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遺言

 結局例の代官のいる街に泊まる事になった。ここより先となると随分遠いし、日も暮れたのにこれ以上移動したくなかった。


 宿帳にはアネット・ロンと書く。エレナ・フォン・コンツと書いて、もし後で代官が見たら、エレナ・フォン・コンツとアネット・ロンとアネット・ド・アンジュとが同一人物とばれて、わざわざ偽名を用意した意味が無くなる。


 それにしてもさっきのあれは不味かった。あの場にいた村人のうち何人が「アネット様」の意味が分かったんだろうか?下手すると養家にその事が伝わって帰りにくくなってしまう。弟妹まで「アネット様」呼ばわりしだしたら泣いちゃうかも。


 宿には他の泊り客は少ししかいない。噂話をする客もいなかったので早々に部屋に戻った。


 さて、義母おばさんから渡された義父おやじさんの手紙を読んでみますか。


 もう義父さんがセリーヌ様を殺したのはほぼ確定だし、気持ちを切り替えないとやってられない。


 手紙の封をナイフで切って読み始めた。



「よう、アン。お前がこの手紙を読んでるって事は俺が死んだか、それともお前が成人して家を出たって事だろう。その機会に俺がこれまでお前に知らせる事が出来なかった事を伝えておこうと思う。


 今一人か?周りに人がいるなら直ぐこの手紙をしまえ。この手紙は一人で読め。これは大切な事だ


 まずお前に謝らなきゃならない事がある。お前の本当の母親を殺したのはこの俺だ。驚いたか?怒ってるか?敵を討ちたちゃ掛かって来い。俺がもう死んでるなら、敵討ちは諦めろ。


 俺がお前の母親を殺したのはそれが仕事だからだ。俺は暗殺者だったんだよ。俺は仲間と一緒にお前と母親の乗った馬車を襲撃した。馬車に乗り込んだ俺はお前の母親をナイフで殺した。お前も殺すはずだった。でもアデールと同じ位の年のお前を殺せなかった。不覚悟って奴だな。


 俺はお前を連れて逃げた。その時将来お前の身分の証となるように、お前の母親が付けてたペンダントを持って行った。お前がいつもつけてるやつだ。そいつを大事にしろ。ここぞという時まで人には見せるな。


 俺はそのペンダントの上にある突起を押したらペンダントが壊れると言った。あれは嘘だ。確かに突起を押したらペンダントは割れるが、反対側の蝶番でつながってるから壊れない。閉じれば元通りになるから安心して開けて良い。


 ペンダントを開けたら中に絵があるだろう。その絵はお前の母親じゃない。お前の母親が持ってたペンダントだ。多分お前の母親の母親、つまりおばあちゃんか誰かなんだろう。それより大切な事は反対側にある紋章だ。それは王家の紋章。つまりその絵の人物は王族なんだよ。


 お前の本当の母親はセリーヌ様と言う。シャルル王の妹君だ。つまり、お前は王の姪ってわけ。どうだ、驚いたろ。


 セリーヌ様の旦那はエリック様と言う。先のアンジュ公爵だ。よく覚えておけ。セリーヌ様とお前を殺すよう依頼したのはそのエリック様だ。つまりお前を殺そうとしたのはお前の実の父だ。


 何故エリック様がお前達を殺そうとしたのかは分からない。分かっているのは俺がお前の母親を殺して暫くしてエリック様が屋敷の塔から落ちて死んだって事だ。世間ではセリーヌ様とお前が死んだので絶望して自殺したとか言われてるが俺は信じない。当たり前だ。お前達を殺すよう言いつけたのは当の本人だ。


 俺には公爵家の内部事情なんか知らない。ただ一つ言える事はお前の正体を公爵家の連中に知らせる事は危険だって事だけだ。おれはエリック様が自殺したなんて信じない。あれは絶対殺されたんだ。


 お前の両親の死についてもっと知りたいと思うなら注意しろ。お前を始末したいと思ってるのはエリック様だけとは限らない。お前には身を守る術を教えた。暗殺者から身を守る護身術だ。もっと研鑽しろ。自分の身を守れるのは自分だけだ。


 もしアンジュ公爵家の身内でいるより王族でありたいと思うなら王都に行け。王都で信用できる力ある貴族を探してペンダントを見せろ。お前の伯父であるシャルル王の下に導いてくれるはずだ。


 お前はもう自分で自分の道を決められる年のはず。どちらの道を行くか自分で決めろ」


 ……何これ。義父さん酷い。いい加減悪い事は予想して構えてたはずなのに、こんなのって。


 何故私の本当の父親が本当の母親と私を殺そうとするのよ。


 それを実行したのが私を育ててくれた義父さんだなんて。


 酷い、酷い、酷すぎる。


 あんまりだ。


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