表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
王太子殿下(攻略対象)は、溺愛がうんざりなので、今度こそ本格ファンタジーを目指します !?  作者: 戸埜前 遥宇
第3章 システムの裏側 ~ファンタジーなのに、SFってアリですかっ?
67/101

第3章 15_日輪の矢 (挿絵_09)

 果たして、レオナールの炎拳がガチむちサイコロ巨人をKOしたとはいえ、ばらけていると危なそうなので、俺は、とりあえず、剣を鞘に納め、急いでレオナールの傍へ駆け寄った。


「――っていうか、君、得意な武器、ハルバードじゃなかったの?」


「ん? あー。前はなー」

「……前?」


 俺が首を傾げると、レオナールは頷いた。


「ほら。俺って、留年してるじゃん?」

「う、うん……?」


 俺は眉をひそめながら、ニルスに聞いた内容を思い出す。


「ええと、確か、実家の毒イタチ(ポワゾフィッチ)退治の任務に同行して、うっかり酷い怪我をして、進級単位が取れなかった、って――」


「そーそー。で。ソレ、ただの負傷じゃなくて。なんか猛毒まで喰らっちまってて。一時は、生死の境さまよったんだ」


 ニカッと笑ってレオナールは告白する。けれど。


(いや。生死の境、って。かなりヤバくね?)


 俺は思ったものの、レオナールはさして気に留めるでもなく、言葉を続けた。


「で。俺、目ェ()ました時には、医者に、半身不随になるかも、って言われて。俺、必死こいて治療に専念して、ギリ回避したと思ったんだけど。今度は、それが裏目に出て、左足切断の危機に陥ったワケよ」


(半身不随に左足切断って!? いやいや。どんだけヤバいんよ!)


「でも、俺は、もう二度と、そんなんで俺の青春邪魔されたくねえっつって、普通の医学書だけじゃなくて、魔法薬学書とか、とにかく、めっちゃ読み漁ってさ」


(……すげえ。俺だったら、すんなり諦めて受け入れちゃうかも。だって、リシャール(おれ)は王族だから、身の回りの世話をしてくれる人は腐るほどいるし。最低限のことさえ出来れば、とりま充分、みたいな?)


「藁にもすがる思いで、あれこれ試して、どうにかこうにか回復させた後、ガチでリハビリ頑張ったんだ。したら、やっぱ、完全に治るまでは、ハルバード、上手く扱えんくてさ。なら、せめて、格闘術(こっち)の方、強化してみっか、ってなってー」


 レオナールは、グッと拳を握る。

 その拳には、ほんのり炎のオーラが籠っていた。


「ま。人間、諦めなきゃ、どうとでもなるっつーことだな。悔しくねえっつったら嘘になるけど。俺は俺で、今はまあまあ満足してんだ。あん時の俺、ガチで頑張ったよな、って!」


 ふふん、と傍目には不遜に映るくらいだったけど。

 言い切ったレオナールは、若干、輝いて見えた。


(こいつ、こんなにチャラいのに、ここまで真面目に苦労人だったとは。勝手なイメージだけで、あんま馬鹿にしちゃいけないな。っつーか、むしろ、王太子(おれ)のが甘ちゃんすぎて、恥ずかしくなっちゃうかも)


 俺は感心して頷いた。

 我知らず、フッと顔を綻ばせ、つい、レオナールに尋ねてしまう。


「それで、魔法を掛け合わせることにしたの? ただの徒手空拳じゃ、しっかり武装した敵や、魔物と戦うの、不利になりそうだから」


 この時、俺は、たぶん、上気していた。


 だって、あんだけスゲー破壊力なんだ。

 きっと、()()にも、そういう厳しい修行とか、感動ドラマがいっぱい詰まってるんだろう。


 そう期待してたから。


 なのに。レオナールときたら。


「あ。炎拳(コレ)?」


 さも得意げに赤く輝く拳をチラつかせながら、


「いや、これは、ガチで偶然の産物っていうか。()()()()()鹿()()ってヤツ?」


 と、あっけらかんと言った。


「は」

 一転、俺は目が点になった。


(か、火事場の馬鹿力、って……?)


 俺は甚だ当惑したが、レオナールはそんな俺なんて全く目に入らない様子で、


「ありゃあ、ちょうどリハビリ終わったぐらいン時じゃねえかな? うちの兄貴ら、俺がヘコんでるの気にして、天気いい日に野駆け誘ってくれてさー。だけど、そん時、俺等兄弟んトコに人喰い魔猪(オーグルボア)が突っ込んできたんだ」


 と、俺に向かって、グワッとそのモンスターが威嚇するマネをした。

 俺もついつい「ワァッ」と怯む。しかして、レオナールは、


「で。俺、丸腰だったからさ。とにかく、ただで()られてたまるかよ、って。とりま、なんでもいいから、ズガァンッと1発、お見舞いしてやろうと、無我夢中で、ソイツ、吹っ飛ばそうとしたんだ。したらよ。なんか、たまたま出来ちまったワケよ!!」


 と、俺の眼前でシュッとその「やけくそパンチ」を再現してみせた。

 そのまま、ガハハと大笑いする。


 なんかもう、チャンピオン・ベルト勝ち獲ってやりました、なテンションだ。


(ナニソレ!? 漫画じゃないんだから)


 俺は、またしても、ガガンッ! となった。


 確かに、ピンチの時に覚醒して必殺技を編み出すのは、少年漫画あるあるというか、それがもはやハイライトな感じだけれども。それがリアルに起こる、って。


 レオナール(こいつ)、どんだけポテンシャル(たけ)ェんだよ?

 それとも、レオナール(こいつ)も転生者っぽいから、ソレ、転生チートなギフトなワケ??


(だとしたら、俺、ちょっと嫉妬しちゃうかも)


 だって、リシャール(おれ)は、1周目(まえ)、そういう特殊なチートは付かなかったし。この2周目にいたっては、【ループでペナルティ】食らってるんだから。


「ア、アハハ……。お、面白いね、君――」

「おうっ! 俺は天才だからなっ!!」


 レオナールは、グッと親指立てて、また、てへぺろする。


 うわ。なんかムカツクわー。


 俺は笑顔のまま、ピキとこめかみに血管浮かせ、地味に苛立ちを滲ませてしまう。


 ところが。


「って、言いたいのは山々なんだけどさー。俺、やっぱ、一番(いっちゃん)得意なのは、結局、どっちでも無いワケよ。とりあえず、1日1発は、ホームラン打っとかんと。なんか、こう、調子出んっつーかァ――」


 不貞腐れた顔で、レオは、ぐるんぐるんと利き肩を回しながら言う。


(え。言いたいの、実は()()()!?)


 いや、生死を賭けた人外バトルと野球を一緒にすんなって!


 つーか、なんだ、このフザケた既視感(デジャヴ)

 この流れ、ひょっとして――――。


「そうだ! なあなあ、リッシー、アンタ、持ってきてんの、剣だけ? たとえば、きん――」


()()()()()なんて持ってきてないよ。っていうか、状況的にある訳ないよね? フツー」


 ニッコリ微笑みながら、ズバッと、俺は言う。


(――ったく、何が『金属バット最強!』だよっ。これだから、野球バカってのは!)


 でも、コレ、まんま、同じコト言ってたヤツを俺は知っている。


 前世のマサト(おれ)が好きだった『アポカリプス・ファイターズ』ってFTG(かくゲー)に、金属バットを武器にするネタキャラがいたんだけど。マサト(おれ)対戦(プレイ)する時、()()()はいつも、そのネタキャラばっか使っていた。


 でも、それはゲームだから成立するんであって。

 リアルにそんな使い方したら、もう、それ、スポーツじゃなくて、流血必至のキケンブツだし! そんなヤツ、目の前に居たら絶対ヒくわ。

 純然たる野球少年なら、本気でバット武器にしようなんて、フツー思わんからっ!!


「やっぱ、知ってんじゃん。野球――」


 レオナールは、(いや)な顔をして、チッと舌打ちした。


(うわ。ガチで図星だったのかよっ! これだから、真性野球バカは……)

 なんて言いたいのを、俺はぐっと抑えて、


「さあて? どうかなあ。ただの当てずっぽうだよ」

 と、小さくクスクスと、ちょっと照れ臭そうに苦笑してみる。


 こんなの、めっちゃ白々しいかもだけど。

 ここで絡まれたら、後々厄介なコトになりそうな気がしたからな。


(平常心……、平常心……。リシャール(おれ)は、この国の王太子なんだから……)


 その時だった。


 矢庭に、フッと、なんか俺等の周りだけ、一気に暗くなる。


「え」


 何事かと思って真上を見上げたら、ガチむちサイコロ巨人の(ぶっと)い脚と、つるんとした股間が見えた。


 というか、(にっく)きヤツは、あの、凶悪な()()()()()()を、俺等にかます寸前だったんだ。


「マジかよっ、クソッ! 復帰早くねっ?」

 レオナールは、また、猛然と舌打ちする。


「……!」

 心情的には、俺もめちゃくちゃ焦っていた。


 けど、これも2周目だからかな?

 俺は、めっさ反射的に、ほぼほぼ無意識で、速攻、光の呪文を唱えていた。


「トランピアンザ、コルポリオーサ(=貫け、穿(うが)て。)」


 長弓で矢をつがえるように、俺が構えるその場所に、


 フォン


 と、金色(こんじき)に光り輝く霊光の弓矢が現れる。


挿絵(By みてみん)


 しかして、今にも、ガチむちサイコロ巨人のバカデカい足の裏が迫っていた。


 ゴォォォォォォ――


 このまま動かなければ。きっと、俺等は踏み潰される。

 だが、こちらが逃げられないからこそ、向こうも、きっと、俺の攻撃を避けられないハズ。


 俺は、冷や汗するも、クッと歯を食い縛って、思い切り詠唱を完成させた。


「ソラリエ、ディメン、クラッサプレス、オーレア、ヴェローサ、グロイツ、シューティン、スピニッシェンっ!(=日輪の如き破邪の閃き、燦々と輝く黄金の矢っ)」


 俺が、ビンッ! と射掛ける動作をすると同時に、その掌からは、光の矢が放たれる。


 シュインッ――――!


 と、瞬く間に、光の矢は、澄み切った風切り音を立てて飛んでいき、


 ズドンッッッ!!


 と、敵のケツ穴から脳天まで一気に突き抜けるような(いや、マネキン野郎だから、穴なんて無かったけど)苛烈な軌道で命中した。


「ホガアァッッッ――――!?」


 ガチむちサイコロ巨人は、これまでにない悲鳴を上げて、突き刺さる光の矢の勢いに押され、大きく放物線を描くように飛ばされた。


 そうして、高速の光の矢は、放物線の頂点に達したところで、あのつるつるガチムチ巨体から、あの小さな箱頭を(さら)って、


 ブチリッ


 と、引き千切る。そのまま、延々と天まで飛び続け、ようやく戦闘空間(バトル・フィールド)の空の境界に衝突したところで、パァンッ! と霧散した。


 体から分離されて、完全にサイコロみたいになった箱頭は、


 てんっ! てんっ、てんっ……


 と、塔の原型を亡くした床(地面?)に跳ねて、転がった。


 これを見たレオナールは、一言、


「エッグゥッ!」

 と、スッゲェむかつく顔で、ゲロゲロッと吐く真似をした。


 かたや、この時の俺は、フゥと額に流れる汗をぬぐって、やりきった感バリバリだった。


「まァたエラいトコからブッ刺したじゃんっ。やるねー、王子様っ」


 そんな揶揄(やゆ)も反対の耳から抜けてくくらい、俺はめっちゃキリッ! ってしてたのに。


「つーか、()の棒、ケツ穴から串刺しなんて、どこの地獄だよっ? 一歩間違えば、モザイク規制かかったんじゃね??」


 なんて、()()()()ディスりをしてくるもんだから、俺は、ガックゥッとなって、思いっきりズッコケそうになった。


 いや、言い方!


 ってか、棒じゃなくて矢だし、穴なんて無かったし。

 せめて、ビームくらいに言ってよ! 

 俺もわざと()()狙った訳じゃねえし!!

 しかも、()()()()()()て。(いったい誰に対してよっ!?)


 あのガチむちサイコロ巨人が、俺等、踏み潰そうとしたから、角度的に、偶然、そうなった訳で――。


 だけど、レオナールは、てんでお構いなしに、ケケケと笑う。


「つーか、でっけえ()()()()ぶち上げたもんだよなあ。俺、あんなん、初めて見たわ。てか、あの【光】、やっぱレーザー光線的なヤツなん? 俺の【火】とどっちが熱いんっ??」


 なんて、レオナールのヤツ、また、ロケットとか、この世界でありえない単語、口走ってる。かくいうマサト(おれ)も、1周目(まえ)の時、クロードやニルスに、同じようなコトしちゃってたから、文句は言えないけど。


「知らないよ! そんなのっ。僕は、王家に伝わる魔導書の通り、使用してるだけで――」


「ふぅーん? じゃ、あれって、とどのつまりは、『虫眼鏡で日光集めて、黒い紙、ピンポイントで焦がして穴開ける』みたいな感じ? 確か、アンタの守護、【太陽】だもんな」


 いやいや、原理的にはそうかもだけどっ。

 なんか、そう言われると、一気に()()()になるやんっ!


 俺は、はあ、と軽く頭を押さえて、「もうヤダ、こいつ……」と本気で思ってしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ