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56_事件の幕は騒がしく降りていく

今回の更新はここまでになります。

また不定期更新となりますが、できる限り早めの更新に努めますので、

何卒お待ち頂きますよう、よろしくお願いいたします。


もしよろしければ、ご感想と評価、ブックマークをお願いいたします。

そして何よりもこの小説を読んで楽しんで頂ければ幸いです。


 はい?恋人?直哉の言っていることが理解できない。


「え?恋人って誰と誰が?」


 俺の言葉に直哉は苛ついたように吐き捨てる。


「博人と真姫がだよ!」


 その言葉を聞いて、静菜さんとすみれさんが苦し気な、そして悲しそうな声をあげる。

 俺と小笠原は顔を見合わせて、首を傾げる。


「俺(あたし)とフラミア(ガイドラ)が恋人?」


「ああ、そうさ!君たちは前世で恋人同士だったんじゃないのか?!」


 その言葉を聞いた俺と小笠原はもう一度顔を見合わせてから、腹を抱えて笑い出した。

 あー、駄目だ。笑いが止まんねえ。


「何が可笑しい!!!」


 また激怒の表情になった直哉に怒鳴りつけられ、俺達はすぐに笑うことを止めて背筋がピンと張った正座に戻ったが、笑いの波はまだ俺の中で揺蕩っている。

 それにしてもそんな誤解をされているとは・・・。


「な、直哉。笑ったりしてすまなかった。だがそれは無いんだ。絶対に」


「絶対?どうしてそう言い切れるの?」


 静菜さんの肩を抱きながらすみれさんが泣き顔で問いかけてくる。


「それはとても簡単な理由で、俺はドワーフでこいつがエルフだからです」


「ごめんなさい。どういう事なのかわからないわ」


 ・・・さてどうやって説明しよう。こちらで言うと・・・。

 あれ?ガイリディアでは人族は複数の種族がいたので説明は簡単だが、こちらではホモサピエンスしか人族はいない訳で・・・。

 小笠原もそれに気が付いたようで、おろおろしながら俺を見ている。

 名取川姉妹と直哉は辛抱強くでも疑わし気な顔で、俺の考えがまとまるのを待ってくれている。


「小笠原、苦情は後で聞くから」


 俺は考えを纏めてから、小笠原に一声かけ説明を始めた。


「こちら側で例えて説明するは非常に難しいです。こちらでは人族が1種族、ホモサピエンスしかいませんから。だから例がちょっとずれてるかもしれませんが、犬と猫と考えてもらっていいと思います。言葉の通じる犬と猫という想定になりますが。犬と猫でも仲が良いのがいますよね?でもそれらが番いになって子をなしたという事はないでしょう?」


「犬と猫って・・・。他に良い例えは無いの?」


 複雑そうな顔でぼやく小笠原。


「仕方ねーだろ。それぐらいしか思い付かなかったし、うまく説明ができる自信もなかったんだから。それとも説明役をお前が代わってくれんのか?」


「ごめんなさい」


 綺麗に土下座を決める小笠原。

 そんな俺達を見て、すみれさんと直哉はまた疑いの目を向けてくる。


「なんというか、凄く息が合ってるのよ。まるで長年連れ添った夫婦みたいに」


「僕も真姫との付き合いは幼稚園からずいぶん長いですけど、ここまで息が合ってるとはとても言えないです」


 あー、うん、まあそうだよなあ。昔のこいつの事で知らない事なんてほぼないだろうし。


「小笠原、今はこの誤解を解くことが最優先だ。わかるな?だから全部言うぞ。いいな?」


「うん、あたしも直哉に誤解されたくないし、絶対嫌われたくない。それによりにもよって、あんたと恋人とかマジ勘弁だし」


「ああ、そこは俺も同感だ」


 俺達の会話を聞いていた3人は困惑している。


「仲が悪いわけじゃなさそうなんだけど、恋人って感じはないのかな?」


「僕もそう思えてきました。男女の仲というのは何か違う気がします」


「なんと言うか、どちらかと言うと兄妹のような感じが・・・」


 どちらかで言うなら"腐れ縁"が正しいんだけどな。


「まずガイリディアでは、他種族との婚姻やそれに伴う行為は重大なタブーでした。許されているのは人族とエルフ族ぐらいですね。これも滅多にありませんでしたし。子供が生まれることも非常にまれでした」


 俺は何とかわかってもらえるように説明を続ける。


「そしてこういった他種族との婚姻やその・・・行為がタブーとなったのは、神々や精霊王から神託が下った事が元になっています。普通こういった神託は大抵神によって内容が違う場合が多いのですが、ことこれに関してはほぼすべての神々と精霊王の全てがほぼ同じ内容で神託を下しています。その為、これはインセストタブーより重く見られる事になります」


 俺は乾いた喉を潤すために麦茶を一口飲んだ。


「実際、狂王と呼ばれた王が妹と子を成した際、他種族と子を成すことに比べれば罪など無いに等しいとうそぶいたと言われています。周囲や過去の歴史家の評価は「確かにそうだけど、それはそれとして妹はダメだろう」というものだったようですが」


 彼らは俺の言葉を吟味するかのように聞いてくれている。


「それに俺は神官でしたので、恋人や配偶者を持った事はありません。神官は神を配偶者とすることを求められますし、異性とそう言った行為に及ぶことは背信と取られます」


 うう、500年童貞だった事をさらすのは本当に恥ずかしいだけど仕方ない。

 それにしても今日は厄日だ。

 なぜ自分の黒歴史を披露しまくらなくちゃあならんのか?


「それに俺とフラミアは昔一緒に住んでいました。だから息が合ってるように見えるのかもしれません」


 その言葉を聞いて3人の気配と目付きが剣呑な物に変わり、それを見た小笠原が悲鳴のような声で俺に抗議する。


「それ言っちゃうの!?」


「仕方ねーだろ!変に隠し事なんてしてみろ、どんな誤解をされるかわからねえんだぞ!なんせ俺とお前が恋人に見えるってんだからな!」


「あっ、そうか・・・」


「大体、あの時もお前が俺の部屋に転がり込んで来たんじゃねーか。こっちは家が狭くなるし難儀したんだぞ!」


「うん、ごめん。でも住むとこがなかったんだもん。仕方ないじゃない!」


「実家に帰ればいいだろうが!宮殿なんだから部屋なんざいくらでもあるだろうが!」


「宮殿?」


 直哉が気になったと思われる言葉を呟く。


「ああ、こいつはエルフの王族だったからな。弟がエルフ族の王だったんだ」


「あー、何で言っちゃうのよ!」


「だから!変に隠し事すんなって!そんなことされたら直哉も気分悪いぞ」


 王族と聞いて直哉はかなり驚いているようだ。


「そういえば、お前って結局結婚したのか?ずいぶんと弟から勧められてたみたいだったけど」


「するわけないじゃん。紹介される奴は皆私の力と血統目当てなのはバレバレだったし。興覚めもいいとこ」


「良く断れたな。王族の結婚と言えば政略も絡むだろうから、難しかったんじゃないのか?」


「ううん、簡単だったよ?条件付けただけだし」


「条件?」


「うん、私は冒険者を辞める気はないから、配偶者には実力を求めます。そう、フランベルグ以上の騎士か、ガイドラ以上の戦士を希望しますって。そう言ったら弟も諦めたよ」


「マジかよ」


「まあ、古龍殺しの騎士と戦士以上の男なんている訳ないしね」


 悪戯っぽく小笠原が笑う。


「なんだ。てっきり俺が死んだ後に結婚して子供産んでると思ってた。お前子供好きだったしな」


 そう言うと小笠原は顔を赤らめる。


「子供は好きだけど、いい男がいなかったのよ。だから結局処女のまま死んじゃったし・・・。って直哉の前で何てこと言わせんのよ!」


 いきなり顔を赤くして怒り始めた小笠原のパンチをもろに顎に食らう俺。油断してた・・・。

 でもこんなの理不尽すぎるだろう。


 小笠原は俺にパンチが当たった事が驚きだったらしく、心配そうな顔で「大丈夫!?」と言っていて、それをみて直哉が呆れたような顔をしている。

 そして名取川姉妹が慌ててこちらにかけつけてくる光景を見ながら、俺は速やかに意識を失った。



言い訳になりますが、今回のエピソードは本当に難産でした。

一度書いては見直しをしては、面白いとは思えず全部消すことを延々と繰り返していて、このままではエタってしまうとすら思いました。

そこで見直しをせずに一気に書き上げたのが幸いしたのかなんか完成することが出来ました。

細かい所に手を入れていくことになるかと思いますがご容赦ください。

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