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16_刀 vs 木の棒

本日2回目の更新です。

 直哉の誤解を解いていると、突入の準備が整ったようだ。

 甲斐先生が、手に持った猟銃をいじりながら作戦を説明し始める。え、腰に吊るしているのって自動拳銃ですよね?マジっすか。どこから密輸したんだよ。


「氷上、私が持っているのはエアガンだ。本物じゃない。だから怯えるな。それでは作戦を説明する。私達はAチーム、Bチームの2チームに分かれて行動する。Aチームは廃レストラン正面に攻撃を仕掛け敵性体を引き付ける。Bチームはレストラン裏手に回り包囲の薄くなったところから、内部に侵入。第三課の退却を支援してくれ。簡単な陽動作戦だが効果は高いはずだ」

「先生、チームはどのように分けますか?」

「Aチームは私、豊明、多治見の3人だ。Bチームは1年生組だな。Aチームは正面から戦力を引き受ける必要があるので、慣れている2年生にした」

「わかりました。Bチームは加賀谷が指揮を執るように。では今から10分後にAチームは攻撃を仕掛ける。Bチームは様子を伺いながら救出作業を行って欲しい。では作戦開始」


 その声と同時に、俺たちは動き出す。

 俺は直哉と名取川さんの姿を見ながら大回りするように、廃レストランの裏手に移動する。


 直哉はいつもの制服に、手には黒っぽい木製の杖を持っている。魔法の発動体だろう。賢者魔術師にとっては魔術発動で必要な物だ。天空の眼(エリアサーチ)はいまだ継続しているようで周辺を警戒しながら俺たちの先頭を進んでいる。


 名取川さんは、巫女服姿で白木の短刀を腰に差している。巫女服がめちゃくちゃ似合ってる。

 俺が見ていることに気が付いたのか、少し自身の体を抱きしめる様にして顔を赤らめている。美人が恥ずかしがると、ここまで可愛くなるのか。だがこれはまずい。このまま見つめていると巫女服萌の変態と思われてしまう。俺は自分の視線を背けたが、その行為は相当の努力が必要だった。



 レストランの裏手に、敵に会う事も迷うこともなく着くことができた。直哉のおかげだな。

 移動中、レストランの表の方で爆発音が聞こえてきたので、すでに戦闘が始まっているだろう。


「この周辺には敵性体はいないね。先生たちの誘導がうまくいっているようだよ」

「じゃあ、念のため先に俺のできることを言っておくぞ。俺は盾で敵の攻撃を防いで、ぶん殴る。それ以外は癒すことぐらいだな」

「わかった。じゃあヒロは中に突入したら、怪我をしている人を癒して欲しい。それとできれば、戦っている第三課の人のフォローもお願いしたいな」

「了解。出来ることは少ないが、頑張るよ」

「じゃあ、僕は名取川さんのフォローに回るね。指示した場所に術式を打ち込んで欲しい」

「了解だ。攻撃対象の選別をお願いする。それでは早速中の第三課と連絡を取るぞ。通信符を使わせてもらう。氷上君、これは同じ札を持っている人間と通信できる護符なのだ。第三課も同じものを持っている」


 名取川さんが丁寧に教えてくれる。OJTは大変ありがたい。しかし通信関連の魔術が多いな。何か理由があるのだろうか?


 彼女が札を握りぼそぼそと何かつぶやいていると、少ししてレストランの裏口が開いて中から女性が顔を出した。


「助けに来てくれたのね!表側から敵が入ってきているの。皆で対応しているけど数が多すぎて・・・。手伝って欲しいの!」


 俺達は顔を見合わせ一つ頷いてからレストランの中に入る。

 中は薄暗いようだが、俺の【妖精の眼】は光が全くなくても視野に問題はない。

 建物の中に入りながら内部の状況を確認していると奥の方で、戦っている人たちが見える。敵は人型をしていてボロボロの着物を纏っている者もいるようだ。だがその肌の表面は真っ黒な泥のように波打ち、のっぺらぼうのようで決して人間でないことがわかる。

 形勢はあまり良くないな。そう思っていると前線で戦っている人を、横から不意打ちしようとしているのっぺらぼうが見えた。俺は”昔”の力のほんの一部を開放し、自身の身体能力を体に影響が出ない範囲で増幅させる。そして体の前に盾を構えながら、不意打ちしようとしているのっぺらぼうに向かって突進する。


「ぐぎゃぎぎゃ!」


 俺に気が付いたのっぺらぼうは不意打ちをやめ突進してくる俺に、叫び声を上げながら持っていた刀を振り下ろす。

 それを左手に持つ盾で自らの体の左側に受け流し、隙だらけの胴体に右手の木の棒を横薙ぎに打ち込むと、のっぺらぼうは苦しそうな声を上げ、体をくの字に折った。

 相手の頭が下がった所に上下に連続した打撃を打ち込む。

 この攻撃対象個所を挟み込むように行う連撃は、俺が学んだ戦棍術の基礎であり、奥義でもある。

 連撃を食らって床に倒れたのっぺらぼうはそのまま、崩れるように体が消えていく。

 死んだということなのだろう。

 敵は大した腕でもないし、頑健という訳でもなさそうだ。

 このまま1匹づつ潰してもいいが、俺の仕事は第三課の癒しと支援だ。


「怪我人はいるのか?いるなら教えてくれ!」


 俺の叫び声が聞こえたのか最前線で戦っている女性が叫び返してくる。


「こっちに怪我人がおる。安全な場所まで動かして欲しいんや!」


 俺はその女性の近くに倒れている男性のもとに駆け寄り、邪魔にならない場所まで動かしていると名取川さんの声が聞こえ、爆発音が起きる。派手に始めたようだ。

 俺は男性の容体を確認すると、腹に刺し傷がある。すぐに魔法を行使し、傷を癒し始める。


癒し(ヒーリング)


 傷口を中心に白い光が広がり、傷を塞いでいく。

 傷が完全に塞がったことを確認して、男の顔を叩くとうめき声を上げながら目を開いた。


「俺は隆央堂学園考古部の者だ。救援依頼によりここに来た。痛いところはないか?」

「そうか、助けに来てくれたのか。少しふらつくが痛むところはない。ありがとう、俺は大丈夫だから戦闘に戻ってくれ」


 ここにいるはずの第三課は全員見つかったな。裏口にいた1人と内部で戦っている2人、それでこの人だから他にはいないはずだ。

 他に怪我人がいないことを確かめた俺は、改めてレストラン内部を見渡すと室内で爆発が連発している。すげー派手にやってんな。同士討ちとか出てないだろうな。

 だが全体的には押し始めていると見ていいかもしれない。


 俺は最前線になっている窓際にいるのっぺらぼうに向かって突進する。

 のっぺらぼうは手に持っていた槍を俺に突き掛かるが、それを盾で床に刺さるよう受け流す。床に刺さった槍を上から踏みつけながら裏拳のように盾で殴りつける。よろめいた相手の頭を左右で挟み込むように連撃を打ち込むとその場で崩れ落ちていく。


 その勢いのまま周りにいるのっぺらぼうを倒していると、女性の悲鳴が聞こえた。

 さっき声を掛けてきた女性が床に倒れこみ、その前に刀を振り上げた侍装束ののっぺらぼうがいる。

 俺は盾を顔の前に構えて、侍に突進し体当たりを行う。体当たりを食らった侍がたたらを踏んでいる間に、俺は侍の前に盾を構えて立ち塞がる。


「お前の相手は俺だよ。顔無し野郎」


 俺の声がわかったのか、俺に対し構えるのっぺらぼう侍。体感がぶれない体捌きと足の運びから相当の腕だとわかる。

 俺は盾を構えながらじりじりと侍との距離を詰める。

 少しづつ距離が近づき、俺が攻撃に入ろうとしたとき侍が抜き打ち気味に刀を横薙ぎにした。

 俺の盾は下半分が切り落とされ、左手から血が流れ落ちる。追撃を避ける為、俺はバックステップするように後退する。


 こいつ思ったより腕がいい。このままだとバッサリやられてしまうだろう。

 やりたくはないが、少し本気を出す必要があるようだ。



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