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堂島という男

16話 堂島という男


 大海田町の田園地帯の真ん中に樹木におおわれ島のようになってる場所に大きな屋敷がある。日本の田園風景には異様に見える洋館だ。


「ココに来るのは久しぶりね」

「はい町長」

「あなたとはじめて会ったのもココね」

「はい」


 相変わらず口数の少ない女だと思うが、そこも気に入っているひとつだ。

 五森がドアホンを押すと、男の声がスピーカーから聞こえた。


「お待ちしておりました」


 すぐにドアが開いた。

 出迎えてくれたのはタキシード姿の彼の執事だ。どこから捜してきたのか、白髪白口髭の老人で絵に書いたような、気品ある執事だ。

 

「ご主人様が奥……」

「やあネネコ、よく来たね。うれしいよ」

 

 執事のすぐ後ろから顔を出した彼は白い歯を見せて微笑んだ。 


 黒いタートルネックのセーターに黒のパンツ。

家でも黒以外の服は着てないのかしら。確か下着も。


「けっこう来てるのよ。でもいつも留守じゃない」

「留守? 僕はいつも居るよ。家のもんに言わせてるだけだ。ネネコと言ってくれれば、速攻で出たのに」

「あまり町長がココに来てると知られたくないの。邪魔だったかしら」

「いやいや遠慮なく。ココの人間は口が堅いから。いつもの部屋でいいかな」


私の人生を変えたあの部屋。 

 相変わらずドアを開けると真っ暗だ。あとから入った彼がライターで燭台に火をつけた。

 部屋の真ん中の丸いテーブルに置いた3つの燭台。あまり明るくない。


 部屋の壁には意味のわからない文字と数字が、それに円やら三角の図形。素人の私でも魔術に関係したものとわかる。

 床の絨毯にも大きな円と文字が。


 彼、堂島次郎時貞は私の中学生時代のクラスメイトだった。時貞とは、後に自分で付けたらしい。

 彼も私と同じ燐市の高校を出た。


 その後は東大に合格し卒業後は世界中を周り歩いてビジネスを学び日本に、この町に帰った。


 彼は商店や工場を造り、たくさんの事業で成功した。

 けど、この部屋といい、彼が世界を旅して学んだのはビジネスだけじゃないのだろ。


 地元でのビジネスは成功したものの政治には興味のなかった彼は町の要人たちに町長選挙に出るようすすめられたが断り、彼は東京から私を。


 彼は私の子供の頃の夢を実現してくれると。


 選挙では圧勝。私は町長になった。

 そしてあたしをこの部屋に。


 五森レイは全裸で立っていた。私は彼女を堂島の女と思っていた。


「彼女をネネコの秘書に推す。名前は……ゴモリ……五森レイだ。彼女はきっと君の役に立つ」


 あれがつい昨日のように思えた。


「さて、話しと言うのは?」

「あの怪物よ。アレはドクターの仕業じゃなかったわ。あなたのイタズラかしら?」

「違うよ、アレは僕じゃない。僕がやったのは、はじめのUFOだけだ」


「ホントに。あなた以外にあんな物を」

「そんなことはないよドクターにだって出来るさ、あの人は僕の師匠みたいな人だからね。僕が思うに。あいつは自分で出て来たんじゃないかと」

 

 黙っていた五森が珍しく口をはさんだ。


「ありえなくもないです……」


「古来より全国各地に残る怪物の伝説。魔道で召喚されこの地に居ついた物もいただろう。中には自力で次元の壁を突破してこちらに来たヤツも存在すると昔ドクターが言ってた」


 ソファから立ち上がった彼は私の前で指を立て。


「あの一度召喚したクラゲが、こちらに来るのを憶えて、何度も出入り出来るようになった。とは考えられないだろうか?」

「無知な私が妙なことを考えたのがバカだったわ。まさか……被害が」

「いやネネコの町おこしは成功してるじゃないか。この町は今、世界中から注目されているじやないの」

「ええ、ブラジル、韓国、イギリスやフランスからインタビューの依頼がきてるわ。でもUFOは年に数回現れる程度で良かったのよ」


「まあコレは事故だ。ネネコのせいじやない。あ、そうだ。隣の部屋で。高級なベッド買ったんだ。久しぶりにしよっ!」 


「ごめんなさい。忙しいの。いい話しを聞けたわ。五森、役場に戻るわ

「はい」


 堂島次郎が昔から私を思ってたのは知っていた。高校も私より良いところへいけたのに、私を追って。同校に。

 彼は私の夢を憶えていてくれて選挙に。

 でも、アレ小学校の時の作文なのよね。 


「町で一番偉い人になりたい」


 今回の町おこしUFOプロジェクトは昔あった隕石落下で町が注目されたのがヒントだった。

 UFOで町おこし。現にそういう町もある。


 後部座席から見えるクルマを運転する五森な頭。彼女については謎だらけ。

 彼女、いくつなんだろう? ときどきあたしなんかよりすごく年上に思える。


「あの方は相変わらずでしたね」

「私とすることばかり……。まえから気になってたんだけど、あなたと彼とはどういう関係?」

「わたしもあの方に呼ばれたのです」

「呼ばれた……。あなた、はじめて会った時、裸だったわよね」

「アレは儀式をしてました」

「儀式……魔法の? あなたのこと私、名前と……身体しか知らないわ」

「それで充分です。わたしはあの方に言われたことをしているだけですから」

「そうなの。私とねるのも?」

「それは……私の……意思で」

「ソレ、信じていいのね」

「……」

「私、あなたみたいな、イイ子に会ったことなかったわ」

「ありがとうございます」


               つづく

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