19 戦わないのも仕事
森の見回りを受けてから、レインたちは数日間、淡々と依頼をこなした。派手な戦いはない。だが、その代わりに“確実に帰る”という意識だけは、以前よりずっと強くなっていた。
一日目は薬草採取と簡易な巡回だった。リリアが主導で動き、レインは周囲警戒に回る。チビは相変わらず先行して索敵をしていたが、戦闘になるような魔物には遭遇しなかった。採れた薬草はそこそこの量で、銀貨数枚にはなる程度だが、確実な収入だ。
二日目は荷運びの依頼だった。街道沿いの倉庫から、ギルド支部までの資材搬入。重い木箱を運ぶだけの単純作業だったが、腹の傷がまだ完全でないレインには地味に堪えた。リリアの支援魔法がなければ、途中で止まっていただろう。チビは荷車の上で丸くなって寝ていた。
三日目は再び森の巡回だった。今度は小さな群れの魔物――ゴブリンの痕跡を発見したが、数が少ないため追跡のみで終了する。戦闘には至らず、報告だけで終わる依頼だった。
「戦わないのも仕事ですね」
リリアの言葉に、レインは頷いた。以前なら確実に追いかけていた。だが今は違う。“勝てるかどうか”ではなく、“割に合うかどうか”を考えるようになっていた。
そして四日目は軽い討伐依頼だった。森の浅い場所に出る小型魔物の排除で、二体だけだったため戦闘は短い。レインが一体を短剣で仕留め、もう一体はチビが攪乱して隙を作った。リリアの補助で大きな怪我もなく終わる。終わったあと、レインは少しだけ息を吐いた。
「これくらいなら、もう大丈夫ですね」
そう言ったのはリリアだった。レインも否定しなかった。
数日をこうして過ごした結果、手元には少しずつ報酬が積み上がっていた。爆発的な稼ぎではない。だが、確実に“次の装備”へ近づいている感覚がある。そして何より大きかったのは、無理をしなくても生きて帰れる、という感覚だった。
ギルドの前、依頼札を見上げながらレインは短く息を吐く。チビは足元であくびをしている。リリアが軽く首を傾げた。
「次はどうします?」
レインは一瞬だけ考え、「武器屋に行こう」とリリアに伝えた。




