メロンパンはキャスパー
24話 メロンパンはキャスパー
学校では朝礼がおこなわれた。
被害にあった一般人の半数がウチの生徒だつた事もあり校長が、いかにレオナルドが危険なヤツだかをだらだら長話しでうったえた。
教室に戻ると。
「おい、ドウテイ、おまえらモン研連中、現場に居たんだってな」
「みんなじゃないけど」
こいつ古沢はボクが中学の時にドウテイのあだ名をつけた奴だ。まさか同じ高校、クラスになるとは、こいつはボクの一番嫌いな同級生だった。今も嫌いだけど。
「どうだったあいつ? ホント、よく喰われず帰れたな。ドウテイ」
「古沢、お前すぐに屋上から逃げ出したって中井が言ってたぞ」
「立川よ、おめえもあの場に居たらわかるぜ」
「ホントね、あたし古沢が腰抜かして階段の方に行くの見たわ」
「んなわけねーよ、ウソ言ってんじゃねーよマテラ。腰抜かしてたのはドウテイだろ」
「早く逃げたのにわかるの? ドーテーは冷静だったわ。でもアンタ逃げて正解ね」
そこへ委員長の伊藤メモルが。
「あんたら、やめなさいよ! あそこで亡くなった人、たくさんいたのよ。よく考えて話しなさいよ」
委員長は目を赤くして。
「わたしの弟も……」
学校は半日で終わった。
クラブ活動も中止に。
町中では野外スピーカーで。
〘怪物は突然現れるので注意して下さい……〙
などと。
あたしが家に帰ると母がテレビで町長が出ていると言ったのでしばらく二人で見ていた。
〘被害にあわれた方々の家族の皆さんにはおくやみを申しまず〙
といつになく深々と頭を下げた。
〘町としても出来るだけの事はしたいと思います。あの怪物が出たら出来るだけ遠くに逃げて下さい〙
ふーん。なんかいつもよりすまなそうな顔してるな町長。べつにあんたのせいじゃないよ町長。あんたはよくやってる方だよ。ただの美人じゃないわね。
「こんな時に町長やってあの人も大変ね。マテラの時は平和だといいね」
「なにそれ?」
「マテラは初代女市長になるんでしょ」
「そんなこと言ったことありません」
「おとーさん言ってたよマテラは『長』になる女だって」
「はあ? そんなこと、とーさんが。でももう部長やってますから」
あいつが出てきても役場には何も出来ないだろうし。
災害対策課とかが動いても。相手がモンスターじゃ。大海田には警察署もないのよね。
「マテラ、ヒマなら買い物付合ってよ」
「さっき外のスピーカーで外出はなるべくひかえるようにって」
「だから行くのよ」
マリンパはさすがに休店状態。
別のスーパーが稼ぎ時とばかりに大きなセールをやっている。
非常時なので買いだめがはじまっていた。
近所に2件ほどスーパーがあるが、どちらも駐車場がいっぱいで警備員が出ていた。
母はクルマをあのマリリンと出会うきっかけになった遠い方の店を選んで停めた。
「あっドーテー。あんたのとこも」
「霧島、公共の場で言うなよ」
ドーテーのカゴには玉子パックが5つと水のペットボトルが5本。
この町にこれからナニが起きようとしているんだろう。
「あっアレ」
ドーテーが見つけたのは。混雑している店内の客の中に大きく目立つもじゃもじゃの髪。
「マリリンが来てる」
相変わらずの季節ズレした服装に誰も気にしてない。
「マリリンさーん!」
「キリキリジン・マキバオー!」
「マキバオー? ぜんぜん違いますキリシマ・マテラです」
この人、時々わざと間違えているんじゃないかと思う。
「こんにちはマリリンさん」
「ドーテーも一緒」
「あの、違います堂島です」
「ドージマーか。マティーニ、なんで今日、人多い?」
「マテラです。怪物が出るからかな」
「怪物出るとスーパー儲かる?」
桶屋が儲かるみたいに。
「あっそうだ、マニラ、このまえのパン何処で買った?」
「マニラ……。あのイワシブレッドならパンダと」
「イワシブレードじゃなく、黄色い」
イワシブレード⁉ イワシを持ったスペース戦士を想像してしまった。
黄色いの?
「ああ、あれね。キャスパーのメロンパン」
「多分それ、ハカセ食べれなかったから怒ってる。そのキュータローのパンはどこにある?」
キュータロー? 確かにどちらもオバケだ。やっぱりわざとボケてるのかしら?
「駅前です改札出たらすぐのキャスパーです。キタローでもサダコでもなくキャスパー」
「駅前、キャスバル兄さん」
「マリリンさん、何か書くものある?」
手のひらを出したマリリン。
手のひらにはすでにヤキトリや明太子とか書いてあった。ハカセの好物?
ドーテーがボールペンを出して駅前キャスパーとマリリンの腕に書いた。
手のひらの真ん中にも大きな傷痕があった。
「あっキャスパーのメロンパン買うなら、朝一番に行かないとすぐになくなりますよ。開店は7時よ」
つづく




