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7_お願い

 清めの作業は災いの中心がすでにいないため、あっさりと終わった。


 俺の作業を横目に見ながら同じグループのメンバーを励ましていた女子高生魔術師が、作業が終わったのを確認して話しかけてきた。


「先ほどは誠に失礼した。命の恩人に対する態度ではなかった。許してほしい。」

 彼女はそう言って、頭を下げる。


 俺は軽く手を振って気にしていないことを伝える。

 ていうかこんな美人と会話とか無理なんですが。

 俺のことをよく知る藤井にヘルプを頼もうと視線を移すが、座り込んで涙目で地面を見つめている。

 だめだ、援軍は期待できない。


「あのままでは私たちは“あれ”のおもちゃになっていただろう。助けてくれて本当にありがとう。」


 彼女はそう言ってそのスマートな体を深く折って再び俺に礼を述べた。


「気にしないでくれ。」


 だめだ、酷く緊張している。うまく口が回らない。

 やはり女性と話すのは苦手だ。その上彼女は高レベル美人と来ている。

 ああ、同じ美人でも小笠原なら、気楽に返答できるのに。


「いや、そう言われてもあなたは私たちの命の恩人なのだ。何とかお礼をさせてもらえないだろうか?なんでも言ってくれ。」


 彼女は真剣な顔をしてとんでもないことを言い出した。

 そんな彼女の姿を改めて見ると、美しい顔とスマートなモデル体型が目を引く。

 そして切れ込みの入ったジャージから見えている水色のブラを押し上げる膨らみも見える。それは大ではないが美であり、実に俺の好みだ。

 またブラと同じ色でリボンが付いているショーツも俺の好みにばっちりあっている。

 俺の頭の中に様々なエロい妄想が湧き上がる。


 質問:何で下着が見えているんですか?

 答え:赤い円盤の攻撃でジャージが派手に切れてしまったようだ。


 あかん!

(関西圏に住んだことはないが)俺の頭の中の関西人が緊急事態を告げてくる。


「目の毒だ、これを着ろ。」

 俺は顔を背けながら、自分が着ているジャージの上着を彼女に投げる。

 彼女は俺の言葉と行動の意味がよくわからなかったようだが、自分があられもない姿になっていることに気が付いたのだろう。

 大慌てで俺のジャージを着ているようだ。


「ありがとう。助かる・・・。」

 彼女の声が聞こえたのでそちらに視線を向けると、俺のジャージを着て顔を羞恥の色に染めた彼女が立っていた。


 なんでまだエロいんですか?

 彼女と俺は身長があまり違わないので、ジャージの丈が足りず太ももの付け根部分がカバーしきれていないため、水色や肌色がちらちらと見えるのだ。

 だめだ、どうしても視線が下を向いてしまう。

 女性というのは男性の視線が自分のどこを向いているかわかるらしいので、このままでは変態の烙印を押されてしまう事は間違いない。


 俺は自分の視線を無理やり彼女の顔に固定しながら思考を始める。

 どうも彼女は “昔”の俺のようにお堅い人物のようだ。

 これはこちらから何らかの「お願い」をしないと、彼女自身が納得できないだろうことがわかる。俺も“昔”はそうだったのだ。

 俺は頭の中のエロい妄想を必死で打ち消し、冷静さを取り戻しながら「お願い」する内容について考える。


 そうなると俺には情報が全く足りていないことがわかる。

 今までであれば、アンデットや魔法など気にする必要はなく、俺が使う力も超便利!程度でよかったのだが、ああいった存在が身近にいる可能性があるとなれば話は別だ。

 力があっても情報がなければ、死や不幸は身近なものになるだろう。


「では。」

「なんだ!なんでもいいぞ!」


 彼女は俺の鼻先に紅潮した顔を近づけ、食い気味に聞いてくる。

 近い!近い!近すぎる!

 整った美貌が目の前にある状況は、彼女いない歴500年の俺には刺激が強すぎる!

 冷静になったはずの胸の鼓動が激しくなり、自分の顔が赤く染まっていくのがわかる。

 彼女から少し距離をとりながら、俺はお願いする。


「ああいった存在や魔法についての情報が欲しい。」


 彼女は俺の「お願い」に非常に驚いたようで目を丸くしている。

 それはそうだろう。レイスを退けた魔法はアンデットの存在を知らなければ習得するはずもないものなのだから。


 実は俺の前世は異世界の神官だったんだよ!と事実を言っても信じてもらえるものなのだろうか?

 多分無理だよなぁ。

 でも事実であることは間違いないのだから、どうしようもないよなぁ。


 彼女は考え事を続けていたが我に返ったようで、俺に説明を始めた。

「もうわかっていると思うが、“あれら”や“私達”は決して表ざたにならない存在だ。氷上君もあんなものがいるなんて新聞やテレビなどで聞いたことはなかっただろう?」


 えっ、俺の名前知ってるんだ。存在感のない非モテ陰キャにとってはこんな美人に名前を憶えられているだけでも喜んでしまう。そんな自分の習性がとても悲しい。


「そしてこういった事件の隠蔽には主に公的機関の専門部署が対処することが多い。だから私のような半人前ではあまり情報は持っていないし、その少ない情報でさえ組織に属していない人間にどこまで話していいのかわからないのだ。」

 彼女は申し訳なさそうに続ける。


「しかし、私の両親はこういった事件にかかわることが多く、関係している組織に知り合いも多い。

 両親であればあなたに満足してもらえる情報を提供する事ができるかもしれない。

 どうだろう?私の家に来て両親に会ってもらえないだろうか?」


 うん、最後の言葉だけ抜き出して誤解をしそうな自分が嫌いだ。

 冗談はさておき、少しでも情報がもらえるのであれば是非というところだ。

 でもなぁ、もしかして研究所送りとかになったりしないよね?


 さっきまでの彼女の反応を見る限り俺の力は珍しい物のようだ。

 実直で誠実そうな彼女はともかく、彼女の両親はどのような反応するのかがわからない。

 もし知り合いの組織がマッドな研究所で、そこにぶち込まれるような事があれば俺の人生は今後最悪のコースを辿ることになる。

 情報が足りていないことは間違いないが、大事な人生がかかっている選択肢であることもまた間違いはないのだ。


 俺は悩んだ末、今回は断ることにした。

 特に焦る必要はないだろう。

 多分。おそらく。だったらいいな。


「モルモットになるのはごめんだ。」

「それはどういう意味だ?」

「珍しい動物は実験台になるのが相場だろう?公的な機関が絡んでいるのであればなおさらだな。俺の力はこの世界では珍しいのだろう?」

「私の両親が、あなたを捕らえてあいつらに売るというのか!?」


 彼女のあいつらという言葉から、公的機関の連中に良い感情を持っていないことがわかる。

 とりあえず彼女に納得してもらわないといけない。

 俺は断りの理由を探しながら説得を続ける。


「戦場で戦うということは、自らをさらけ出す行為でもある。戦場を共にした戦友である君が実直で信用が置ける人物であることは理解した。しかし俺と君の両親は戦友ではない。」

 やった、慣れていない女性相手にうまく話せたと思う。俺って思っているより話し上手かもしれないな。


 今度は彼女が俺を説得しようとする。

「私の両親は厳しい人だがそのような酷い事をする人達ではない。

 万が一、私の両親があなたを捕らえあいつらに引き渡そうとするのであれば、私が阻止する。

 あの人達に勝つことはできなくても逃げ出すことぐらいはできるはずだ。

 2人きりで住むところを転々としていれば、逃げ続ける事ぐらいはできるだろう」


 なんかまた俺を勘違いさせそうな文言が会話の中にあるような気がするのですが。

 それにいくら美人と一緒に住めるとは言え、逃げ回り続けるとか勘弁してほしいです。


 うーん、ここは頭を冷やすという意味でも一度時間を空けるか。

 藤井や女子2人組も落ち着いたようだし、寺崎と浜川は気を失ったままだ。

 ここから出ることを優先しよう。


「とりあえずはここから出よう。皆疲れている」

「あぁ、そうだな。まずは外に出て両親に報告しないと。事後対応が遅れるとまずいことになる」

「俺のことは報告から外して欲しい。」

「どうしてもだめだろうか?」


 彼女が、捨てられた子犬のような上目遣いで俺を見つめる。

 やめて!俺の罪悪感を煽らないで。


 うーん、どうせ情報が必要なのは間違いないんだ。

 本当にまずい状況になれば、その時に考えよう。

 俺はため息をついて、報告してもいい旨を伝えたが、彼女の両親に会うのは後日にしてもらった。今回魔力を使いすぎた。魔力の回復に努めたい。


 俺はここから出るように皆に言い、藤井に浜川を任せ自分は寺崎を肩に担いでから歩き始めた。


 洞窟から外への移動中、女子2人を見ると呪われているのがわかった。よく見ると浜川も寺崎も呪われている。

 おそらくさっきのレイスに呪われてしまったのだろう。

 この呪いは対象者を死に近づけようとする呪いで、放っておけば命に関わるような事故に巻き込まれるだろう。

 とりあえず4人に解呪(リムーブカース)をかけ、呪いを解呪しておく。

 魔法を行使するのに必要だったので女子2人の肩を触ったのだが凄く怯えた目で見られてしまった。

 何も言わずに女性に触ったのだから仕方がない。

「ごめん」と誤ってそそくさと歩き出した。

 そういえば右手の骨に入っているヒビも治療しないと。

 魔力足りるんだろうか?

 回復しなきゃいけないはずの魔力が減る一方の現状に俺は落ち込んだ。


 あっ、そういえば俺この子の名前、知らねぇや。後で調べとこう。


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