第22章 親友を遺して
激しく咳き込んで、僕は大量の血を吐き出した。息が苦しい。身体中が痛い。やっぱり僕は死ぬんだと思った。カミーが麒麟に何か言ってる。麒麟は首を横に振ってる。予言のおばあちゃんが言ってたことは正しかった。僕はここで死ぬんだ。でも、僕どうなっちゃうの? 独りでどこへ行くの? 置いていかないで。僕を一人残して皆が歩いて行ってしまうみたい。そんなの嫌だ。僕のこと忘れちゃうの? 僕はこの世界からいなくなったことになんてならないよね? 僕はここにいたんだよね?
姉さんが泣いてる。カミーも僕を泣きそうな顔で見てる。僕がもっとしっかりしていれば皆もっと笑顔でいられるのかな。
「僕は、恨んでなんかないよ……」
姉さんに言いたいこと、言わないと後悔すること、全部言葉に出した。精一杯強がって、せめて皆に笑っていて欲しくて、涙は見せないでいようと決めた。
また息が苦しくなって、体の中から何かが込み上げ、たまらず咳き込んでまた血を吐いた。また吐いちゃった。また、いっぱい吐いちゃったよ……。吐いた血が怖い。僕が死に近づいていることを否応なしに理解させられてしまう。息も苦しいままだ。必死で吸っても、肺に血がたまっているのか、苦しいままだった。
「そんな、そんなこと、言わないで、イアン……」
姉さんが顔を歪めてる。僕が恨んでるなんてそんなこと考えないで。僕ね、本当に感謝してるんだ。姉さんがいてくれたから僕は今ここにいるんだ。
文字を教えてくれたこと、守ってくれたこと、僕を助けてくれたこと、1つずつ一生懸命残さず伝えた。
僕がいなくなって、そのあと苦しむことがないように。言えないままじゃ、僕は絶対後悔する。それに、この言葉が、僕が生きた証になってくれるんじゃないかって思うんだ。そしたら少しぐらいこの不安が薄れるかな。ねぇ、姉さん。姉さんは僕のこと忘れない? 僕は忘れたくないよ。忘れないでいられるのかな。




