第2章 11_生徒会に入った俺(1)―カメラあるんだ?
あの日、王太子はイレギュラーでヒロインと出逢ったものの、アンジェルは、ゲーム通り、登校してくるのが入学式の1ヶ月後らしかった。
あれから、俺は、勉学に励む傍ら【生徒会】に入った。部活動は、特定の部には決めず、要請があったところに臨時で顔を出す、みたいな感じになっている。
それは、王太子の公務や生徒会執行部の仕事があるから、ってのもあったけど。
それ以上に、学園や政府から「王太子が特定勢力に肩入れするのはよろしくない」みたいな話になって。なんか、そういうフリーランスなスタイルをとることになったんだ。
とはいえ、俺は、王太子だけど、まだ入学したての1年生だし?
学生全員の目線に近しい感覚を養うために、敢えて、生徒会活動も、全役職の仕事を順繰りで経験できるよう、各曜日ごとで振り分けて、それぞれサポートする感じになっている。
で。婚約者の俺がこんなだから、悪役令嬢も生徒会に入ろうとしたんだけど。
シナリオ・リシャールが「入るな」的に釘を刺したから、マリエッタは、生徒会の下部組織【淑女会】っていう女子生徒オンリーのサロンっぽい方に入った。
なので、俺は、
(あれ? 1周目は、悪役令嬢も生徒会じゃなかったっけ??)
って、思ったんだけど。
2周目は、とかくイレギュラーなハプニングが起こりまくるので、なんか、もう、いちいちツッコむのにも疲れてしまった。
それに、
(シナリオ・スイッチ回避には、悪役令嬢との接触も避けた方がいいしねっ♪)
って、ことで。
とりあえず、俺はあんまり深く考えないことにした。
ちなみに、生徒会の下部組織には、【淑女会】と連立する形で、男子生徒オンリーの【紳士会】も存在している。そのさらに下に、各部活動がずらりと並んでいるんだ。
果たして、たかが、学生組織と侮ることなかれ。
これらが、こんなも複雑に階層化してるのは、たぶん、身分制度が関係してる。
だって、生徒会にも、その入会に厳しい条件あるみたいだし?
国の政治と同じで、学内の派閥争い的な??
ここでの人脈づくりが、卒業後の仕事にも絡んでくるから、わりかし、皆、必死なんだ。
俺は、王太子だから、逆に、あちこちからウェルカムで、「是非うちに!」みたいな勧誘が絶えず、ちょいウザかった。そこで、ひとまず、ニルスが従僕として、日々、王太子の弾除けに奔走してくれてる、ってカンジ。
しかして、俺は、本日、生徒会の書記の仕事を手伝っている。
今年度の生徒会報の第1弾を出すのに、まず、どういう記事を載せるべきか考え、場合によっては取材しなくちゃならないんだけど。その中の目玉記事的扱いで、俺は、王太子として、特別に入学インタビューを受けることになっていた。
なので、とりあえず、当たり障りないコメントを出しつつ、王太子のことも、きちんと知ってもらえるよう配慮する。別に人気取りがしたいわけじゃないけれど。
下手に偏見で嫌われたり、変に疎まれたりしたくないもんな。
そして、これはインタビューなので。原稿は別の人が書くものの、その内容に相違がないか、後で俺自身にも確認を求められた。
俺がパラパラと上がってきた原稿に目を通していると、
ほどなく、資料担当が1台の木箱みたいなものを持ってきて、
「殿下! 皆のために、ここは素晴らしいle sourire du prince(=王太子スマイル)をひとつ、お願いします」
と、言ってきた。
何かと思えば、写真撮影だった。
「へえ。学園にはカメラがあるんだね。念写というか。景色を写し取る魔法? とても、興味深いけれど、どうして、市井には無いのかな??」
すんなり俺は訊いてしまったけれど。
よくよく考えれば、1周目はカメラなんて無かったよな?
実際、国内の大半のマスメディアが発行する新聞や書籍類は、写真じゃなくて、挿絵画家によるものが多いし。
この改変は、世界システム的には、微々たるものなのかな??
「ああ、それなら。この写真機を扱うには、魔力が必要ですし。旧来の手法で仕事を得ている職人がたくさんいるので、世間では避けられるんですよ」
書記の先輩、3年生男子、マケール=ペロワが答える。
「そうなんだ?」
俺は頷きながら、ぼんやり思った。
(まあ、職種の住み分けは大事かもだけど。つーか、これ、汎用魔道具のくせに魔力いるんだ? そんなら、普通にリアル地球にあったダゲレオ・タイプ的なの作ったら良くね??)
なんて、ついつい、前世の記憶が呼び起こされたが。
そういや、俺、あの手のカメラの仕組み、よく知らんかったわ。
(ココ、よくあるサブカルものだと、転生チートな前世知識で、転生者な俺がそれを作って『殿下スゲー!』になるトコだよな。アホな俺には、たぶん無理だけど)
一方、2年生女子、アメリー=シニャックは頬を紅潮させて言う。
「殿下はたいそう麗しくてらっしゃいますし、あの入学式の挨拶で、すっかり殿下のadmirateur(=ファン)になった子達がたっくさんいるんですよーっ。なので、殿下のお写真を載せれば、会報は飛ぶように広まるでしょう!」
「そんな……買い被りすぎだよ。でも、僕で貢献できるなら嬉しいな」
なんて、ほのかに照れ笑いを見せて、謙虚にしてみる。
つーか、俺は、元々「俺が俺が」なタイプじゃねーし。
王太子でも、政敵があれば、出る杭は打たれるので、あんまり目立ちたくはないよな。1周目なんか暗殺未遂事件もあった訳だし。
そうして、俺は、にっこり、指示された通りの決めポーズで、カメラをパシャリ。たちまち、カメラから、ポンッと現像された写真が出てくる。
どうやら、このカメラは、魔力を用いているけど、構造的には、インスタント・カメラに近いようだ。
「わあっ! 流石ですぅーっ♪」
書記係らは、きゃっきゃと紅潮して王太子をべた褒める。たぶん、半分はお世辞入ってると思うけど。いざ、面と向かって言われると、やっぱ恥ズいな。




