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王太子殿下(攻略対象)は、溺愛がうんざりなので、今度こそ本格ファンタジーを目指します !?  作者: 戸埜前 遥宇
第3章 システムの裏側 ~ファンタジーなのに、SFってアリですかっ?
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第3章 03_モフモフ変身3連チャン(2)ウサギ

 モン・ラパン下山はなんとかクリアしたものの、人間のまま移動すると遅いし、目立ってしまう。


 しかも、城の大手門のところには、衛兵がちらほら。


 だったら、モモンガのまま、門まで滑空すりゃ良かったじゃん、って思うけど。


 森との位置を考えると、普通に飛距離が足りないし、門周りは、当然、結界というか魔法防網柵が張り巡らされてるので、何もなしで通ろうとすると、たぶん引っ掛かる。


 ただ、人間が出入りする門扉あたりは、通行者や衛兵の安全も考慮して、通行証持ってる人にはガード判定が若干緩いので、そこを通らないといけない。


 俺は王太子なので、当然、通行証、持ってるし。

 変身しても機能するよう、荷物の方に通行証をしっかり固定している。


 そして、大手門の門扉は鋼鉄柵になっていた。


 エルセイユ城は、山城だから、宮殿に至るまでには、山の各所に幾つも関所というか、石壁と小砦(しょうとりで)があって、そっちのが堅牢だから、ここのは、扉タイプじゃなくても問題ない。あと、山の出入口になるから、見通しが利くよう柵タイプなんだ。


 だから、人間は通れないけど、小動物ならギリすり抜けられる。


 門付近の茂みに隠れた俺は、城を出る前に、城の倉庫からくすねてきたイベント用ロケット花火を数十本、地面に刺して、衛兵に悟られないよう、こっそり持ち手の長い火種を作って、順に着火した。

 

 ヒューンッ、ヒューンッ、ヒューンッ、ヒュンッ、ヒュンッ――――!!


「何だなんだっ!?」

「雑木林の向こう側から火がっ!!」


 パンッ、パンッ、パララッ、パララッ――!


「敵襲かっ!?」

「火矢でもなく、大砲でもなく、なんで花火??」

「周囲に燃え広がると大変だぞっ!」

「燃え殻を放置するな! 水かけろっ」


 衛兵らはめっちゃうろたえている。 


 その隙に、俺は、


 ボムッ!


 と、野ウサギに【変身】して、素早く荷物を背負い、


 しゅばっっっ――!


 と、その混乱に乗じて、大手門の門扉の隙間をするりと通り抜ける。

 そのまま、門前道から裾野の草叢(くさむら)に隠れ、一気にすたこらさっさと駆け抜けた。


(っしゃ! 上手くいった!!)


 俺は心の中でだけガッツポーズした。


 ちなみに、俺がロケット花火を使ったのは、魔法で目くらまし的なヤツをやると、宮廷魔導士に感知されたり、城の魔法セキュリティに引っ掛かったりするからだ。


 正直、王太子が、こんなチープで原始的な作戦するのアホっぽいけど、こういうアナログな方が、かえって「子供のイタズラ」感があって、バレた時にごまかしやすいんだよな。


 果たして、城下町では、建物の陰にちょいちょい隠れながら、まさに脱兎の足取りで、


 ぴょんぴょんぴょんぴょん――


 跳ねて跳ねて、跳ねまくって、ぎゅんぎゅん通り過ぎていく。


 街エリアが野ウサギなのは、我がエルセイユ城が建つうさぎ山(モン・ラパン)にちなんで――ではなく、単純に速いからだ。それに、割に持久力もある。なんせ、天敵の多い、食物連鎖ピラミッドの下層被食者だもんな。


 更夜の城下町は、人の気配が乏しくて、しんと静まり返っていた。


(そういや、俺、こういう時間帯に街ん中、あんま歩いたことねーや。なんか新鮮!)


 立派な石畳の路地で、行き交うのは、ほぼほぼ、ネズミか野良猫か――。

 

 そういう小さめだったり、同じくらいの大きさの動物なら、まだいいんだけど。野良犬とかキツネみたいなのになると、ちょっと大きくなるから、野ウサギでも襲われるかもしれん。


 なんて考えると、やっぱり気が急いてしまって、


(変なのにバッタリ遭遇しませんように――)


 と、俺は、どこかに潜んでいるかもしれない天敵に標的にされないよう、めっちゃ必死に駆けた。


 しかしながら、にわかに、酩酊状態の酔っ払いに遭遇して、


「なんだぁ? かわゆいウサちゃんじゃねえかあ……、ヒック!」


 とかって、赤ら顔で話しかけられると、


(ヒッ!)


 と、別の意味で、めちゃくちゃ、ビックゥッ! って、飛び上がって、すっ転びそうになった。


(ぶつかるかと思ったじゃんっ!)


 転ぶのも嫌だけど、追突事故なんて、ガチでゾッとする。


 だって、野ウサギ、猟犬も振り切るほどのスーパーランナーだけど、フルスロットルで走ってると、急に止まれないんだもん。急角度な方向転換もムズいしね。


 もし、千鳥足の酔っ払いなんかに突っ込んだら、まず骨折しやすいウサギ(おれ)の方が即死か重体になりそうだし。いくら小さくてモフモフでも、原付バイク並みの速度で当たってきたら、人間側だって(たま)ったもんじゃないだろう。


(やっぱ、こういう動物の1番の天敵って、空気読めない人間かもだわ)


 野ウサギな俺はゲンナリする。


 しかして、俺は、タイムアップごとに、寸前で人っ子1人いない建物の陰に隠れて、また【変身】するのを繰り返し、ひたすら閑静な深夜の街を駆けていった。

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