15_いきなりの初仕事
早く筆が進みましたので、今日は2話更新します。
告白玉砕現場と言う修羅場を見せつけられた俺は、部室の入口で立ち尽くしていた。
「なあ、直哉。これって・・・」
「ああ、気にしないでね。あの二人にとってはいつもの事だから」
「いつもの事って・・・。いつも告白している様に聞こえるぞ」
「聞こえるというか、それが正しい認識だよ」
いつも告白とかどういうことだよ。俺の理解が追い付かないよ。
俺の困惑を無視して、直哉が部屋の中にいた女の子に報告している。
「部長、氷上君を連れてきました。彼の入部届は今朝、可児先生に名取川さんが提出済みです」
「ありがとう加賀谷君。君が氷上君か。私は考古部部長の豊明 聡美(とよあけ さとみ)。あなたには期待している」
「はじめまして、1年B組の氷上 博人です。よろしくお願いします」
考古部の部長か。どんな人なのか気になっていたが、思ったより普通の人だな。
度の強そうな眼鏡をかけ、肩下まである髪を三つ編みにしている。
あまり感情を感じさせない話し方と、地味な外見で全体的に暗い感じを漂わせている。
「君が噂の新人かな。ぼくは副部長の多治見 清彦(たじみ きよひこ)だ。よろしく」
さっき玉砕していた男子生徒が爽やかに挨拶する。副部長は非常に整った顔立ちの男子だ。藤井達もイケメンだったが、この人と比較すると2枚は落ちるだろう。王子様系の美形とでもいえばいいのだろうか。朗らかに笑うその顔は同性の俺から見ても美形そのものだ。イケメンもここまで来たら嫉妬もできやしない。
「そうだ、聡美。君も彼に期待している。ぼくも彼に期待している。こういった気の合う二人は恋人になるべきだと思うんだ。付き合ってくれ!」
「いやよ」
え、マジでこの人、部長に告りまくってるのか?とんでもねえな、この人。
それを瞬殺するこの部長もすごいけど。
名取川さんは困ったような、笑っているような微妙な顔をしている。
「あ、あはは。部長たちはいつもこうなのだ」
「なんというか、すごいな」
「ああ、だがあの副部長のあきらめない姿勢は学ぶべきところがある」
いや、あれに学ぶのはちょっと遠慮したい。
彼女とそんな話をしていると、部室に教師が飛び込んできた。
「豊明。第3課から緊急の救援依頼があった。すぐに出発する」
「わかりました。皆すぐに準備して。集合場所は学内駐車場A」
え、いきなり仕事なのか。でも準備なんて何も出来てないぞ。
しゃーない、魔法で対応するか。
「聡美、氷上君はどうする?今日来たばかりでいきなり現場と言うのは厳しいんじゃないかな」
「そう。それじゃあ氷上君、今日は待機していてほしい」
マジか、ラッキー!
副部長、ありがとうございます!あなたみたいな良い人の恋路が実るように祈ってます!
「いや、氷上にも現場に出てほしい。ああ、私は考古部顧問の可児 根弥子(かに ねやこ)だ。よろしく。それで今回の敵性体は数がずいぶんと多いとのことだ。腕のいい魔術師であれば、ぜひ手を借りたい」
いや、魔術師じゃなくて神官なんだが。
サボれたらよかったんだが、そんなうまい話はないか。
昔みたいに壁役やって怪我人を癒してりゃ問題ないだろう。
「わかりました。迷惑にならないよう頑張ります。ただ俺は何も用意していません。盾とこん棒のようなものはありませんか?」
「盾とこん棒?ずいぶんと変なものを欲しがるんだね。聡美、そんなのあったかな?」
「盾は機動隊で試験採用していた盾があったはず。でもこん棒はちょっと思い浮かばない」
「盾があれば結構です。こん棒は現場で用意するなりしますので。でもよくそんな盾がありましたね?」
「第3課が勝手に置いていった。だから壊しても構わない」
「ありがとうございます」
俺は盾を手に取り確認する。円形で大きさは70cmほどありそうだ。腕を通すバンドが付いていてその先に握りが付いている。これでいいな。重量は少し軽い気がするが、今の俺にはこれぐらいでちょうどいい。さて準備は終わった。駐車場に向かおう。
駐車場に着くと、考古部のメンバーが黒いワンボックスの周りで準備をしている。忙しそうにしている皆を手持ち無沙汰に眺めていたが、作業は終わったようで皆がワンボックスに乗り込み始めた。最後に直哉が助手席に乗り、運転手の可児先生は皆乗ったのを確認して車を出発させる。可児先生は運転しながら現状の説明を始めた。
「状況を説明する。質問は説明が終わってからするように。
先ほど、第三課から救援の依頼があった。場所は、設楽山中腹の閉鎖されたレストランだ。最近設楽山で行方不明事件が頻発していて、その調査に向かった所、犯人と思われる敵性体と鉢合わせしたようだ。救援を依頼してきた第三課のメンバーが敵性体に包囲されているところから、相手は相当に数が多いと思われる。他の第三課のメンバーも現場に向かっているが、時間がかかるようなので我々が先着するだろう。我々の目的は、敵性体の包囲を破り第三課のメンバー4名を救出する。可能であれば敵性体の排除も行う。質問はあるか?」
え、モンスターってパーティーを包囲できるぐらい出るの?それを情報封鎖できてるってすごいな。
先生の問いかけに対し、部長の質問が飛んだ。
「敵性体の情報はありますか?また敵性体の数はわかりませんか?」
「人型で槍や刀など近接武器を持つ者が多いらしい。弓や単発銃でも攻撃を受けたようで注意するように言っている。数はざっと見ただけで30体はいるようだが、詳細はわからないとのことだ。今わかっているのはこんなところだ」
「ありがとうございます」
「他に質問は?質問がないようなら待機だ。あと20分もすれば現場に着くぞ。加賀谷、いつものを頼む」
その可児先生の言葉に頷いて、直哉が手を複雑に動かし始める。あれって賢者魔術か?
おそらく天空の眼の魔術だ。直哉が中級魔術師だったとは思わなかった。ていうかこちらでも賢者魔術があるのかよ。前の世界とこの世界って結構つながりがあるのだろうか?あとで直哉に聞いてみよう。
でもあの魔術が発動しているなら安心できる。不意打ちされることはないだろう。あれは術者の頭の中に周辺の地図を投影させ、敵や味方、術者によっては罠まで地図上に表記させるサーチ系上位の魔術だからな。
さて俺も今できることをしておくか。といっても神官魔法は賢者魔術のように便利な魔法は少ない。しかも俺が使える魔法が減っている現状では、祝福ぐらいしか選択肢がないな。掛けられた対象に幸運を与えるという良い魔法なんだけど、儀式魔法だから事前に15分ほどの準備がいるし、かつ効果が目に見えにくいことあって、人気のない魔法だったな。俺は効果の高さと非常に神官っぽい魔法だったから愛用してたけど。
さて手札は少ないが出来ることをやっておこう。俺は魔法を行使するため、集中を始めた。
暗い山の中を走っていた車が止まったのは、レストランらしき建物の100mほど手前だった。他の部員は車から降りて、最終チェックと内部の第三課と連絡を行っているようだ。
俺も丈夫な棒状の物がないか周辺を探すと、白っぽい手ごろな長さの木の枝を見つけた。重さもちょうどいいし、振り回してみたりしたが問題なさそうだ。これにしよう。
「ヒロ、本当に木の棒で戦うつもりなの?」
「これは護身用だよ、できれば攻撃は俺以外の人に任せたい。マジで」
「あはは。そうだね、任せてよ。でもそういえばヒロの話は部長から少し聞いたけど、僕の使える術について説明してなかったね?」
「ああ、賢者魔法だろ?中級魔術まで使えるなんていい腕じゃないか」
直哉は顔色を強張らせて、俺に詰め寄った。
「なぜ我が魔術の真の名前を知っているんだ?どこで聞いた?本家すら知らないんだぞ」
まずい、これ直哉の地雷か。「賢者魔術」が地雷ワードとかわからねーよ!
クソっ、突入まで時間がない。
だがパーティー内に俺が不注意で作ってしまった不振の種を放置して置くのはまずい。
やっちまったことは仕方がない。俺が知っている理由を話して誤解を解かないと。
「今からいう事は全部マジだ。後で名取川家に確認してもらってもいい。だから信じてくれ」
俺は直哉に自分の前世の話を端折りながら語った。
そして前世で仲の良い賢者魔術師がいたのでいろいろと賢者魔術を知っていたこと。
そのため直哉が使った魔術を判別することができた事を説明した。
直哉はかなり驚いていたが、納得はしたようだった。特に名取川の名前が効いたみたいだ。
名取川家の皆さんにはマジで頭上がらないな。
見捨てられないように、貢物を増やす方法を考えないと。




