第3章 21_リモート・コントロールな俺(1)- SFっぽい!
途端に、ウルトラ・スローモーションな時間も解ける。
(わっ。マジで時間戻った!)
天の声な俺が戸惑っていると、不意に、
「つーかさ、アンタ、マジで大丈夫? ビビリすぎて幻覚とか、ガチでシャレにならんからっ」
と、レオナールに身体をゆさゆさ揺さ振られた。
荒っぽい口調の割に、ペリドットの瞳には、不安と心配の色が混じっていた。
なのに、うんともすんとも返事できない俺は、なんだか申し訳なくなった。
(つーか、これ、いつものシナリオ・リシャールの感じと違うな)
シナリオ・スイッチでは、俺は、俺じゃないリシャールが何か言ったり、したりしても、同時に天の声な俺も引きずられるっていうか、連鎖知覚するっていうか。
多重人格のアレとは違って、俺自身にも交代中のことが手に取るように分かるので、ちょい仮想現実チックっつーか、「分身」みたいな感じなんだけど。
でも、この【カミ】の【リモート】では、その辺の感覚まで、まるっと遮断された感じ。
天の声な俺は、目に見えない別のどこかに隔離されていて、そこから外部モニタでリシャールの挙動を見守っているというか。完全な第三者視点っぽい。
だから、シナリオ・スイッチの時は、リシャールの視界にないものは、天の声な俺にも認識できないのに、この【リモート】では、それ以外の情報まで分かってしまう。
だから、強いて言うなら、こっちのがむしろ「幽体離脱」に近い気がする。
一方、充填が終わったらしいメカ・デュラハンも、
フォン
と、鈍い電子音を響かせ、【再起動】した。たちまち、
パリンッ!!!
と、その表面に張り巡らせていたバリアが、ガラスのように砕け散った。
メカ・デュラハンは、体中の宝玉飾りを赤く点灯させ、
「△*▽□+@〇×◎ッ!」
と、ワケワカラン、ロボット語(?)みたいな奇声を上げて、
ズシン、ズシン、ズシン……
と、重厚な足音立てて、こちらを標的るように向きを変える。
あの凶悪な巨剣と巨盾を構えて、再度、臨戦態勢になった。
それに気がついたレオナールは、ビックゥッと身をゾワつかせた。
「オ、オオオイッ……。やっべェぞ! あのデカブツっ、復帰しやがった――」
リシャールは、それを無視し、凍てついた瞳で、スッと【混沌の盟約】をつけた右手を前方に伸ばし、掌を開く。
完全に、呪文を唱える構えだ。
Σκιã της Μοĩραι:
「……零は終わりにして始まり。0が有るゆえ1が生ずる。等しく流れ続けるは止まると同じ。進むも戻るも、不規則な流れが生みし、時の楔。破壊なくば秩序はあらず、秩序ありてこそ破壊はその意を見出す。破壊の先に、秩序は進化へ。クロノグラフは小さき宇宙。針は導。振子は記録。刻むことで道は開かれる。
廻れ、廻れよ。異端に止まれ。奇遇は数奇へ。数奇は破る。
輪廻のひずみ、開け、次元の扉!」
リシャールの全身から異様なオーラが噴き出して、唱える俺の声に、あの【カミ】の不思議な声が上乗せされる。
(すっげえ。俺じゃないみたい!)
天の声な俺はドキドキわくわくしながら、その光景を眺めていた。
ほどなく、呪文(?)に呼応するように、リシャールが手をかざした先に、
ズオォォォッ
と、黒と紫が入り混じった竜巻めいた霊気の柱が立ち昇る。
しかも、その周囲には、歪んだ時計の文字盤とか、難解な数式っぽい光が現れ、
パチッパチッ……パチッ
と、稲妻というか、プラズマちっくな光が盛んにスパークしていた。
(何アレ!? ファンタジーっつーか、バリバリSFじゃんっ!)
いや、この世界に転生してから、いろんな魔物とか、魔王の魔法も見たけれど。
これほどの規模で、こんなサイエンスなタイプのヤツは、【怪物目玉】以来かもしれない。
でも、ユノのグーパンもアレをコンパクトにした感じだったので、あのコの能力も、やっぱ、この【カミ】譲りのチートってことなんだろうか。
「ぅお、おおおいっ……! リッシー?」
状況が分からないレオナールは、甚だうろたえていた。
「ソレ、なんかの攻撃魔法? ちゃっちゃと撃たねえと、あのデカブツが――」
(分かってるけど、今、ソレやってんの俺じゃねーし!)
レオナールの不安がまんまと天の声な俺にも伝染しかけた時、血も涙もないメカ・デュラハンは、満を持したように動いた。
俺等が反撃してこないと見るや、アイツは、ググッ、と焦熱エネルギーを込めたメガ・ファルシオンを構えて、
グァンッ!
と、重量感ある剣圧閃を放ってきたんだ。
クリティカル・ヒット狙いな、もの凄い凶悪なヤツ。
「わ! ヤベッ」
(あ。コレ、避けんの無理!)
レオナールと天の声な俺が身震いしたのとちょうど同じ頃、リシャールが出した霊気竜巻は、
ズパァンッッッ――!
と、四方に弾けた。その衝撃波で、
ぼしゅっ
と、メカ・デュラハンの剣圧閃を掻き消した。
「××△@◇++▽*×ッ!?」
メカ・デュラハンは、機械のクセにいっちょ前に足が竦み、一瞬、後退しかけた風に見えた。
かと思いきや、霊気竜巻が分解して生まれた衝撃波は、その勢いとどまることを知らず、メカ・デュラハンのバカでかい図体まで到達した。
ズガンッ
と、ヒザカックンならぬノドドッカンして、メカ・デュラハンの巨体に、オーラキャノンなスーパーラリアットを決める。
もろにダメージ食らったメカ・デュラハンは、あえなく、
ドッスゥゥゥンッ
と、ド派手に仰向けに倒れた。
「うお! 何っ!? よー分からんが、すげえっ!!」
レオナールは、顎が外れそうなくらい、めっちゃ驚いていた。
(言えてる!)
アホっぽい感想だが、俺もそっち側だったら、たぶん、同じ反応をしたと思う。
そうして、今は、霊気竜巻に代わって、そこには、物凄く幻想的なカリヨン時計塔が、神々しい光を放ちながら、天衝くように聳えていた。




