第二話 俺が入学した理由
何年も書いていなかったのですが、久し振りに筆を取ってみました。
前話の方も、若干の修正と、加筆をして投稿です。
朝から衝撃の連続だったが、それを嘆いていても、現実は何も変わらない。
飛鳥の作ってくれた朝食を食べた後、幾分かの元気を取り戻した俺は、真新しい制服に身を包み、飛鳥を連れて家を出て、高校へと向かうことにした。
「今日から新生活のスタートだもんな! 気合入れて行かないと!」
「ふふ。元気だねアー君は」
自らに気合を入れるために、力強く拳を握る俺に対して、飛鳥が微笑ましい子供を見る母親のように笑うが、俺がここまで気合を入れようと無駄にテンションを上げてる理由の何割かは、お前にあるって理解してるんだろうか。
飛鳥のお父さん、つまり俺の叔父から言い渡された、飛鳥と二人きりの共同生活。
生活費に関しては、充分な額を振り込んでくれるとのことで、心配要らないのだが、俺としては別の意味で危険な気がしてならない。
従兄弟同士で男同士な、俺と飛鳥の共同生活。
字面だけ見れば、大人が居なくて大丈夫なのかな? という一点を除けば、特に問題もない話だろう。
だがしかし、飛鳥の容姿は卓越された美少女に他ならない。
言っておくが、俺は普通に女性が好きだ。
折角の高校生活。
健全な高校生男子の欲求として、彼女だって作りたい。
放課後にデートとかして、キャッキャうふふとしたいさ!
だが、そんな俺の脳内イメージ彼女のビジュアルが、飛鳥になっている時点で、己の精神が既に限界を迎えつつあると危惧している。
相手は男なのだと、頭では分かっているし、理解しているつもりだけど、この若輩者で未熟な理性が、この無警戒に微笑む見た目美少女の飛鳥を前に、どこまで耐えることが出来るのか、心配でならない。
今朝だって、ばったり着替えハプニングで、あれだけ心乱されたのだ。
……つい魔が差して、という事案が発生したらと思うと、背筋が凍りそうなんだよ!
それに俺は、飛鳥を傷付けたくない。
今でこそ見た目は美少女な男の娘スタイルではあるが、今でも俺の脳裏には仲良く遊んでいた頃の、幼い幼馴染兼、従兄弟の姿がハッキリと刻まれている。
だからこそ、飛鳥だってこうして俺を家に下宿することを許してくれているはずだ。
その信頼を、裏切っちゃいけない。
俺がそんな決意を心の中でひっそりと固めている傍らで、飛鳥は笑顔を絶やさない……こいつには、もっと自分の置かれた現状を理解して貰いたいと思うのは、無理な願いなのだろうか。
高良家を出て、歩いて約20分。
俺と高良は目的地である、今日から三年間を過ごす予定の高校、吉祥学園に辿り着いた。
吉祥学園は、比較的に新しい学校だ。それというのも、この開発都市自体が出来てからまだ歴史が浅く、その内側に建てられた学校も、押して知るべしである。
そもそも、この吉祥学園は元より、開発都市が出来た経緯を考えれば、歴史が浅いのは仕方が無いことだ。
「さて、鬼が出るか……蛇が出るか」
「もう、アー君ってば、なんだが言い方が物騒だよ」
俺の呟きに対して、飛鳥が苦笑いを浮かべるが、冗談を抜きにしても、この吉祥学園に生徒として迎えられるということは、それなりの意味を有しているのは事実なのだ。
そもそも俺が、高良家に下宿を決めてまで、実家を離れて田舎からも遠い、この開発都市までやって来た理由。
大学ならばいざ知らず、高校生活を送る上で、余程の理由が無ければ親元を離れるというのは、日本の学生にとって頻繁にあるとは言い辛い。
俺が吉祥学園に入学することになった理由とは、それを国から指示されたからだ。
吉祥学園とは今から10年前に発見された、特異能力者の教育を目的とした施設でもある。
更に言うのであれば、この埋め立てられて作られた開発都市も、そういった特異な能力に目覚めた人達が、周りと軋轢を生まないために、生活するのが主目的として作られた節があるという話だ。
冴えない一般的な男子高校生。それは今でも変わらない、俺のプロフィールのつもりだ。
だけどそこには、『だった』という開発都市に来る以前の俺を示す、過去形のニュアンスが付く。
特異能力者というのは、確認されているその殆どが、後天的に目覚めるとされているのが、一般に発表されている周知の事実。
幾つかの例外はあるが、主に思春期と呼ばれる、未成年に発現することが多く、俺も自分が特異能力を発現させたのは中学二年の頃だ。
そのせいで当時のあだ名が厨二覚醒者だと、友人達にからかわれたのは、今となっては良い思い出である。なんだか一部のガチな方々からは羨望の眼差しを向けられたのも、まあ……良い思い出として胸にしまっておくとしよう。
そんな経緯で俺は、吉祥学園の入学を決めたわけだが、別に国から強制で入れさせられたという訳でもない。
特異能力者にだって、人権は有る訳で、きちんと能力を役場に登録して許可を取れば、今までと同じ生活を送ることは可能だ。
中には自分の意思で能力の発動を制御出来ず、尚且つ強力過ぎて隔離されるというケースも過去に何件かあったらしいが、俺の能力はそういった危険なタイプじゃないので、そういった心配は無い。
別に好き好んで来た訳ではないけれど、それでも俺はこの特異能力者が集まる学園に行くことを決めた。
多分、この学園に入学を決めた多くの学生は、俺と同じ理由だと思う。
先にも挙げたと思うが、時には特異能力の発動を制御出来ずに、暴走させてしまう者も居る。
だけど、それはほんの一部に過ぎない。
大抵の能力者は、自分の能力の発動のオンとオフは、すぐに出来るようになる。
でも……それだけなのだ。
異形の力と言えば、カッコいいかも知れないが、能力はその全てがほぼ後天的に発現する。
そんなとんでも異能力を、素人が自在に使いこなすとか、物語の主人公みたいな芸当を、一般人が出来る訳が無い!
つまり何が言いたいかというと……俺達、異能に目覚めた人達は、ちゃんと勉強をしないと、ろくすっぽ使えないというのが、現状を生きる異能力者の実態だったりします。
例えば、良く居るという自然能力系統で発火能力を持つ人では、何の訓練もしない状態だと、その威力は指先からほんのりと香ばしい匂いが漂うほどだ、と言えば分かってくれるだろうか。
つまり、ちゃんとした施設で真面目に訓練していない特異能力者は、殆ど一般人とは変わらないということだ。




