第3章 18_バトル漫画な俺等(2)- 反則すぎっしょ!
俺は、メカ・デュラハンの攻撃をひらりひらりと避けながら、隙を見て、また、あの「光の矢」を速攻撃てる体勢を作り出す。
(この魔法、両手空いてないと使えないから、いちいち面倒なんだよな)
ただ、現在のリシャールには、近接戦を避けて攻撃できる方法が、これしかなかったんだ。
俺は、「光の矢」を維持しつつも、回避に徹しながら、じっとメカ・デュラハンを観察する。
メカ・デュラハンの甲冑には、あちこち宝玉飾りが付いていた。
そいつが、あの巨剣を振るうたび、ビィンと赤色に光るんだ。
(アイツ、首が無いけど、搭乗ロボット的なヤツなら、たぶん、どっかから、外が見えてるはずなんだよな……。なら、雰囲気的に、あの宝玉が小窓で、中であのコビトどもが手分けして監視や操縦してる?)
前世の記憶を辿れば、特撮モノの戦隊ロボットだって、複数人で操縦していた。まあ、あれは、元が別個の機体で合体してるから、この状況と違うかもだけど。
てか、あいつら、全員で協力して、あの巨大メカ(?)を操縦するだなんて、マジで部品なんだな。って、変な意味で感心する。
そうして、最も、ヤツの息の根を止められそうなのは――。
たぶん、胸部にある、一番デッカいドーム飾り。その中心だ。
戦隊ロボット系は、目の部分が窓、司令塔的な立ち位置で頭――つまり、脳ミソの位置にメインの操縦席がくるのが相場だが、メカ・デュラハンには、首がない。
なら、もう、人間の心臓がある位置に、メインの操縦席を配置するしかない。しかも、指揮官を務める操縦者が駆動機コビトなら、「モーター=動力=心臓」の図式が成立する。
(――しゃっ! 今に見てろよっ。このデカブツめっ)
俺は、メカ・デュラハンの巨剣の嵐を潜り抜け、しっかり標的を狙い打てる位置と距離を測る。
しかして、レオナールも俺と同じ読みをしたらしかった。
俺とレオナールはチラと目配せして、互いにコクリと頷いた。
「油断すんなよっ! リッシーッ!!」
「君もねっ!!」
激励し合うや、先制しやすい攻撃スタイルなレオナールの方が先に飛び出す。
「いくぜっ! この首なし野郎っ!!」
ぽん、ぽん、ぽん、ぽん、ぽん、ぽんっ!
と、レオナールは小さな火の玉を6つ作り出した。
それらをジャグリングやお手玉みたいに巧みに回しながら、メカ・デュラハンの強烈な一太刀が振り下ろされるのを僅差で避けて、
「ヘクサス・イグナステラリオ・キクロカノン(=六芒炎星弾)ッ!」
と、標的めがけて激烈パンチを繰り出した。
途端に、6つの炎弾が六芒星を形成したまま、シュルルッ、と回転推進して、
ズドンッ!
ゴォッッッ
と、メカ・デュラハンの胴体に命中し、華々しく燃え上がった。
かと思いきや――。
メカ・デュラハンは、サッと壁みたいな巨盾で、
バスンッ
と、6炎弾陣を防いでいた。
たちまち、6炎弾陣は、巨盾の表面で、ボワッと弾けて砕け、ぷすぷすと小さな6つの黒い煙を残し、脆くも消え去った。
「んなっ!?」
勝ち確していたレオナールは、ギョッと目を剥き、右往左往する。
対する巨盾は、そのまま、レオナールに向かって突き出される。
べいんっ!
と、巨盾は容赦なくレオナールの身体をブッ叩いた。
「ぐわっ!」
「レオナールッ!!」
愕然として、俺は叫んだものの、
レオナールは、苦悶の表情で、
ひゅーんっ
と、放物線状に遠く後ろへ吹っ飛ばされた。
瞬間、狙い澄ましたように、メカ・デュラハンは、しゅばっ! とレオナールに追いつき、小蝿でも打ち払うように、メガ・ファルシオンで、
ザンッ!
と、斬りつけた。
(ああっ! 危ないっ!!)
俺が顔面蒼白になった直後、
ギャンッッッ!
と、硬質な音が響いた。
中空のレオナールがジタバタもがいて、どうにか抜刀して、自分を狙うメガ・ファルシオンの攻撃を剣で受け止めたんだ。
「ザッけんなよっ! これしきで叩っ斬られてたまるかっての!!」
憤怒の形相で豪語するも、浮いて全く足のふんばりが利かないレオナールは、メカ・デュラハンの剣撃の威力にあっさり競り負けた。
ブンッ!
「うおっ!?」
あえなく、レオナールは、剣を握り締めたまま、全身フリスビーみたいに、
ギュルルルルルル――
と、激しく回転させられて、戦闘空間の端まで弾き飛ばされた。
「わっ」(あれはヤバい!)
俺も、一瞬、うろたえた。
出来れば助けてやりたかったけど。
だが、今は、それより優先すべきことがある。
なぜなら、俺は、ずっと狙っていたんだ。
この「光の矢」を、あのドーム飾りにいつでも撃ち込めるように。
その体勢を懸命に維持して。
俺はキッとメカ・デュラハンの胸部に焦点を定めた。
レオナールの果敢な挑戦のおかげで、メカ・デュラハンの正面がガラ空きになったんだ。このチャンスを逃す訳にはいかない!
(頑張れ、レオ! 死ぬなよっ)
俺は、レオナールが自力で落下の衝撃をいなすのを願って、一心不乱に唱えた。
「トランピアンザ、コルポリオーサ(=貫け、穿て。)」
フォンッ
矢をつがえるように、俺の両掌の間で、光の長弓が閃く。
「ソラリエ、ディメン、クラッサプレス、オーレア、ヴェローサ、グロイツ、シューティン、スピニッシェン!!(=日輪の如き破邪の閃き、燦々と輝く黄金の矢)」
シュインッッッ――
まもなく、俺の手から離れた光の矢は、流星のように飛んでいく。
メカ・デュラハンの胸部のデカいドーム飾りめがけて。
ただ、ひたすら一直線に。
ドシュッッッ!!
きらめく光閃は、まんまと標的を貫いた。
「やった……!!」
そう喜んだのも、束の間のこと。
パァンッ!
と、刺さった光の矢が弾け飛んだ。
(ハイッ!?)
思わず、俺は目ン玉飛び出した。
だって、あの光の矢は、今のリシャールにできる最大限の魔力を込めて放ったのに。
あの禍々しく光るドーム飾りは、その直撃を喰らったにも関わらず、まったくの無傷だった。
普通なら、それだけレベル差があるから無効化されたんだろう、と思いがちだけど――。
なんか、この感じは違う気がした。
強いて言うなら、「消された」ってよりは、「なくなった」みたいな。
魔力の流れからして、むしろ、俺の魔法の方が、自壊した雰囲気だったんだ。
それどころか、さっきまで赤だったはずのドーム飾りが、いつの間にか、全面、つるっとした黒になっていた。
なんで、黒? と思ったら――。
その色、質感、その形状に、なんだかバリバリ見覚えがあった。
それも今世のじゃない。
まさしく前世の記憶の中に。
「えっ……えええっ!? まさかっ……あれって、太陽電池っ??」
俺はたいそう震駭させられる。
そのビジュアルは、どこからどう見ても、SDGsで太陽光発電なアレだったのだ。
「ジャア、オレノ魔法、ガチデ、アイツノ、エネルギー源……」
ショックのあまり、ひゅっと魂が口から抜けそうになり、ぽかんとする。
したら、矢庭に、
ジッジジッ……
と、変なノイズ音が聞こえた。直後、
ゴアッ!!!
と、あのドーム飾りから反射極大レーザー砲がブッ放される。
「ぎゃっ!」
俺は慌てて避けようとしたが、反応が一歩遅れた。
(直撃するっ!?)
あまりの恐さに目をつむってしまい、足も動かせない。
俺は、死を覚悟した――。




