悪雲を呼ぶ遠吠え
13話 悪雲を呼ぶ遠吠え
うそ、なんでまたあの二人と。
あたしは母に頼まれ海地区の親戚に来た。
同じ町内とはいえ自転車だと一時間近くかかる。お父さんはクルマで釣りに行っちゃうしで、母は町内に宅配を使うのはもったいないなんて。
あたしは親戚のようをすまし。ちょっとした買い物をし浜辺で一休みしようと海岸に来た。
浜辺の駐車場に真っ赤な一台のクルマを見つけた。
その横に立つ見たことある寒そうなルックスの大きな女性。
あっ黒いキャップの薄着の男がクルマから。
また邪魔してはと立ち去ろうとしたら。
「おいマテラ。珍しいなこんなトコで」
「わっ、クロガネかぁ」
そうか、この辺はクロガネの家近くだった。
「ん、アレはマリリン!」
「やっぱり、そうだよね。あたしもじゃないかと」
あっクロガネ。あたしは帰りそびれた。
「ちわースッ」
「チワワ〜ダレ?」
「あ、オレ日曜日診療所に行った高校生のひとりです。よろしくマリリンさん」
「日曜のコーコーセー? 覚えてない」
「悲しいなあ青汁三杯飲んだ。黒鉄誠です。覚えて帰ってくだい」
近くに居て知らんぷりもまずいだろと。クロガネのあとに来て。
「どーも。また会っちゃいましたね」
「ええっどーも。なにかの縁ですかね。あなたとは」
黒い男は照れてたのかキャップを手でおさえて顔をかくした。いまさらだが。
「キリマンジャロ・マテラ」
「キリシマですマリリンさん」
「グリュッウ! 気にしない」
気にして、憶えてちょうだいマリリン。名前。
「マリリン、そろそろ帰らないとドクターに」
「あっスゴいすねぇコレはポルシェですよね」
「ああ今時珍しくないだろ。あーあのね、あまりマリリンに近づかないでほしいんだ。彼女は悪いバイキンに弱くてね』
「バイキンすかっオレ……」
「すみません、彼、風呂嫌いなんで臭いますでしょ」
その道着姿は臭って当然だぞクロガネ。
「あ、いや、そういう意味じや。マリリンの体はいろいろあって。バイキンなどと言ってすまない。おおっ!」
黒いおっさんが急に大声を上げ指をあたしらの後ろに。
「出た。黒いヤギ!」
振り返ると、近くの小学校の校舎の屋上にあいつが居た。
「ヤバイよ小学校の人、食われる」
あいつはよりヤギの形態になっていた。
四足のケモノみたいだ。身体はまるでネコなのだ。もうクラゲじゃない。
黑ヤギの怪物は空に向って吠えた!
グウォンガガガーッ
コレは町ぜんたいに聞こえたんではなかろうか。
「おい、海の方からなんか怪しい雲が」
ホント、見るからに怪しいまっ黒な雲が。あたりが暗くなった。
どっと雨が降ってきた。
「痛え。これ雨だけじゃない」
「痛いっ雹よコレ」
「君たちクルマの中に」
雹の大きさが変わりクルマに当たる音が変わった。
「オジさん、スゴいな、デカい雹でもフロントガラスにヒビ一つ出来ない」
「心配ないこいつは普通のクルマとは違うから」
普通のクルマじゃないって、やっぱりこの人怪しい。MIBかしら?
「そうか普通のクルマじゃないのか。オジさんって何? MIB?」
うわぁあモロ聞いた。こういうトコってドーテーと似てるなクロガネ。
「よく言われるよ。仕事中は黒のスーツだからね」
「マテラ、この人、タダノヒト」
ただの人? どういうコト? マリリン。
「マリリンがヒトの名前覚えるのが苦手なの知ってます? 私の名が多田野等って言うんですよ」
マリリンらしいが、タダノ・ヒトシってソレ本名?
「私、自動車関係の仕事を。趣味で、こうゆう特殊なクルマ造らせて乗っているんです」
なんかウソぽいなぁ。
自動車関係で診療所に来てるのは?
マリリンと親戚とか。まあそれも怪しい。
「しかしひどい天気になったなぁ。これ偶然かな」
「これってあいつがやったのよ」
「そうじゃねー。アレが吠えたら雲が来たんだ」
と、話していたら雹の音がやんた。雨粒も。あたしは外に出てみた。
ウソみたいに晴れた。あいつの姿はどこにも見えなかった。皆が降りて来て空を見上げた。
グロガラッグゴゴーン
ナニ、今度はカミナリ!
つづく




