第3章 11_なんかデッカいヤツが現れた! (挿絵_08)
最後の階段も、ずっとずっと暗かった。
いや、ソコが最後かどうかなんて、確証はなかったんだけど。
なんとなく、そんな気がしたんだ。
部品コビトの部屋を過ぎた後、俺は、足元を照らすために、また、ミニミニ太陽を出そうかとも思ったんだけど、あの魔法、結構、消耗が激しいから「やっぱパスで」って断念した。
だったら、普通の照明魔法でもいいじゃん、とも思ったけど。どっちにしろ、魔力を使うことには変わりないから、結局、使わずじまいだった。
だって、拡張オーモニエールに入れてある魔力回復薬の個数もだいぶ減ってたし。とにかく魔力はなるべく温存しておいた方が、万が一、何が起こっても対処できる、って考えたんだ。
それに、人間だって、ある程度は暗闇に目を慣らすことも出来るんだし。ただ階段を登るだけなら、「壁や手すりに触ってれば問題ねえじゃん」って感じた。
しかして、或る場所に来たところで、ずっと伝っていた壁がぷっつり途切れた。
(ん? この感じ……。また、中〇〇階みたいな、小部屋かな)
そう思って、ちら、と手で触れていた壁の方を見た。
「は」
確かに、そこには空間があった。が、扉はない。
トンネルみたいに黒々と大きな口を開けたソコは、心なしか不気味な空気が漂っていた。部屋? にしては、ちょっと小さいような。
かといって、なんだか、今まで見てきた中〇〇階とも違う。
果たして――。
「……?」
窓も無く、暗澹としたソコに、何かぼんやりと白く明るいものがある。
怪訝に思って、俺は目を凝らした。
(明かり? じゃなくて。アレ。あの形、あの感じ――)
頭、戸の高さより上過ぎて隠れてるけど。逞しい逆三角形のボディに、がっしり伸びた腕と、しっかり床を踏み締める2本足――。
どう見ても、人間。
(そっかー。なんだ人間かぁー)
ハハハと笑って、俺は、そのまま通り過ぎかけた。
(ええっ!? ニンゲンっ??)
俺は、ぎょっとして立ち止まり、すすすっと後戻りして、おそるおそる、その小部屋を二度見した。
そこには、やっぱり人っぽいのがぬぼーっと立っていて、その見え方からして、おそらく、身長2m超えはしていると思う。
ボディビルダーも真青な、ガチでムキムキな全裸の大男。
(いや? アレ……男か??)
俺は違和感を覚えて、首を傾げる。
確かに、その身体は、がっしりしていて、堅そうな分厚い胸板と、エッグい割れ方した腹筋は、もはや見事としか言いようがなく、手足も太く、あれで攻撃されたら一溜まりもないって印象だ。
なのに――。
(アイツ……、大事なトコが、無くないか?)
白いガチムチ男は、男のくせして、その股間に有るべきものが無く、全体的にも、なんかつるっとしている。肌ツヤがいいって意味じゃない。
なんていうか、その、マネキンっぽいっていうか、3DCGっぽいっていうか。とにかく表面も造形もいびつに整いすぎて、めっちゃカチコチ。筋線維とか皮膚感の雰囲気が皆無だ。
しかも、これといった光源も無い中で、くっきり見える、あの身体――。
どう考えても光っている。
それも、亡霊とか、魔物とか、幻獣みたいのが、霊的エネルギー放出してる感じじゃなくて。
強いて言うなら、3DCGでオブジェクトに輝度か発光の設定入ってます、みたいな。
どこからどう見ても、白いガチムチ男の身体そのものが光を放ち、なおかつ、透けたりもせず、明らかに物質量があるかの感じなんだ。
訳が分からず、俺が硬直していると、白いガチムチ男は、スッとその場にしゃがみこんだ。
ヤンキー座りで。明らかに、俺の顔を下から覗き込むように。
「ギャッ!?」
俺は悲鳴を上げた。
だって、そんなの、驚愕せずにはいられない。
白いガチムチ男の頭部は、どこからどう見ても、四角だった。
角ばった輪郭、って意味じゃない。
形状的に、完全な箱。
その顔も、人間的な造作でなく、なんだかサイコロっぽいんだ。
ただ、それは、1から6の数字を表すホシでなく、平面に油性ペンで落書きされたかの「〇〇△」――つまり、「〇〇」が目で、「△」が口だ。
(ナナナナナナニっ……、あれっ!? 人間じゃねえェェエェエッ……!!)
まったく想像してなかった事態に、俺は全身凍りついた。




