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警護再び

 向こうがその気ならこっちにも覚悟があるよ。警護の仕事を再開する。流石に警護に警護をつけるような馬鹿な事は出来ないでしょ。こっそり準備を進めるよ。


翌日朝食を食べてから、行動開始。


『少し出てまいりますね』


『行ってらっしゃいませ』


 何事も無かったように挨拶するナタリーさんにちょっとムカッとしたけど、平静を装った。仕立て屋に向かう。これまでケルンの街を随分ウロウロしたから、場所は分かってる。


『こんにちは』


『いらっしゃいませ』


 今着てる服は古着だから、実はこの仕立て屋の中に入るのは初めて。


『今日はどのようなご用件でしょうか』


『服を仕立てていただけますか』


『どのような物がよろしいでしょうか』


『男性向けのようなものです』


『殿方への贈り物でございましょうか』


わたくしが着るのです』


 なんか店員さんちょっと呆れた顔してるよ。きっと私の事お転婆だって思ってる。まあ良いけど。


『警備の人が着ているようなものです。腰から剣が下げられるようにしていただけますか?見栄えは気にいたしません、丈夫な布を使ってくださいませ。ポケットは蓋つきでお願いします。ボタンで閉じられるように。それと左側の袖の内側に小さなポケットを。これが4本入るようにしていただけないでしょうか。袖のここ、ここ、ここ、ここ』


『これは何でございますか』


『秘密ですのよ』


 物騒だからあんまりはっきりは言わないけど、アウクスブルクで特注で作った小さな投擲用のナイフね。


 それから体の寸法を取られた。出来るのは一週間後だって。


 一回家に帰ってから午後になってケルンに来て最初に泊まった宿に向かう。実は家からそんなに遠くない。


『こんにちは。この前武器預けてましたよね』


『武器ですか?ああ、あの時の。そうしてちゃんとした服装するとまるで別人ですね。直ぐ持ってきます』


『いえ、今は結構です。それであれまだ暫く預けておけますか?』


『保管料月1バッツェンでお受けしますよ』


『それとこの前みたいな衣装も預けたいのですが。仕立ててますので出来上がったら持ってきます。それで、時々ここで着替えられませんか?』


 何か納得した顔つきしてるけど、どんな事想像してるんだろう?


『部屋に空きがある時だけでよければ』


 月1バッツェンって事は、年1グルデン弱。貸してる家の賃貸料が年2グルデンだから結構高いね。


 1バッツェン銀貨を渡した。それから宿の食堂に行って見ると、まだ早い時間なのに飲んでる男の人がいる。恰好から言って、警護の仕事が終わった所かな?長剣さしてるし。


『こんにちは』


『こんにちは、お嬢さん。何か用ですか』


 良かった。まだそんなに酔ってない。


『ちょっとお伺いしたいんですが、隊商の警護の仕事をされているのですか?』


 納得した顔をして答えた。


『そうです。警護役をお探しですか?』


 警護役になりたいんですけど。


『警護の仕事は普通どういう風に受けられるんですか?』


『普通は城門のすぐ外にある口入屋から受けます』


『どうもありがとうございました』


 なんかこの人がっかりした顔してるけど、妙な期待持たせちゃったかな。


 家に帰る途中にホントに城門のすぐ横に口入屋らしい建物があった。多分今この格好で行っても相手にされないから、服が出来たら行って見ようっと。


 翌日は木の棒を削って剣術の稽古のための木剣を作った。やっぱり握りが無いと感じが違うから。でも実際に人を切ったり刺したりした事はない。


 いつもは遠距離から銃か弓。剣による戦闘だとやっぱり男の人の腕力にはかなわない。だからギリギリまで迫ってきた時、ナイフ投げて相手の動きを止めて逃げる。それなのに何故かナイフ投げって役に立たないっていつも言われる。男の人にはこの私が、か弱い乙女だって分かってない。


 女の子の悩みはやっぱり女の子にしか分からないよね。


 服が出来て口入屋の入口に来た時、中から意外な話が聞こえてきた。


『そう言われましても、女性の警護なんかいないです』


 何々?どうしたの?なんかおいしそうな話が聞こえてきたんだけど。


『でもお嬢様は14歳ですし、男性の警護だと心配で。警護役が狼に化けないかと』


『大丈夫ですって。うちで紹介する警護にそんな人はいません。そんな事すれば次から仕事がなくなりますから』 


 中に入ると中年女性とフードのついたマントを来た女性?が口入屋の人とおぼしき男性に食って掛かってる。


『あのー、お話し中申し訳ありません。今女性の警護役をお探しって仰いました?私女性ですけど、警護の仕事探しているのです』


 三人が一斉にこちらを向いたよ。


 口入屋の男性に上から下までジロジロ見られた。


『あんた、名前は』


 お客さんに対するのとは随分態度が違うけど、まあそんなものですか。


『アンです』


『警護の経験は?』


『アウクスブルクからフランクフルトまで1回だけですけど』


『ダメダメ。素人紹介したらうちの信用に関わる』


『そう言われますけど、誰でも最初は素人ですよ。私は義父おやじさんに10年も戦闘訓練受けてきましたよ』


『親父さんの名前は?』


『セザール・ロン』


『知らねーな』


『義父さんは傭兵でした』


『傭兵は集団戦闘が中心だろ。このご婦人方はニュルンベルクまで行きたいそうだ。警護一人分しか予算がないんだと』


『警護一人でなんて無理です。私がひと月半前に通った時は、あの辺は誘拐団が出るそうで、隊商3グループ合同で24人の警護付きで、それでも襲撃されましたよ。撃退しましたけど』


『だそうですが、どうしますか?』


 その時入口から男性が入ってきた。あれ、この人見たことある。確かヤンセンさんのグループの人だ。


『おやっさん。ちょっと直ぐ一人なんとかならないか。情けない話だけど、うちの隊長が飲みすぎて転んで腰打っちまって立てないんだと。このままじゃ違約金だ』


 なんか前と同じ事言ってるね。


『こんにちは。また欠員ですか?』


『あれ?アネットさん?どうしてここに?』


『フランクで別れた時ケルンに行くって言いませんでしたっけ?』


『なんかそんな事言ってた気がする』


『今はここに住んでるんですよ』


『でも、ここに居るって事は仕事探してるの?ならうち来ない、あんたなら大歓迎だよ』


『どこまで行くんですか?出発は今直ぐ?』


『明朝、そこの門の外に集合。行先はニュルンベルクなんだけど、相変わらず危なくって。今度は警護30人だよ。向こうに半月いて折り返して戻って来る予定。ひと月半後ならヤンセンさんの腰も治ってるんじゃないかな?』


『おい、アイマー、その子と知り合いか?』


『この前言ったろ。走ってる馬車から銃で狙撃しまくって賊を撃退した名手がいるって』


『なんか言ってたな』


『この子だよ』


『ほんとかよ、こんな小娘、失礼、女性が?』


『ひょっとしてアネット・ロン様?』


 この女の人なんで私の名前を知ってるの?しかも様付けなんて。


『そうですが、何故私の名前をご存じなんですか?』


『人が沢山いるのでここではちょっと』


『そうですか』


『アイマーさん。この二人もニュルンベルクに行きたいって言うんです。隊商に便乗出来ないか荷主に聞いてもらえないですか。もし良ければ、私の行きの分はこの人達が出してくれるそうですよ』


『ちょっと聞いてくる』


『もし駄目なら私も一緒に別口を探すことになると思いますよ』


 アイマーさんは大慌てで出て行った。


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