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09 ギルドでの再会

それから数日が過ぎても、レインの日々は変わらず続いた。朝早く家を出て倉庫街へ向かうふりをしながら隠し場所で装備を回収し、そのまま南門から都市の外へ出て薬草を採取する。時には小型魔物を避け、時にはチビと連携して倒しながら、夕方にギルドへ戻って報酬を受け取る。その繰り返しの中で、大金には程遠いながらも確実に生きて帰ることだけは維持されていた。薬草採取の競争は相変わらず激しい。先客に根こそぎ採られている日もあれば、半日歩いても成果がほとんど得られない日もあり、決して順調とは言えなかった。それでもレインは焦らずに行動し続けた。焦った冒険者ほど死ぬという言葉を、ギルドで何度も聞いていたからだ。今日も堅実に稼ぐことだけを考えていた。


その日の夕方、依頼達成の報告を終えて受付前の列に並んでいた。革袋の中でチビが丸くなっていると、ギルド内の騒がしさの中に聞き覚えのある声が混ざった。振り返ると、数日前に丘陵地帯で会った少女が、金色の髪と青い瞳のまま立っている。少し迷った様子を見せながらもこちらへ歩いてきたので、レインは軽く頭を下げた。


「どうも」


少女はどこか嬉しそうに挨拶を返す。


「こんにちは」


「この前はありがとうございました」


礼を述べながら、薬草の見分け方を教わったことを話す。革袋の中身を見せて言った。


「ちゃんと見分けられるようになりました」


その量は初心者としては悪くない成果だった。


「それは良かったです」


短く答えると、会話の途中で革袋からチビが顔を出す。赤い瞳で少女を見つめると、少女はすぐに表情を明るくした。


「こんにちは」


「キュ?」


チビが首を傾げるように反応する。そのやり取りを見た少女は自然に笑っていた。受付嬢に呼ばれて少女が一度中断されると、慌てて振り返る。


「またお会いしたらお願いします」


言い残して受付へ向かった。レインはその背中を見送りながら順番を待つ。やがて報酬を受け取ってギルドを出ることになったが、帰り際に振り返ると、少女がこちらに気付いて小さく手を振っていた。レインも軽く手を上げて応じただけで別れた。


その夜、家の寝台で横になったレインはふと昼間のやり取りを思い出した。


「リリアか」


名前を口にしながらチビの眠る姿を見つめて苦笑する。特に理由もなく、その記憶を反芻したまま静かに眠りへと落ちていった。


それから数日が過ぎても、リリアとは時々ギルドで顔を合わせるようになった。会えば挨拶を交わし、たまに薬草の話をする程度の関係ではあるが、最初の頃にあったぎこちなさは少しずつ薄れていった。


その日の昼過ぎ、レインは都市の外で止血草を採取していた。チビが見つけた群生地のおかげで、依頼達成は目前に迫っている。


「今日は悪くないな」


呟きながら腰の短剣を鞘へ戻したその直後、嫌な音がした。


「ガリッ」


顔をしかめながら刃を確かめると、そこには小さく欠けた痕があった。何度も研ぎ直して使ってきた中古の短剣が、限界に近付いていることを改めて理解した瞬間だった。


「またか……」


溜息を漏らしながら状況を確認する。刃こぼれや錆、歪みが積み重なり、最近では小型魔物の骨に当たるだけでも欠けるようになっていた。


「そろそろ買い替えないと駄目だな」


そう判断するが、問題は金だった。薬草採取だけでは生活費を補うのが精一杯で、新しい武器など簡単には買えない。質の良い物など、夢のまた夢だった。


その日の夕方、報酬を受け取ったレインは久しぶりに鍛冶屋街へ向かった。鉄を打つ音と熱気、煤の匂い、怒鳴り声が混ざる通りを歩く。武器屋へ入ると、壁に並ぶ剣や槍がどれも自分の短剣より立派に見えた。店主の筋骨隆々の男に声をかけられる。


「短剣を見たいんです」


腰の短剣と革鎧、そして革袋から覗くチビを見た店主は、微妙な表情を浮かべた。


「テイマーか」


「短剣なんて使うのか」


問われたレインは答える。


「使いますよ」


「魔物に戦わせる職だろ」


鼻で笑われても、レインは淡々と返した。


「自衛くらいはします」


周囲の客からも嘲笑が起こる。


「テイマーが前に出るのか」


「ネズミより弱そうなのにな」


慣れているはずの状況でも、胸の奥にわずかな不快感が残った。店主が提示した短剣の値段は、銀貨十二枚だった。レインは沈黙する。それは今の手持ちでは買えない額であり、無理をすれば購入できるが、家へ入れる金が無くなるため選べない。結局何も買わずに店を出た。夕暮れの鍛冶屋街を歩きながら呟く。


「もう少し稼がないとな」


チビが「キュ……」と鳴いた。頭を撫でながら答える。


「お前のせいじゃない」


そう返しながらも、問題が自分の弱さにあることだけは理解していた。そうして歩いていると、前方から聞き慣れた声がした。


「レイン君?」


振り返ると、鍛冶屋街の入口に買い物袋を抱えたリリアが立っていた。普段の装備ではなく町用の簡素な服装でありながらも、金色の髪はよく目立っていた。

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