第3章 16_ミニミニ大逆襲
そんな風に、俺等がアホな会話をしていると、不意に、絶命したはずのガチむち巨人の体、首断面から、何か小さいものが、
モゾモゾモゾモゾ……
と、這い出してきた。
この位置と距離でアレが見えるってことは、チワワくらいの大きさだろうか。
俺は不思議に思って、ソレを目で追っていると、ソレは、
ぴょんっ
と、仰向けに倒れた巨人の胸部に跳び乗った。
傍目には、棒が突き刺さった円柱に、色違いの2本の線が生えたみたいな頭部、人形みたいな細っこい体。ちっちゃい黒い箱状のリュックっぽいのを背負い、そこに頭から伸びた2本の線が繋がっている。
なんだか、ものすごく直近で見た覚えのあるフォルム。
子供のラクガキみたいなミニミニなヤツ。
「……!」
その正体が明らかになって、俺は愕然とした。
(あれって、まさか、部品ならぬ駆動機コビトっ!?)
形状からして、もうミニマルな部品じゃなくて、立派な複合体だ。
しかも、複合体なだけあって、今まで見たどの部品コビトより、一回り大きい。
あの線がコードだとしたら、あの背中にしょってる黒いのって、もしや、アイツ専用の蓄電池?
その上、駆動機コビトは、その小さな首に、ミニミニな軍隊ラッパを掛けていた。
まもなく、駆動機コビトは、ミニミニな軍隊ラッパを咥える。というか、絵面的には、そのシャフトにラッパが接続している状態だ。
駆動機コビトは、そのまま、意気揚々と、自分の頭部に備わる部品を、
プイーンッ
と、回す。
いや、俺の目には判別つきにくいんだけど。音がするので、たぶん、回ってる。
その動力か、もしくは、内臓プロペラみたいなので、ラッパに風が送られたからだろうか。
♪パパパッ、パパパッ、パラパッパパー、パパラパッパッパッパー、
パパ、ラッパ、ラッパ、ラパラ、パッパラ、パパラッパパッラッパーッ!!
なんて、器用に、軽快なリズムの号令音(?)を吹いてみせたんだ。
ほどなく、この部屋の扉があった方角から、
(この時には、バトルの巻き添えで、もうブッ壊れて、マーブルキラキラになってたんだが)
ザッザッザッザッ……
と、物凄い数の足音が聞こえてきた。
何かと思えば、それらは部品コビトの大軍で、ヤツらは、完全に出陣するっぽい隊列を組んで、ぞろぞろ、こちらに歩いて来ていた。
「うわっ! 何だよっ、あのチビっこいのっ。キモッ!!」
レオナールも、悪寒を感じたのか、我が身を抱いて、ブルッと竦み上がった。
(だよなー。アイツら、ガチむちサイコロ巨人とは、また違う意味で恐いよな。つか、そもそも、アイツら、クソみてえに多過ぎんだよっ!)
俺は苦笑いをしたが、ハッとする。
(まさか、俺等、今度は、あの大軍と戦うワケっ!?)
なんて、ゾッとしていたら、部品コビトらは、ガチむちサイコロ巨人の分離した箱頭の周囲をずらっと取り囲んだ。
それを認めた駆動機コビトは、隊員(?)な部品コビトらに指示しやすい立ち位置へ、ぴょんっ、とジャンプ移動した。
駆動機コビトは、再び、高らかにラッパを吹いた。
♪パッパパ、ラッパ、パッララッパッパッ、
パッラパッ、パッラパッ、パラパラパー!!
すると、部品コビトの何人かが、あの箱頭を、うんしょ、うんしょと押し始めた。完全に、運動会の大玉転がしみたいな絵面だ。
箱頭は、まったくサイコロのように転がって、あっという間に、その向きが天地逆転に、顔が「▽〇〇」に換わる。その上、それは、本当に箱らしく、首側だった方が、ぽっかり空いていた。
(は!? 何っ、あの穴ッ)
罷り間違っても、俺の光魔法で空いた穴じゃない。
おそらくは、元から、あの穴で箱頭が首にドッキングしていたというか、挿入口みたいな? ちょうど、着ぐるみの頭部と同じ構造というべきか。
(……え。着ぐるみ?)
俺はなんとなく嫌な予感がした。
駆動機コビトは、また、ラッパを吹いた。
♪パッパ、ラッパ、パッパラーッ、パッパ、ラッパ、パッパラーッ!!
今度は、一際、強く、勇ましく。
すると、箱頭を取り囲んでいた部品コビトどもが、キャーキャー騒ぎながら、
ぴょいっ、ぴょいっ、ぴょいっ――
と、次々箱の中に飛び込んでいく。
部品コビトが1匹ダイブするたび、箱は、パアアとまばゆい光を放ち、どこからか重油っぽい臭気が湧いて、怪しいマーブルキラキラな煙が辺りに立ち籠める。
その煙に誘われたのか。もしくは、駆動機コビトのラッパに反応したのか。
倒れていたはずのガチむち巨人の体が、
ぬぼーっ
と、その場に立ち上がっていた。
「え」
俺は、恐ろしいことに気づいてしまった。
(あの『〇〇△』……実は、目と口じゃなくて、〇が部品コビトで、▽が矢印なんじゃあ……??)
つまり、上向き三角が「OUT」で、下向き三角が「IN」。
――と、いう意味ならば。
(部品コビトとガチむちサイコロ巨人って、実は両方揃って、完全体……?)
やがて、すべての部品コビトが箱の中に吸い込まれると、駆動機コビトがテケテケと箱まで歩いてくる。
ソレを、ひょいっと持ち上げ、あの巨人ばりに、ぐぐぅっ、とカエル座りし、その脚のバネを力に、
びよーーーーんっ!
と、高く跳び上がった。
(マジか! って、コトは、あの巨人――、あれで1個の生命体じゃなく、実は、搭乗ロボット的なヤツで、あの駆動機コビトが操縦してたのかっ!?)
その予想は、どうやら間違っていなかったらしい。
部品コビトらを無限に呑み込んだ箱を担いだ駆動機コビトは、しゅたっと、首無し巨体に降り立った。
パアア――――!
首断面が光るのと共に、駆動機コビトは、
ずぶずぶずぶずぶ
と、中に沈んでいった。
そのコビトの姿も箱もまるっとガチムチ巨体に這入り込むと、
カッ!
と、凄まじい閃光が戦闘空間を駆け巡った。
「うわっ!」
「まぶし……ッ!!」
俺とレオナールは、思わず怯んで、一時的に盲目みたいになる。
果たして、目を開けた時には。
「マジかよ……」
レオナールは戦慄したようにつぶやいた。
俺もゴクリと息を呑み、全身が恐怖で震えるのを圧して言った。
「首無し騎士ッ!」
そこには、もう、ガチむちサイコロ巨人でもなければ、部品コビトでもない。
なんともメカニックな雰囲気漂う、首が無い、巨大な甲冑騎士が、俺等の前に立ち塞がっていた。




