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06 迷宮2回目

二人はギルドを後にすると、迷宮へ向かう乗合馬車の停留所までゆっくりと歩いていった。停留所にはすでに何人もの冒険者が集まっており、それぞれが装備を点検しながら馬車の到着を待っている。腰に大剣を提げた者や大きな盾を背負った者など、その顔ぶれを見るだけでも迷宮へ挑む覚悟が伝わってきた。レインは停留所の脇に立てられた料金表へ目を向け、小さく息を漏らした。


「やっぱり結構しますね」


「どれくらい掛かるんですか?」


リリアが隣から料金表を覗き込み、不思議そうな表情で尋ねてくる。


「往復で銅貨六枚です」


その金額を聞いたリリアは、思わず目を丸くした。


「思っていたより高いんですね」


「新人には結構痛い出費なんです」


薬草採取の依頼なら、一つ終えても報酬は銅貨十枚前後しかもらえない。そこから往復の馬車代を払えば、稼ぎの半分以上が消えてしまうことも珍しくなかった。もちろん時間を買うという意味では安いのかもしれないが、それでも今のレインたちには、一枚の銅貨すら無駄にはできなかった。レインは少し考え込んだ後、小さく苦笑しながらリリアへ視線を向ける。


「時間は掛かりますけど、歩いて行きませんか」


リリアは少しだけ考えたものの、すぐに穏やかな笑みを浮かべた。


「私は構いません。その分お金を節約できますから」


「ありがとうございます。それじゃあ歩いて向かいましょう」


二人は停留所を離れ、迷宮へ続く街道を歩き始めた。朝日がゆっくりと昇り始める中、街道には同じ目的地へ向かう冒険者たちの姿もちらほら見える。革袋から顔を出したチビは、きょろきょろと周囲を見回しながら楽しそうに鳴いた。


「キュッ!」


「今日はいつも以上に元気だな」


レインが笑い掛けると、チビは誇らしそうに胸を張ってもう一度鳴いてみせる。街道を歩き続けること一時間ほどで、巨大な迷宮の入口が再び姿を現した。黒い岩肌にぽっかりと口を開けたその姿は、一度見たはずなのに相変わらず圧倒的な存在感を放っている。


「やっぱり大きいですね」


リリアが思わず見上げながら呟く。


「何度見ても慣れないですね」


レインも迷宮を見上げながら静かに答えた。初めて潜った時ほどの高揚感はない。それでも胸の奥が少しだけ高鳴る。強い魔物を仲間にして、いつか深層へ辿り着きたい――その夢は、今も変わっていない。


「行きましょうか」


レインがそう声を掛けると、リリアは力強く頷いた。


「はい」


チビも革袋から顔を出し、元気よく鳴き声を上げる。


「キュッ!」


二人と一匹は巨大な石段を慎重に下り始めた。前回と同じように外の光は少しずつ遠ざかり、冷たい空気と湿った石の匂いが身体を包み込んでいく。静かな足音だけが迷宮へ響き、やがて広い石造りの通路へ辿り着いた。一度見た景色のはずなのに、不思議と空気の重さだけは慣れることができない。レインは短剣へそっと手を添え、周囲を警戒しながら歩き始めた。

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