第一話 朝からトラブル二連発
早めに一話目が書けたので投稿致します。
最初に言っておく!
俺は異性が好きな、至って男性としてはノーマルな性癖だ!
心の中で雄叫びを上げながら、俺は朝早くから下宿先の高良家の廊下を全速力で駆け抜ける。
そう心の中で主張を続けながら、部屋に急ぎ戻った俺は、その勢いのままベッドへと豪快にダイブして、我が身を薄い毛布という名の、強固な装備で包み込み、そのまま念仏のように心頭滅却と唱え続けた。
親戚とは言えども下宿人たる立場の俺が、こんな朝から迷惑行為に及んでいるのには、とても深い理由がある。
皆はまず、朝起きたら何をするだろうか?
朝日を浴びるために、部屋の窓のカーテンを勢い良く開けたり、トイレに行ったり、速攻で寝巻きを着替えたりと、人によって色々だろう。
そして俺が朝起きて最初にすることは、眠気を覚ますために、まず顔を冷水で洗うことだ。
アホ毛のような寝癖の付いた頭頂部を掻きながら、俺は顔を洗うために、高良家で唯一の、風呂場の脱衣所内に設置された洗面台を目指す。
特に今日は高校の入学式なので、身支度はきちんと整えておきたい。
そんなことを考えながら、洗面台の設置されている脱衣所兼洗面所の扉を開いたその瞬間……。
「きゃっ!?」
顔を洗わずとも瞬時に目が覚める、小さな悲鳴と肌色な景色が、俺の眼前に広がった。
洗面所には、既に先客が居たのである。
俺の視界に映るのは、着替え中の美少女……にしか見えない飛鳥。
同じ男とは思えない華奢な身体のラインと、何故か俺に見られたことを恥ずかしげに頬を赤く染めている飛鳥の姿に、俺の顔まで何処か熱を帯びてしまいそうになる。
そして何よりも気になるのは……。
「ご、ごめん!!!」
俺は其処で、思考を一時放棄し、一目散に自室へと駆け出した。
毛布で全身を包んだ俺は、声が外に漏れないように停止させていた思考の先を、思いの丈を叫ぶ。
「何で下着が女物なんだよ!?」
もう、朝からご近所迷惑だとか、そんなことを考える余裕は、俺には無かった。
暫くして俺の心が落ち着いた後。リビングへ向かうと、其処には制服姿の上に白いフリル付きのエプロンを、違和感無く着こなした飛鳥の姿があった。
瞬間的に洗面所での光景が俺の脳裏にフラッシュバックするが、俺は何とかその発作を、心の中で飛鳥は男だと何度も唱え沈静化させる。
「お、おはよう」
少しぎこちない笑顔と共に、俺が挨拶をすると、鼻歌交じりに朝食のハムエッグを並べていた飛鳥が、俺の居る方へと振り向く。
「おはようアー君。それと……さっきはごめんね」
さっきというのは恐らく話の流れ的に、洗面所でのことだろう。
本当ならば男同士で着替えを目撃したくらいで、何も謝る必要は無い上、状況だけ見れば、むしろ俺が謝るのが筋な気がしなくもないが、何故か朝の挨拶と共に飛鳥は、俺に謝罪の言葉を口にした。
「な、何で飛鳥が謝るんだよ?」
「だってぇ、アー君に着替えを見られるのは僕……別に嫌いじゃないし……さっきは、その、いきなりで……びっくりしちゃっただけだから……」
困惑しながらも質問した俺に対して、頬を赤く染めながら返答する飛鳥。
その言葉の意味する部分が、俺が男だからなのか、それとも別の意味を含んでいるかによって、俺は真剣にこの先の対応を考えなければならない。
「……そ、そうか」
だが色んな意味で恐ろしくて俺はそれ以上言及する事無く、適当に相槌をしながら席に座る。
ちなみに俺と飛鳥の制服は紺のブレザータイプなのだが、どういう事か飛鳥の制服は下がスカートだった……。
何も知らない人が見れば、正真正銘の美少女にしか映らないだろう。
これに関しては別に身内贔屓などでは無く、困った事に素直な俺の感想である。
もうその辺りについては今更過ぎて突っ込む気も起きないし、俺達が今日から通う高校は男子校の筈だが、という考えは記憶の奥底へ、トラウマ管理警備会社と生涯契約を結んで閉じ込めることにした。
それよりも俺は聞かなければ成らない事がある。
「そう言えば叔父さん達は?」
普段ならば俺と飛鳥に叔父さんとその奥さん、つまり飛鳥の母親である香織さんの四人分の食事がテーブルに用意されている筈なのに、今日に限っては、俺と飛鳥の二人分しか用意されていなかった。
三人家族の高良家にプラス下宿人の俺という現在四人が暮らしている筈の一軒家には、現状俺と飛鳥以外に人の居る気配が全く無かったので、何か朝早くから用事でもあったのかと思い質問をしてみたのだが……。
「アー君。これ」
俺の質問に対して、飛鳥はブレザーのポケットから、高校への進学祝いに買って貰ったというピンクカラーのケータイを取り出して、何処かに掛け始めると、そのケータイを俺に手渡してきた。
「……もしもし」
嫌な予感を感じながらも、俺がケータイの受話器に話し掛けると、予想通り叔父さんの声が、俺の耳の鼓膜を振るわせる。
そして俺は、叔父さんの話を聞き終えた後、その内容があまりにも突然な話題だった為に、思わず叔父さんが言った言葉をそのまま呟いてしまう。
「……急な長期出張で暫く帰ってこれない?」
俺がショックから立ち直り、どういった事情か説明を求めようとしたが、既に電話は切れていた。
もう一度掛けようと試みるが、それ以降電話が繋がる事は無かった……。
そう言えばショックで頭が回っていなかったが、電話の最後に叔父さんが暫く連絡が取れそうに無いと、言っていた様な気もする。
叔父さんに連絡を取る事を諦めて、俺が飛鳥にケータイを返すと、飛鳥は何の一片の邪気すらも寄せ付けない、満面の笑みを浮かべながら、俺に話し掛けてきた。
「何だかこれって新婚生活みたいだね?」
「……あ、ああ」
その屈託の無い笑顔と言葉をどういう意味で言ったのか、俺は知る勇気が持てず、ただ曖昧な相槌をしながら朝食のハムエッグを口にする事しか出来なかった。
基本的にこの小説は二人の甘い話がメインにグダグダと展開するかもです。




