10 解体
二人はフォレストディアへ視線を向けた。討伐した以上、持ち帰らなければ意味がない。
「解体しましょう」
「そうですね……」
しかし改めて見ると大きい。一頭だけでも相当な重量だった。
「まず川まで運びますか」
講習で教わったことを思い出す。血抜きや解体をするなら水場が便利だ。幸い近くに小川があったはずだった。二人はロープを取り出し、角と前脚へ結び付ける。
「せーの!」
引くが、動かない。
「重いですね……」
「ですね……」
思わず二人で苦笑した。それでも少しずつ引きずり、何度も休憩しながら運ぶ。チビまでロープを噛んで手伝っていた。もちろん大した力にはならない。だが気持ちは伝わってきた。ようやく川辺へ到着した頃には二人とも汗だくだった。
「講習の先生が楽だって言ってたのに……」
「先生はベテランでしたから」
レインは苦笑した。初心者には十分重労働だった。それでも作業は続く。ロープを木へ渡し、講習で習った簡易滑車を再現する。枝へロープを回し、二人で引く。何度もやり直しながらようやく後脚が浮いた。
「できた……」
「本当にできましたね」
解体作業が始まる。血抜き、皮剥ぎ、角の切り出し、肉の切り分け。習った通りに進めるが、思うようにはいかない。刃が引っ掛かり、皮が破れる。何度も手を止めながら少しずつ作業した。気付けば太陽はまだ高いが、荷物は増えていた。角、魔石、上質な肉、革として売れそうな皮。すべては持ち帰れない。だから価値の高い部位を優先する。残りは惜しいが諦めるしかなかった。
レインは切り分けた肉を袋へ詰めながら息を吐いた。冒険者は倒して終わりではない。持ち帰って初めて金になる。ようやくその意味を少し理解できた気がした。




