14 嬉しい悩み
査定を終えてギルドを出たレインは、思わず革袋の口をもう一度覗き込んだ。銀貨が重なる硬質な音が、確かな実感を伴って耳に届く。フォレストディア二頭、新人冒険者としては出来過ぎと言っていい成果だった。解体にも大きな失敗はなく、想像していた以上の報酬になった。もちろん、ベテラン冒険者から見れば大した額ではないのだろう。
それでも、少し前まで薬草採取と荷運びで銅貨を積み上げていた自分たちからすれば、十分すぎる金額だった。
「思ったより、ちゃんと稼げましたね」
隣を歩くリリアが嬉しそうに笑う。
「ああ。短剣くらいなら買えるかもしれないな」
「革鎧の修理もできますね」
「……お金って、飛んでいくの早いですね」
そう返すと、リリアが小さく吹き出した。嬉しい悩みだった。命懸けの戦いではあったが、その結果がこうして形になっている。前へ進めているのだと実感できる。積み重ねた経験と、幾度もの失敗を乗り越えた者だけが持つ重みだった。
新人講習は受けた。知識も得た。それでも、それを使い続けられるかは別の話なのだろう。革袋の中の銀貨が小さく鳴る。嬉しい。達成感もある。だが、その感情に飲まれて足元を見失えば、次は帰れないかもしれない。
「……とりあえず今日は帰りますか」
「はい!」
リリアの明るい返事に、レインは笑みを浮かべた。今日の成果を喜ぶことと、気を引き締めることは両立できる。少しだけ強くなった自分たちは、次の一歩を踏み出すため、武器屋へ向かって歩き出した。




