったかも?」
思わずそう呟くと、御影様は
「ハザマの奴、外に出ないから買ってなさそうだな。結婚前に美麗さん、子どもできそうだ」と笑った。
そして、不意に私の方へ顔を向け、意味ありげな視線を落とす。
「……俺たちも、気をつけないとな」
余次元住まいのハザマ様! ― 御影 編― <完>




