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20_遅ればせながらの自己紹介

17日更新分です

「それは千鳥姫だったかもしれないね」


 副部長はそう言ってノートPCの画面に映った昔話を見せてくれる。

 皆に愛されたお姫様が鬼に食べられたけど、鬼は退治されましたという話だった。

 あの妄執から言って生前から血に飢えた女だったと思うんだが、昔話と全然違うと思う。


「ああ、この話の中で都から来たお坊さんってあるだろう?こういう場合は大体国営の霊的組織が派遣されている場合が多いんだ。「近くに住む鬼」というのは他所から流れて来たものではなく、そこにあるものが「何か」に変わってしまったという暗喩だね。このお姫様は生前から悪霊化するぐらいのことをやっていたんだろうね。結局中央から派遣された部隊に討伐されたってところかな」

「昔話と全然違いますね」

「ああ、お姫様というぐらいだから両親は高位貴族だったんだろうね。悪評を避ける為のカバーストーリーだよ。これもよくある話さ」


 ふう、昔話も奥が深いもんだ。俺は筋肉痛気味の体を椅子に座らせながら溜息をついた。俺はこちら側に来ることになった原因の洞窟のレイスは、一体何者だったのかが知りたくなったので副部長に相談してみると、市周辺の民話や逸話をデータベース化するのが担当業務なだけあって、すぐに見つけてくれた。


「ふーん、鎌倉末期の伝説かあ。結構古い悪霊だったんだね」

「そうだな。それだけ年経ただけあって珍しい防御術を使う大悪霊だった。一人だとどうなっていたことか」


 静菜さんが直哉にレイスについて語っている。

 初仕事から三日、ようやく少しは筋肉痛が治まってきた。


 仕事の翌日は学校を休むことを考えたが、両親に連絡が行き余計な心配を掛けることになることを避ける為無理やり登校した。

 いつもの倍の時間をかけて登校し、なるべく机から動かないようにその日を過ごした。


 そんな俺を見かねたのだろう、静菜さんがいろいろと世話を焼いてくれたのは本当に助かった。あれがなければ俺は昼飯も食えなかっただろう。

 ただそうやって静菜さんが俺の世話を焼いてくれているのを見て、小笠原が誤解したのは誤算だった。

 俺と静菜さんが付き合っていると勘違いしやがったのだ。

 特に俺が静菜さんを下の名前で呼んでいることは、奴の誤解に拍車をかける形になってしまった。


 俺は誤解を解こうとしたのだが、静菜さんは小笠原の誤解に乗っかるようにますます俺の世話を焼き始めるし、ありがたかったのだが非常に困りもした。

 一度「名取川さん」と呼び掛けてしまい、泣かれそうになったのも心臓に悪かった。


「今回の件では洞窟の封印が解かれていて、かつ内部に誘導するかのような小細工があった事が気になるね」

「そうですね。これは人為的な事件だと考えるべきでしょう」


 そうなのだ、結局黒幕は見つからなかったのだ。第三課も色々調べたようだが、残っているものが学園で使っている旗と松明程度しかなかった為、調査には限界があったようだ。


 仕方がない。また何かおきた際に対応してもらうしかない。俺たちは5人だけの高校の部活でしかないのだから。そういう事は大人に任せるべきだな。俺は考古部について説明された日のことを思い出していた。





 初仕事の次の日、静菜さんに肩を貸してもらいながら部活に顔を出すと、他の部員はすでに来ていた。俺がボロボロの状態で椅子に座っていると、豊明部長は部屋の中央に立って話し始める。


「さてみんな、考古部に氷上君が入部し5人体制になる。氷上君以外の部員にとっては、既知だろうが、ここで改めて考古部の活動について説明したい」


 初仕事みたいなのばかりだと体がもたない。部活の内容によっては、抜けさせてくれと秀雄さんに泣きつかないといけないかも知れないなあ。


「この考古部は、鹿海市全体の霊的事件の第一担当部署に設定されている。必要な情報には優先的にアクセスできるし、予算も少なくない金額が出ている。そう言った意味でこの部活動は決して学生の遊びではない」


 だから学生任せをやめればいいのでは?

 慣例だか何だか知らないが、ほんと、非効率にも程がある。


「だが我々は学生で、自由に行動できる立場ではない。そのため今の考古部は霊的物品や術式の解析、悪霊、妖怪の研究がメインの活動になっている」


 なるほど、情報で優遇され予算まで出ているのに何もできませんでは通らないだろう。

 研究や解析ならやりようによっては学生でもできる。むしろ学生はそちらに集中するのが正しいよな。


「それでも私たちがこの市の第一担当部署であることに間違いはない。頻繁ではないが先日のような救援要請もあるので、必要な技術を研鑽することを怠らないよう、皆にはお願いしたい」


 ああいった事はあまりないのか。そりゃありがたいな。

 秀雄さんに泣きつく必要はなさそうだが、いつ最前線にでるかわからないのであれば修行や準備が必要だな。出ている予算とやらで俺の装備買ってくれないかなあ。

 買ってくれないだろうなあ。預金崩すか・・・。


「考古部の説明はこれで終わり。では自分の情報を周知させる意味も込めて、改めて自己紹介を行いたいと思う。すでに現場を共にしている事から、使用術式と作業担当まで含めてお願いしたい。それでは私から」


 部長は一つ咳払いをすると、自己紹介を始めた。


「私は2年C組の豊明 聡美(とよあけ さとみ)。部長を任されている。使用術式は日式カトリックエクソシズム。これは主に味方の守護や、人や物品に憑りついた悪霊や悪魔を払う術式だ。作業担当は主に術や魔道、魔術などの研究・解析。よろしく頼む。次、清彦」


 部長が隣の玉砕王子を指名する。


「僕は多治見 清彦(たじみ きよひこ)。2年A組。副部長だよ。趣味は聡美の傍にいる事。使用術式は、密教式退魔法。御仏に慈悲を乞うことでいろいろな現象を顕す術と言えばいいかな。作業担当は、この市の民話や神話を集めてデータベース化するのがお仕事。よろしくね。あと念のために言っておくけど、聡美は僕の恋人になる人だから手を出してはいけないよ」


「ストーカーの戯言に惑わされないように。次、名取川」


 副部長のそれは趣味じゃねーだろ。部長の言う通りストーカーじゃねーか。


「名取川 静菜だ。1年B組。使用術式は、名取川流祓式だ。八百万の神々に祝詞を捧げることにより、敵や汚れを祓う術式だ。部に入ったばかりで担当している作業はないが、対外的な交渉、調整を行うことが多い。よろしくお願いする」


 名取川さんが対外交渉してるのか。1年生があんな大変な仕事やらされてるなんて。手伝えることがあったら手伝わないと。


「次は僕かな。加賀谷 直哉です。ヒロや名取川さんと同じく1年B組。使用術式は加賀谷流魔術。これは家に代々伝わっている魔術で、自身の魔力をいろいろなものに変換して発動する魔術です。便利な魔術が多い感じですね。また担当しているのは神具や法具等の解析です。よろしくお願いしますね」


 直哉が自己紹介する。アイテム解析とは面白そうな事しているな。興味あるけど、アイテム関連では名取川家で失敗しているからなあ。すみれさんと調整しながら慎重に行こう。


 さて自己紹介の最後は俺か。

 皆の視線が自分に集中しているのがわかる。


「氷上 博人です。1年B組です。使用術式?は神官魔法です。これは主に死人や悪魔を封じ、傷をいやす魔法です。皆さんのお役に立てるよう頑張りたいと思います。よろしくお願いします」

「それでは皆の自己紹介も終わったので、後は自由時間とする」


 部長のその声で、皆は自身の仕事に戻るようだ。俺はどうしようか。体が動かないからできる仕事も限られるんだが。まごまごしていると部長から声が掛かった。


「氷上君は、皆の仕事を一通り見学してくれ。その内に仕事を割り振ることになる。それまでは見学を続けてくれればいい。でも今日はもう帰ってもいいぞ。体調がよくないのだろう?」


 マジか。でも今は動きたくない。もうちょっと座らせていてほしい。


「いえ、動くのがきついので、ここから皆さんのお仕事を見させていただきます」

「そう、無理はしないように」

「ありがとうございます」


 俺はそう言って皆の作業を見ながら、ネット通販でメイスや頑丈な盾が売っていないかをスマホで調べ始めた。



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