第4章 02_やっぱ、今回も俺ルートなんだ?
これは、1周目から、ずっと気になっていたことなんだけど。
王太子には、生まれた時に、【祝福の仙女】から「運命に導かれし聖なる乙女と結ばれる」的な託宣が下されていたらしいんだ。
ただ、それがいつ現れるとかまでは分からなかったから。
国家としては、ひとまず、最有力な大貴族のご令嬢との婚約をもって、その貞節を保持しようとしていた雰囲気があった。
それなのに、聖女誕生の知らせが国中に駆け巡ってからは、どうにも、リシャールとヒロインをくっつけようとする気運に変わっていって。
実際、我がサンクレール王家の始祖、聖騎王マクシミリアン公は、当時の【星辰の乙女】エステル嬢と、世界平和をもたらした後、結婚しているし。
その後、国家は大きく繁栄して、歴史書や文学の中では、その時代が地上の楽園と表現されていることもあるから。魔物の脅威が如実に現れだした、この時世においては、国民の間でも、ただの希望から切望へと徐々に変化していったというか。
そんなら、とっとと、王太子と悪役令嬢の婚約、国が解消させて、聖女と再婚約させればいいじゃん、って思うのに。
なんか、悪役令嬢が宰相の娘で、直近の国家の安定のためには、そっちとの関係も維持したい、みたいな? それって、フツーにズルくね? ってカンジ。
いずれにしろ、先生がた、っつーか、国の意向(?)的には、「伝説の再来」を望んでるのかもしれないな、ってことで。
今回のこの強引な席替えに至った気がしてならなかった。
というか、たぶん、ゲーム的には、それこそが、リシャールがメイン攻略対象者である所以なんだろう。
そういう意味では、この席替えも、カミの言う、「この世界の人間は、すべて、基本的にはシナリオの支配下にあって、いつでも粛清の尖兵と変貌する」っていう、実態の1つなのかもしれない。
(先生がたまで、『【カミの神】の言いなり』とか考えたら、めっさ恐すぎるんですケド!)
果たして、この強引な席替えが、吉と出るか、凶と出るか――。
1周目のあの感じからいったら、やっぱ、悪役令嬢の、ヒロインに対するイジメを開始させるきっかけになりそうだから、俺的には、「いい加減にしろよ」って感じで、もうウンザリなんだけど。
でも、カミは、契約者がユノと会って、その【絆】がシステムを上回れば、「その解除が出来る」的なコトを言っていた。
あれから、俺も、ユノ探しに本腰入れて、それっぽい名目で王太子の公務の一環として行幸したり、その他、公務の空き時間ないしは休日とかに、お忍びで街に出掛けたりしているんだけれども。
まったくもって、何の手掛かりもない。
カミが言ったヒントの通りなら、「きっと、どこか分かりにくい路地裏に、謎トンネルとかがあって、魔法的な(SF的な?)日常の中にある非日常の先に、身を隠しているんだろうな」って考えたのに。
そういうトンネルなんて、どこにも無くて。
だから、一旦、カミのヒントは忘れることにして、俺は原点に立ち返った。
まずは、ユノは、カミが「作った」っつってたから、「親」とか絶対いないんだろうな、って思って。
あの鏡のことも踏まえて、一応、王都にある教会や孤児院とかも、視察の名目で、まず、シラミ潰しに当たってみたんだ。
けど、いなかったんだよな。
そうして、視察で行ってる以上、何もしない訳にもいかないから、俺も、見学後は、毎回、王太子のポケットマネーで、現金そのものってよりは、本とか勉強道具とか、(庶民らしい日常向きの)洋服とか靴とか、その孤児院の子達が必要としてるものを、その時々に合わせて寄付し続けていた。
したら、今度は、その評判が立っちゃって。
いつの間にか、民衆から、「王太子殿下は、子供好きな、慈悲深い御方」だと思われてしまう始末。
俺、ホントは、そういうキャラじゃないんだけどな。
こうなってくると、
ホント、もう誰か代わって欲しい。そもそも論は、「転生しなきゃ」なんだが、来世諦める度胸あったら、いっそ「契約しなきゃ良かった」かもしれない。
なんて、自暴自棄ターンがくるから、俺、やっぱ情けないな、って。
かたや、レオナールは、2つ隣のクラスだから、すぐには、シナリオ・スイッチに巻き込まれなくて済むから羨ましい。
2周目は、リシャール以外の転生ヒーローもいるんだし。
つーか、全クラスに最低1人ずつは攻略対象者いるんだから、わざわざ、「またリシャールと同じA組に入ってこんでも」と苦悩していたところ――。
俺は、ふと、1つ、思い出したことがあったんだ。
ゲームは、確かに、ヒロインの学園入学後からが本シナリオなんだけれど。
実は、その前段階として、【サブ・イベント】があったんだって。
それは、ヒロインの聖女覚醒が起こるまでの、故郷の町プレアノンでの【おつかい探索】と、あの入学式当日にあったっていう【編入試験】だ。
導入ガイドを兼ねたそれらは、そこで出会う人や物の順番が実は重要で、編入試験も、4択問題の全30問、プレイヤーが解答することになって、その全部ひっくるめた結果で、ヒロインが編入するクラスが決まる、っていう。
マサトが前世でゲーム・プレイを開始した時、大画面で推しのスチルやムービー堪能したい姉貴が、隣で、そういうのを色々解説してくれた。
つーか、姉貴は、弟にリシャール・ルートをやらせたがってたから、必ずそうなるよう、横でやいやい、いらん口出ししてた感じだが。
でも、こういうの、同調連鎖っていうのかな?
なのに、こんな初歩的な大事なこと、
すっかり頭から抜け落ちてた俺ってヤバくない?
って、自分で呆れてしまった。
ともあれ、ヒロインが、このA組に入ってきたってことは、改めて、現在は、リシャール・ルートなんだと思い知らされる。
まあ、ゲームでも8割がた王太子だから、或る意味、仕方がないんだけど。
最初っから他の攻略対象者と同じクラスになりたいプレイヤーは、自分でルート開拓するか、ファン同士で情報を交換し合うか、攻略本を買うか、のいずれかになる。
だから、開発元としては、攻略本販売でも収益が上がるよう、相当巧妙なギミック散りばめて、難易度調整してんだろうな、ってのは、ファンじゃない俺にも見当がついた。
――まったく、世知辛いっていうか、アコギな商売してるよなァ。
結局、この編入初日は、まだ序盤中の序盤だから、特に大きな動きもなかった。
リシャールのシナリオ・スイッチ発動は相変わらずだけど、シナリオ的には、ヒロインが「他の攻略対象者にも会わないといけない」みたいな感じがあったのか、「学級委員で生徒会役員である俺が、学校案内しなきゃいけない」って流れになりかけたんだけど――。
あの強引な席替えの所為かな?
放課後、リシャールがヒロインに「案内してあげるよ」と言った場面で、悪役令嬢が「そんな些末なことに殿下のお手を煩わせられませんわ」って乱入してきて、3人の取り巻きズを従えたまま、アンジェルを連れて、さっさと教室を出て行ってしまった。
天の声化した俺的には、ちょっとでもシナリオから離れられるので、「悪役令嬢グッジョブ!」って、サムズアップしたい心情だったけれど。
シナリオ・リシャール的には、なんか、悪役令嬢のこと、ガチで「ウザい」っつーか、「ムカツク」って思ったっぽい。
つーか、今更だけど、あの子ら、マジで大丈夫なんだろうか?
まさか、裏庭でリンチとかしたりしねーよな??
って、俺は心配してしまったんだが――。
そして、俺の脳裏に、1周目の終わりの、悪役令嬢の悲惨な結末がよぎる。
俺は、あの時、マリーに、
「裏切ってゴメン! もっと早くに止めてあげられなくてゴメン!!」
って言ったのに。
なんか現在のこのペースだと、また、同じ轍を踏みそう。
(やっぱ、俺、早いトコ、ユノ見つけんとヤバそうだよな)
それに、カミは「何とかする」っつったけど、2周目は、モラン兄弟まで、シナリオ側の人質にとられてる感じだし。
先生がたや、クラスメイトもだけど、とりあえず、俺は、まず、ニルスとクロードをシナリオに振り回されない奴にしたい。
もっと欲を言えば、断罪される悪役令嬢を、速やかにシナリオから解放してあげたいな。――が、それって、準主役級のキャラにも効くんかな?
(悪役令嬢の断罪回避が成功すれば、心おきなく、俺も【カミの神】討伐に専念できるんだけど……)




