19 レベル
四階層での敗北から一ヶ月。レインたちは焦らなかった。無理に先へ進もうともしなかった。三階層を中心に探索を続け、依頼をこなし、地道に経験を積み重ねていった。最初の頃は未知の魔物に苦戦した。岩甲虫の硬い甲殻に刃を弾かれたこともある。洞窟狼の群れに囲まれそうになったこともある。だが同じ失敗を二度は繰り返さなかった。戦い方を覚える。危険な場所を把握する。撤退の判断を早くする。そうして少しずつ三階層を攻略していった。今では正規ルート以外の通路もかなり把握している。地図も以前よりずっと書き込まれていた。未探索区域はまだある。それでも一ヶ月前とは比較にならないほど詳しくなっている。そして成果も出ていた。ある日の探索帰り。レインたちはギルドへ立ち寄る。いつものように魔導具へ手を置く。青白い文字が浮かび上がった。
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レイン
職業:テイマー
レベル:7
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予想通りだった。この一ヶ月で一つ上がった。飛躍的ではない。だが確かな成長だ。続いてリリア。
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リリア
職業:神官
レベル:4
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リリアが小さく息を吐く。
「やっとですね」
回復役はどうしても経験を積みにくい。それでも補助魔法を積極的に使い続けた結果、ようやくここまで来た。レインも素直に嬉しかった。以前なら危険な場面でしか魔法を使わなかった。今では戦闘のたびに支援が飛んでくる。その差は大きい。続いてフェン。テイムモンスターもギルドの魔導具で測定できる。フェンが少し緊張した様子で台へ乗せられる。やがて文字が浮かんだ。
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フェン
種族:ダンジョンウルフ
レベル:8
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「おお、2つもあがってるぞ、すごいじゃないか」
思わずレインが声をかける。フェンも尻尾を振った。最近は明らかに強くなっていた。体も少し大きくなっている。筋肉も付いた。三階層の魔物相手なら単独でも十分戦える。ようやく前衛として頼れる存在になり始めていた。そして最後。チビだった。チビは慣れた様子で魔導具の上へ飛び乗る。数秒後。表示された数字を見てレインは眉をひそめた。
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チビ
種族:ヴェノムラット
レベル:5
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「またですか」
思わず呟く。フェンが一ヶ月かけて二つ上がった。リリアも一つだ。レイン自身も一つ。それが普通だろう。なのにチビは違う。進化直後にレベル1だったはずだ。そこからあっという間に5まで上がっている。おかしい。どう考えてもおかしい。リリアも苦笑した。
「やっぱり変ですよね」
「変ですね」
チビは本人だけ得意そうだった。褒められていると思っているらしい。胸を張っている。レインは頭を抱えたくなった。テイマーについて調べても答えは見つからない。ギルドで聞いても分からない。そもそもテイマー自体が珍しい。まして進化する魔物など聞いたこともない。そして。何となくだが。レインは気付き始めていた。おそらく異常なのはテイマーではない。チビだ。進化できることも。異常な成長速度も。素材を選ばないことも。すべてチビ側の特徴なのではないか。そんな気がしていた。もちろん証拠はない。だから誰にも言わない。融合の秘密も知られてはいけない。ただ一つだけ確かなことがある。一ヶ月前。四階層で逃げ帰った自分たちとは違う。レインはギルドの窓から夕焼けを見る。レベルは上がった。装備も良くなった。連携も磨いた。経験も積んだ。三階層で負けることはほとんどなくなった。そろそろ。本当にそろそろ。四階層へ再挑戦してもいい頃かもしれない。そんな考えが自然と頭に浮かんでいた。




