第3章 17_バトル漫画な俺等(1)- 紙装甲じゃね? (挿絵_10)
「どどどどどーすんだよっ! アレッ……」
「わわわ分からないよっ、僕にだって! まさか、あんなのが出てくるなんてっ」
レオナールと俺は、激しくうろたえながら、バカでっかいファルシオンと巨盾を構えたメカ・デュラハンに恐れをなす。
そのうちにも、一足飛びに、メカ・デュラハンは猛然と斬り込んできて、
ギュインッ――!
と、凄まじい剣閃が、俺等を襲ってくる。
「ヒッ!」
「ぎゃっ!」
俺もレオナールもギリギリ躱したが、俺は金髪の端っこが、レオはラフに結んでいたネクタイの端がザックリ切れた。ガチで俺等の首根っこが狙われている。
「なんで、首無いくせに、こんな斬れんだよっ!」
「知らないよっ! 首が無くても斬れるから、首無し騎士なんじゃないのっ!?」
「はァっ!? それじゃ、何の説明にもなってねえっつのっ!」
「いいから、集中っ! ボサッとしてると斬られるよっ!!」
俺等は、ギュンギュン繰り出される剣閃を必死にひょいひょい避けながら、そんなアホな会話をする。
とはいえ、メカ・デュラハンの猛攻は鋭く、それをずっと避け続けるのは、なかなか至難の業というもので――。
ブンッ!
と、まっすぐ向かってくる巨大な凶刃に、「躱すのは難しい」と判断した俺は、
「ハッ」
と、咄嗟に自分の剣で、それを受け止めた。
ガッキィィィィンッ!
衝突した刃の切先で激しく火花が散った。そのあまりに強い衝撃に、
ビリリリリリッ
と、俺の剣握る腕までがめっさ痺れてしまう。
「痛って!」
俺が涙目になって硬直していると、メカ・デュラハンは飄々として、勢いそのままに俺の剣を打ち払い、さらなる追撃を重ねてくる。
ブンッッッ!
(あ。やっべっ……!)
俺は「斬られる!」とおののいた。
しかし。
ボゥワッ!
俺に巨剣が直撃する前に、燃え盛る火炎が、ドウッと、真横からメカ・デュラハンに命中した。その巨体が大きく左右に揺れ、
「〇+△*++ッ--- !?」
と、メカ・デュラハンは、変な機械音声を発して、甚だ怯んだ。
「俺を無視すんなよっ、デカブツ!」
そう恫喝するレオナールの掌には、火炎魔法の痕跡が漂っていた。
あの時、即座にレオナールが火炎弾を撃って、俺への攻撃を妨害してくれたんだ。
メカ・デュラハンも、ササッと距離をとる。
おそらく、メカ・デュラハンは機械だから、いくら耐火耐熱強度があっても、その食らい方によっては、直接ダメージくるから、素直に警戒したんだろう。
「ごめんっ! アリガト」
「おうっ」
俺が苦笑すると、レオナールもサムズアップして、ニッと笑う。
しっかし、たったあれだけであんなに腕が痺れるなんて。
なんつー攻撃力だ。
見るからに強そうではあったけど、こんな重量戦車な敵に、生身で立ち向かわないといけない俺等なんて、紙装甲すぎるというか、もう蟻が象に挑むも同然だ。
でも、ここは、撤退不可避の戦闘空間だ。
1発でも攻撃くらうとぺしゃんこになるのは、明らかに俺等の方なので、正攻法で応戦とか出来るはずもなく、どうやって、アレに勝ったらいいものかと煩悶する。
「つーかっ、アンタのその細っこい腕じゃ無理だって!!」
レオナールは呆れながらも案じるような瞳で俺を見る。
「じゃあ、君なら斬れるっていうのっ!?」
訊き返すと、レオナールは「うっ」と口籠った。
たぶん、レオナールにも無理なんだ。
まあ、アレとマトモに1vs1張れる人間なんて、そうそういないと思うけど。
そうして、俺等は、器用にメカ・デュラハンの攻撃を避けつつ、攻撃&後退を繰り返していた。
俺は剣で、レオナールは炎拳&【火】魔法で。
リシャールの【光】魔法は、この俊敏で凶悪なメカな敵には、なんとも相性が悪いというか、使いどころが難しい。
特に、「ミニミニ太陽」は、たぶん、並みの火炎よりは火力ありそうなんだけど、持久力と魔力の消耗が著しいのと、速射連射不可だから、ここでは使えそうにない。
そう考え、今は、どうにか剣だけでねばってるんだけど、さっきみたいに、接触だけで麻痺すると困るから、そうそう一太刀をお見舞いできない。
一方、レオナールの火炎弾は、いい感じに牽制にはなるけど、それも微々たる感じ。炎拳にいたっては、敵側に異常な強靭度とリーチがありすぎて、そもそも直接叩き込むのが難しそうだった。
それでも、勘のいいレオナールは、巧い具合にメカ・デュラハンの背後に回り込んで、炎拳を炸裂しようとした。
けれど。
どうやら、メカ・デュラハンの背中側には、小型ミサイルが搭載されていたらしい。
ドンッ、ドンッ、ドンッ!
と、発射されたそれらは、赤い尾を引いて、レオナールを標的って飛んでいく。
「ぅおぉっとォッ!?」
だが、レオナールは、炎拳を通常の火炎魔法に切り替え、弾頭が自分に届くより早く、その火炎をぶつけた。
ボシュッ、ボシュッ、ボシュッ
と、レオナールの火炎は、見事、全弾相殺して、ギリ難を逃れた。
「アッブねっ! ミサイル持ってんなら、最初から言えよっ!! この卑怯もんっ」
レオナールがそんな文句たれても、機械なアイツが返事するはずもなく。
メカ・デュラハンは、無情にも苛烈な斬撃を繰り返す。ただ、砲撃は、弾数とか、発射条件とかに制約でもあるのか、反撃・オンリーぽかった。
俺は俺で、「もう! ヒヤヒヤさせんなよ!!」って感じ。
しかして、【光】属性よりも【火】属性のが相性良い敵だとしても、やっぱ丸腰はヤバい気がする。
「レオナールッ!」
俺は、一旦、カチリと剣を鞘に納めて、装着ベルトの付いた鞘ごと、ブンッと剣をレオナールに放り投げた。
レオナールも反射的にパシと受け取った。
――が、なにぶん、突然のことで動揺したらしかった。
「オ……オイッ……」
「とりあえず、ソレ、使って! 僕のお古で悪いけどっ」
「そんなことしたら、アンタが……」
「大丈夫! 僕、予備の剣、持ってるし。頑張って避けるしっ」
「けどっ、オレッ、剣の腕はそれほどっ……」
「そんなの分かってるよ! そもそも、メカ・デュラハン、とんでもないから、真向から斬ろうとする方が間違ってるんだ。だけど、何もないより、そんなのでも装備してる方が、いざという時の弾除けに出来るから……っ!」
俺が拳を突き上げて、高らかに呼びかけると、
レオナールは目をぱちくりして、
「お、おうっ」
と、照れつつも、グッと片手を固く握り締めた。
そうして、レオナールは急ぎ【王太子の剣】を腰に帯びたのだった。




