↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

41/67

07 二頭のフォレストディア

「二頭ですね」


リリアが小声で呟く。本来なら一頭だけを狙いたい。だが見つけた獲物を逃せば次がいつ見つかるか分からない。レインは周囲を見回した。すると近くに倒木があり、さらにその先には細い木々が密集していた。講習で聞いた話を思い出す。大型獣は細い場所を嫌う。角が引っ掛かるからだ。


「リリアさん」


「はい」


「向こうへ回れますか」


レインは回り込み先を指差した。リリアもすぐに意図を理解する。


「追い込みますか」


「ええ」


二人は静かに移動した。チビも音もなく草むらを進む。しばらくして配置が整うと、レインは地面から小石を拾い、一頭の脇へ投げた。


カツッ。


鹿が顔を上げ、警戒したように周囲を見る。そこへチビが飛び出した。


「キュッ!」


突然現れた小動物に鹿が驚き、二頭が同時に走り出した。だが進む先は違った。一頭は開けた場所へ、もう一頭は木々の間へ追い込まれる。レインはそちらを狙った。鹿が角を振ると、案の定、枝に引っ掛かった。一瞬だけ動きが止まる。


「今だ!」


レインが飛び出し、体重を乗せて短剣を首の付け根へ突き込む。鹿が暴れるが、枝と角が絡み動けない。もう一度押し込むと、刃が深く入る。やがて巨体が崩れ落ちた。


「やった……」


思わず息を吐く。講習で教わった通りだった。地形を使えば自分より大きな獲物も狩れる。そう実感した瞬間だった。


後方でリリアの悲鳴が響く。


「レイン君!」


振り返ると、もう一頭だった。逃げたと思っていた鹿が戻ってきていた。仲間を傷付けられた怒りか、猛然と突進してくる。速い。避ける時間がない。レインは反射的に身体を捻ったが、間に合わなかった。


衝撃。鎧が軋み、角が腹へ食い込む感触。息が止まり、体が宙に浮く。次の瞬間、レインは数メートル先まで吹き飛ばされていた。地面を転がり、肺から空気が吐き出される。腹が熱い。視界が揺れる。立ち上がろうとしても力が入らない。


腹部に焼けるような痛みが走った。震える手で触れると、指先が赤く染まる。血だった。レインはゆっくり視線を落とす。革鎧の腹部が大きく裂けていた。角は深くまでは入っていない。だが革を突き破り、腹の肉を抉っていた。鈍い痛みと共に熱いものが傷口から流れ出している。


「ぐっ……」


思わず呻き声が漏れた。もし角度が少し違っていたら。もしあと数センチ深く刺さっていたら。腹を貫かれていたかもしれない。そう考えた瞬間、背筋が冷たくなる。


ボロボロになった革鎧を見て、レインは歯を食いしばった。安物でも無駄ではなかった。革が角をわずかに逸らしてくれたのだろう。それでも、この程度で済んだのは運が良かっただけだった。

【感謝】日間ハイファン最高56位にランクインしました!ありがとうございます!

もし「今日も面白い!」と思ったら、下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして応援していただけると嬉しいです!続きを見逃さないためのブックマークもぜひよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。