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29_鬼退治②

 俺の作戦は単純だ。あの鎧が邪魔なのだから、それを排除すればいい。そのための作戦を説明する。


「そんなんできるん?それに氷上君が一番危険やんか!」

「まあ、そこは役割分担と言うことで。それに危険だというなら副部長も同じですよ」

「構わないよ。ぼくの実力を信頼してくれているようだしね。それに応えるだけさ」

「直哉、魔術に問題はないよな?」

「ああ、両方とも使えるようになっているよ。維持も問題ない」

「部長、防御術式の維持、お願いします」

「問題ない。まかせて」

「静菜さん、メイン火力になるだろうから思い切りやっちゃって」

「了解した、必ず吹き飛ばしてやろう」

「可児先生、俺が真鬼に近づくまでの黒鬼の除去をお願いします」

「ああ、遠距離攻撃の指揮は私が取るから安心して進め」

「諏訪ノ森さん、他の術師たちの指揮をお願いします。できれば静菜さんの術に合わせてください。」

「・・・わかった。けど無理せんといてや」

「ええ、安全第一でいきますよ。直哉、頼むわ」


 俺はそう言いながらメイスと盾を構えると同時に体に反動の出ない範囲で自分の能力を開放する。こいつ以外にも真鬼がいる可能性があるらしいので前の様な無茶はしない。直哉の手が複雑に動き、魔術を完成させる。さてここからだ。


暗黒(ダークネス)


 真鬼達を暗闇が包み込む。この魔法は指定した範囲に暗闇をもたらす魔術だ。それ以外の効果がないので夜目が効く鬼どもは特に動揺することもない。だがそれで構わない。俺が求めているのは、その夜に目を慣らしてもらう事だから。


 15分ほど経ったので、暗黒(ダークネス)を解除してもらう。さてこれからが本番だ。

 俺は武器を構え前に早足で歩を進める。目標は真鬼だ。俺と真鬼の間にいる黒鬼は、弓矢で排除してもらう。後ろから飛んでくる矢は非常に恐ろしいが信用するしかない。

 ある程度距離を近づけたので、真鬼に左手の円形のシールドを投げつける。これは俺が今回用意した新武器ブーメランシールドだ。エンチャントを利用して左手の盾を打ち出し、攻撃の後自動的に戻るよう設計した武器だ。また盾自体には変異のエンチャントも行っているので登録している複数の盾の形式に変化することができる。俺が“昔”好んで盾に付けていたエンチャントなので今回も付与してみた。



 俺が投げつけた盾は猛スピードで真鬼の胴体にあたった。ダメージはそれほどないようだが俺の事を認識したようだ。金棒を振り上げて突進してくる。


 俺は戻ってきた盾を構え直し、盾を円形から受け流しのしやすい長方形に形を変え攻撃の受け流しに集中する。そして奴の右薙ぎのフルスイングを盾で受け流す。オーガクラスの巨体から繰り出される攻撃だけあって、受け流しに成功しても盾を持つ左手から骨の軋む音が聞こえる。


 真鬼は黒鬼の指揮をしている為か、自らの周辺をすべてに注意を払っているようだ。どこかに意識が集中していることはない。だからこそ俺に意識を集中してもらう必要がある。


 俺は奴の正面で攻撃を受け流し続ける。隙があれば攻撃に移りたかったが、受け流すのに精一杯だ。だが奴は俺が攻撃を受け流していることにいら立っているのか、こちらに注意が集中し始めている。


 もうそろそろ頃合いかと考えていると、いきなり洞窟の壁から軽薄そうな男が現れて、叫び声を上げながら出口に向かって走り出す。「インビジリティ」か?妖精に頼んで自らの姿を透明化する精霊魔法だ。とっさの事に俺の注意がそちらに向いた瞬間、真鬼が振りまわす金棒が俺に向かってくるのが見える。これは防げないな、俺はとっさにメイスを持つ右手をかばうようにして攻撃を食らう。

 浮遊感がして気が付けば地面に這い蹲っていた。直撃しても意識を失わなかったのは、部長のシールドスペルのおかげだろう。奴が止めを刺しに近づいて来るのがわかる。奴に対し足止めのための術が降り注いでいるが、気にする様子もない。俺は激痛が走る自分の体に回復魔法をかける。とりあえず体が動くレベルまで回復してくれればいい。俺は使用する魔力を一気に増やし、回復魔法の効力を少しでも上げる。

 奴が俺の傍で金棒を振り上げる。よし、奴は俺しか見ていない!


聖光(ホーリーライト)!」


 俺が放った魔法は、本来は聖なる光で照らすことによりアンデットを地に返すための魔法なのだが、効果時間を極端に圧縮すれば目つぶしにもなる。それは暗黒(ダークネス)で暗闇に目が慣れていた真鬼には、強烈な光に感じただろう。突然の眩しい光で目が眩んだため、体のバランスを崩しながら振り下ろした金棒の軌道は、俺から大きくそれている。

 俺は軋む体を無理やり動かして振り下ろされた真鬼の手首を狙い、挟み込むような3連撃「虎咬」を打ち込む。メイスは金属鎧と非常に相性がいい。刃は防げても衝撃は消せないからだ。そして俺が修めて居る戦根術はその衝撃を操る事が極意。


 奴の手首から鈍い音がし、うめき声をあげて金棒から手を離したのを確認して、奴の左側面に移動しながら左足の膝関節を狙い、「虎咬」を打ち込む。奴の膝から砕けるような音が響き、奴は苦しむように体をよじりながら地面に倒れこむ。


「副部長!」


 俺の声より早く、副部長は光の剣を携えて真鬼に走り寄り、鎧の胴体部分を繋げている荒縄を切り裂く。本来であれば魔法の武具はそう簡単に切ることは出来ないが、今回は副部長の術剣に直哉の魔法消去(ディスペルマジック)を乗せており、かつ荒縄の箇所を的確に切り裂いている為、簡単に切れている。

 動く右腕を必死に振り回している真鬼の動きを華麗に躱しながら、副部長が接続部の荒縄を何本か切り捨てると胴体部分をカバーしている鈑金が地面に落ちた。


「副部長は俺の後ろに!」


 俺は盾を大型の物に変え爆発に備えるよう構える。


大祓(おおはらえ)!」


 舞姫の美しい声が聞こえ、それに追随するように力ある言葉が次々と聞こえてくる。

 俺は爆発に吹き飛ばされないように、全身に力を入れ衝撃に耐えた。


 目の前の爆発が止まったので真鬼の方に目をやると、左手を残し胴体のほとんどを吹き飛ばされた奴の体が消えていくのが見えた。




 今回の作戦で鎧を破壊するためには副部長の術が鍵だった。

 副部長の術は、自らの短剣(独鈷杵というらしい)からいろいろな属性の刃を出し、それで敵を切り裂くということができるらしい。ならばその属性に直哉の魔法消去(ディスペルマジック)を乗せてもらい、それにより鎧の繋ぎ目の紐を切断してもらうのだ。

 奴の動きを止めて板金を繋いでいる紐を切断し鎧を破壊する。そして開いた所に攻撃魔術を打ちこみ撃破する。マジックアーマーさえなければこちらは術者に困らないのだから、火力を打ち込み撃破ができる。これが今回の作戦の概要だ。途中で変なおっさんが乱入してきたので、少し計画からずれたが、うまくいったので問題なしだ。

 俺は自分に回復魔法をかけながら、残った黒鬼達が他の術師に倒されていく様を見ていた。



 Side:名取川 静菜


 氷上君の体が壁に叩きつけられるのが見え、私は思わず悲鳴を上げそうになるが唇をかみしめ我慢する。彼は私達に大丈夫だと言ったのだ。私はそれを信じたのだから見守るしかない。

 彼は真鬼と正面から打ち合うという、目を疑うような戦闘を行っていた。しかもそのやり方が真鬼の攻撃を盾で受け流すというものだ。真鬼の怪力というのは人間の想像を越えるもので、もし受け流しに少しでも失敗すれば盾ごと腕を潰されてしまう。その作業を続け奴の注意を自分に引き付けることは、一流と言われる退魔師でもできる者はほぼいないだろう。


 しかしこの作戦もあともう少しという所で邪魔が入った。あの男は一体何なのだ?戦わないならおとなしく隠れていればいいものを、最悪のタイミングで邪魔をするとは!

 私は怒りを押し隠しながら彼を見つめる。彼は蹲ったまま動かない。そして真鬼が彼に向かって金棒を振り上げた瞬間、力ある言葉と同時に洞窟内に光が満ち溢れ奴の目を焼く。彼は諦めたりしなかった。それどころかこれを奇貨として奴が止めを刺すため、自分に集中したことを利用したのだ。


 彼の声に応えて、副部長が奴の鎧を解体していく。私は奴の胴体部分に穴が開き、同時に副部長が後退したことを確認して大祓(おおはらえ)を奴に打ち込む。それに少し遅れてほかの術師も続いたようで術の光跡が奴に集中し爆発が起きた。爆発が治まると、彼が副部長の前で彼を庇うようにして盾を構えているのが見える。


 彼は自分の事をただの高校生だという。だがやはりその在り方は英雄的だと思える。技術ではない。どれほどの危険を前にしても盾一枚で立ち塞がるという、その精神性は非常に勇敢で気高いものだ。その彼を見ていると私は心が高鳴るものを感じる。結局の所、私は彼の全てが好きなのだろう。私は部屋に入り怪我人を癒しながらそんな事を考えていた。







 Side:氷上 博人


 俺が奥の部屋に入り怪我人を探すが、先に部屋に入っていた静菜さん達が癒していたようで俺の仕事はなかった。俺は手持ち無沙汰に周りを眺めていると男性と話をしていた諏訪ノ森さんが近づいて来る。


「考古部のみんな!ほんまにありがとうな!ウチらだけじゃどうにもならんかったわ」

「いいえ、これも任務ですので。しかしこれからの作業は加賀谷と氷上を外してもらえませんか?」

「うん、OKや。車の中で休んでたらええよ。でも大丈夫なん?なんなら病院行く?」

「加賀谷は消耗が酷いですが、休んでいれば問題ないでしょう。氷上はあれに殴られましたので休ませます。癒しは終わっているようですが、念のためです」

「そっか。じゃあ加賀谷君も氷上君もゆっくり休んでや。他の皆はごめんやけど、もうちょっと協力してな?あとは小さい洞窟が一つだけやから」


 俺達は洞窟をでるとまだ辺りは明るい。15時ぐらいだろうか?直哉と俺は車の中で座席に座り、お茶を飲む。少しぬるくなったペットボトルのお茶がのどを潤してくれる。


「直哉、部長が消耗しているって言ってたけど大丈夫なのか?」

「ああ、魔法消去(ディスペルマジック)が思っていたよりきつくてね。まだ僕の手には余るってことかな」

「そっか・・・」

「ヒロは大丈夫なの?金棒をまともに食らった時は気が気でなかったんだけど」

「ああ、もう大丈夫。魔力は食ったけどほとんど回復してるから」


 車の中で話をしていた俺達だったが、疲れていたんだと思う。いつの間にか寝てしまっていた。


 そして俺は居丈高に喚く男の声で目を覚ました。



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