テレビが来た
20話 テレビが来た
「サダヒコ、森野キミがマリンパに来てるとよ、見に行くべ」
マリンパとは大海田に去年オープンしたショッピングモールで正式名称は「マリン田園パーク」だ。
そこのイベントホールに地元出身のアイドルタレントの森野キミが来ると、いい歳したオヤジが浮き足立つて出かけてった。
まったく興味がないわけでもなかったボクはオヤジと一緒なのがやで、十分後くらいに家を出た。
「モモネちゃん」
「アッ大田和も」
「もって、他にも誰か?」
「マテラねえさんも見かけた」
ボクもお前らのそばに居るんだが。
「あっ、ちわぁっす。堂島先輩、スゴい人ですね。先輩も森野キミのファンなんですか?」
「いや、べつに……」
「君こそわざわざ隣街から」
「いや、ボクも彼女は。実は友人の情報で彼女がレギュラーの『世界ソレ、ホント?』の収録があるって聞いて」
「それでか」
イベントホールの方がわいている。彼女の登場のようだ。
周りの人が動きはじめた。おかげで二人とは、はぐれてしまった。
「キーミちゃーん!」
ファンクラブかなんかだろう。一斉に声があがった。そこへズレて。
「キミちゃん愛してるよ!」
どオヤジ声が、あれはウチのオヤジだ。
恥ずかしいのでやめて欲しい。
森野キミのあとに軽いステップでステージに上がって来たのは番組のMCの一人、お笑いタレントの丹波ロンだ。
タンバリンを叩きながらトークするタレントだ。
山本が嫌いだと言ってたヤツだ。ボクもあまり。
「ハーイ。大海田のみなさんこんにちは~」
タンタタタン
「丹波ロンでーす」
タタタンタンタン
「僕とキミちゃんとくれば、おなじみ大関東テレビの『世界ソレ、ホント?』です。今日は大海田に話題のUFO見に来ました」
タンタンタン
「タンバはウザいぞ!」
あれまた、オヤジた。大人気ない。
場内に笑いがおこった。
「ドーテーこっちこっち」
霧島ぁこんなトコでやめてくれ。
大田和とモモネちゃんも一緒じやないか。
「お客さーん静かにしてください。これから本番いきまーす!」
ステージにADらしい人が上がり大声で言った。
「スタジオのボス、聞こえますか? 僕は今、話題の地、千葉県の大海田町に来てます」
ホール内に懐かしい昔のアイドルソングのイントロが流れた。
「ユーフォー」
森野キミが曲に合わせて振りをして言った。
タンタンタタン
「ハイ、何が話題かと言えば」
タン
「ユーフォー」
と、二人で合わせて振りをした。
「あたしもけっこうUFO見てるんですけど、ここではまだでーす」
タンタタンタン
「ここではねキミちゃん、ヤギとか牛を襲う怪獣も出るんですよ」
タンタンタンタ
「まえからアレ、ウザいと思ってたのよね。生で見るとなお」
「言えてる」
ボクの横にいる若いカップルだ。やっぱり皆そう思ってるんだ。
「あっボス、あたしぃこの町の出身なんです」
「そうだ。俺がおしめとりかえてやったんだぞ!」
老人の声にドッと笑いが。森野キミが赤くなった。さすがにこの声はオヤジじやない。
「あっはい、あたしの親戚も来てるようで」
タンタタタタン
「地元の方々に聞いたのですが、最近ユーフォーが出てないとか。アレは怪物化したという話しも聞きましたが怪物は怖いので、ここはキミちゃん。いいですか、ユーフォー呼んでもらいまーす」
「いきなりむちゃぶりですねソレ」
タンタンタタ
「キミちゃんはパプアニューギニアでユーフォー呼んだ実績があります」
タンタンタンタ
「みんなーキミちゃんにユーフォー呼んで欲しいか!」
ウォホーイ!
と男たちの声が、ファンクラブのし込みか?
「キミちゃ~んガンバレ!」
間違いなくオヤジだ。
「みなさーん。マリンパさんのご好意で屋上が借りられました。屋上でユーフォーを呼びたいと思います。屋上へ行かれる方は階段をお使い下さい」
「本当にUFO来るかなぁ」
「ボクに聞かれても」
「部長、知らないんですか? 森野キミは芸能界1のオカルト・パワータレントで、さっき言ってたように海外で何度もよんでるんです」
「知ってるよ。だけど海外だけなのよね。まだ日本では一度も」
なんて、しゃべりながらダラダラと屋上への階段を上がって行く。けっこうスゴい数だ。この町の半数くらいの人が来てるんじゃないかと。
つづく




