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再会

 当たり前だけどヨハン様は全然気づかなかった。ほっとしたと言うか、心配しすぎ。あんなに人が一杯いて、馬に乗って前向いてたら、背の低い私の事なんか気づくわけない。


 それにしてもピカピカの金属鎧に汚れ一つない旗。戦闘したとはとても思えない。西から来たって事はアンジュ公爵領の方から来たって事だけど、どういう事?


 ま、良いか。戦闘してないって事はアンジュ公爵家とは戦争になってないって事。アンジュ公爵領との間にいくつも領邦があるし、どっかの領主の所でも行ってたんでしょ。もう安心して良いよね。私は悪くない。


 行列が終わって見物人が散り始めると、私も家に向かった。やる事が無いって文句言って悪かったわ。何も無いって事は良い事だよ。帰る家があるのもね。


『ただいま戻りました。ナタリーさん』


『おかえりなさい。アネット様、お客様がいらしてます』


 お客様……!


 ちょっと止めて。何であんたがここにいるのよ、カールさん。


 カールさんは立ち上がると左手を曲げて腹に当て、右手を背中に回して恭しくお辞儀をした。


「カールさん、何やってるんですか、私の家で!」


「アネット様、ご無沙汰しております」


「帰って。もう来ないで」


「アネット様の生活の安寧を乱して申し訳ございません。どうしてもアネット様にお話ししておかないといけない事が出来ました」


「何?」


「お人払いをお願いします」


『ナタリーさん、少し外出してて貰えないですか?内密の話があるのです』


『分かりました。暫く街に行ってきます』


 ナタリーさんが出ていくとカールさんは説明を始めた。


「アネット様にはご迷惑をおかけして申し訳ありません」


「そんな事より早く要件を言いなさい」


「帝国とアンジュ公爵家のと間の事ですが……」


 顔から血の気が引いていく音が聞こえる。


「……和睦しました」


 なんだ。


「ああ、死ぬかと思った。ほんと良かった。でも和睦したんならもう良いでしょ」



「アネット様のご承認が必要です」


「何故?」


「和睦の条件は以下の通りです。


1.アンジュ公爵家は無断でマリー・ド・アンジュの代わりにアネット・ド・アンジュを嫁入りさせようとした事を帝国に謝罪する。帝国はこの謝罪を受け入れる。


2.先にアンジュ公爵家から帝国に渡された1万グルデンは身代金ではなく1の慰謝料とする。


3.ローマへの寄進、2.の慰謝料を除く残金8万グルデンはアネット・ド・アンジュの財産とし、アネットが返還を要求した場合即時引き渡されるものとする。返還要求がなされるまでは帝国に委託される。


4.アネット・ド・アンジュが死亡または帝国により害された場合、帝国は残金と適切な賠償金をアンジュ公爵家に支払う。これが実施されない場合、教皇庁は全キリスト教世界にこの事を公開する」


「ローマが介入したの?」


「アネット様の寄進のお蔭です」


「それだけ?」


「いいえ。


5.以下の合意はヨハン・フォン・ルクセンブルク、アネット・ド・アンジュ、ミシェル・ド・アンジュの署名をもって発効する


以上です。3通の合意文書にアネット様のご署名が必要です」


「何故その3名?」


「この件はヨハン様とアネット様のご結婚に関する事だからです。アンジュ公爵は替え玉を行った張本人ですし」


「ところでランベルト、いえファルツ伯爵も来てるの?」


「ええ。お呼びしましょうか」


「いいえ。それより早く署名して終わらせましょう」


 私は3通の羊皮紙をさっと読んでサインした。アネット・ド・アンジュと。


「これで文句ないよね。もう来ないでね」


「出来るだけ努力します」


 それじゃダメなんだって。2000グルデンは不動産に化けちゃったから、もう持って逃げられない。家賃は年払いだから次は年明け。それまでは手元のお金でしのがなきゃならない。ああ、安寧で平和な生活が遠ざかる。


 大体あの合意、よく考えたら私の身柄に8万グルデンって値段が付いたようなものじゃない。もしこの条文が漏れたら帝国だけじゃない、あらゆる勢力が8万グルデンを狙ってくる。ミシェル様、もっと良く考えてよ。狙われちゃうよ、私。


  さっきヨハン様が騎士団と一緒に来てたのもこの件でしょ。もしこの和睦が成立しなかったら本当に戦争だったんだ。平和と私一人の安全と天秤に掛けたら自分の安全を選んで戦争になるのを放置できないでしょ。


 これは絶対陰謀。ランベルトは安全が欲しければ自分の所に来いって言ってるのよ。なんか腹が立ってきたよ。


 そうだ、カールさんはこの後絶対ランベルトと会うに決まってる。つけて行って陰謀が成立してどんな顔するか見てやろう。


 私は外に出ると扉に鍵をかけてカールさんを探した。いた。私と違って背が高いから目立つ。


 カールさんから少し離れてついて行くと、カールさんは食堂に入った。大衆的な雰囲気のお店。こんな所にいるのかしら?皇帝陛下の隠し子が。


 中に入ると目につきにくい席に座った。カールさんが向かったテーブルにはランベルトと……ナタリー……。


 もう何故とは言わない。ナタリーもランベルトの手の者だったって事。大体マイヤーさんも態度がおかしかった。アネット・ロンの事を噂で聞いたからだと思ってたけど違った。手形を発行したエルマー・フェーンに聞けばどの両替商の所へ行くかなんて直ぐ分かる。


 全部ランベルトがやらせてたって事。2000グルデンで不動産を買わせて持って逃げられなくして、家に手先を送り込む。多分ヤンさんは巻き込まれただけ。だからあんなに怯えてた。


 全部仕組まれてた。私はランベルトの手の中で踊らされてた。


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