第22章 親友を遺して2
「カミー……」
ますます苦しくなって、僕は自分でも恐ろしいほどに小さくか弱い声でカミーを呼んだ。
「やだよ。だって、だって、せっかく、これから一緒にいられるっていうのに……」
僕は明るいカミーが好きなんだ。だけど親友だからせめて本当のことを伝えておきたい。
「僕、知ってたんだ。予言のおばあちゃんに、自由を手にできるけど、その時、僕は死ぬって、言われてたんだ」
息がより苦しくなるほど僕は死を感じた。でも、せめて僕は皆の頭の中で明るくて元気でいた方が記憶に残るんじゃないか、そう思う。笑っていた方が、皆を苦しめることもないのなら、僕は精一杯強がろう。
「僕、幸せだったよ。だから死ぬことなんて――」
そんな僕にカミーが泣いて怒鳴った。
「かっこつけないでよ!」
僕は、一瞬心の中が見透かされたのかと思った。
「死ぬのが怖くないわけが、そんなわけがないじゃないか!」
なんでカミーはそんなに僕のことを理解してくれるの? だから死にたくないんだ。こんなに僕のことを理解してくれる親友と離ればなれになるのが嫌なんだ。そう思うとこらえていた気持ちが溢れ出した。嫌だよ。怖いよ。辛いよ。助けてよ。どうしようもない気持ちが次から次へ溢れて、僕はカミーに泣きついた。
「本当は、怖い。怖いよ」
カミー、僕は君の記憶に残る? 僕が死んだ途端その記憶がなくなったりしない? 僕が生きてたって、一緒にいた友達だって、何年も覚えてる? 記憶なんて曖昧だから、だから僕は自分の存在が不意の事故なんかで消えてしまうのが怖かった。
「死にたく、ない。カミー、ずっと一緒に、いたい」
ここでお別れなんて嫌だよ。やっと、ここまで来たのに。やっと、自由が手に入ったのに。
また咳き込んだ。さっきより、血の量が増えてる気がする。なんだか、視界もさっきより暗くなってる気がする。怖いよ。もう限界なの? 僕、もう死ぬの?
「イアン!」
怖いよカミー。そう言いたかった。でも、声がうまく出なかった。いや、声をだす程の力がもう入らなくなってきているのだと思った。お腹に力を入れて、僕は大声を出す気持ちで声を出したが、それはまたか弱い、今にも消えそうな声だった。
「カ、ミー」
カミーが、僕の言葉に耳を澄ませる。
記憶だけじゃなくて、僕はなんにでもすがりつきたかったんだろう。来世を信じたことはなかったのに、僕はカミーに尋ねていた。
「もし、生まれ変わることが、できたら、また、友達になってくれる?」
瞼が落ちていく。もう、ダメかもしれない。
「当たり前じゃないか。だって、僕らは、唯一無二の友達なんだから」
カミーが、そう答えてくれた。なんで来世だとか言う考え方があるのか分かった気がした。まだ終わりじゃない。そう思えたら心がなんだか楽になる。カミーとはまた次会えるのだから。そういうことだろう。死ぬのが怖くなくなったわけじゃないけど、どこか不安が和らいで、
「良かった……」
と僕は言った。そうしたらいつの間にか力が抜けて、一秒ほどで急に視界が暗くなったかと思うと、そのうち何も見えなくなった。




