第19章 死闘5
レインが飛ばされれば部下達がすぐにその穴を埋め、部下の穴はレインが埋める。今までそうやって戦ってきたように。何度殴り飛ばされようが、弾かれようが、体中が痛みに蝕まれようが、レイン達は必死に斬り込んでいった。刃を交えて羅剛神の状態がどうなのかをお互いに探る。同時に倒す事ができなければその時点で勝利は一気に遠のいてしまう。
剣と真っ向からぶつかった瞬間、レインの刀が真っ二つに折れたが、
「大佐!」
と、即座に部下が投げて寄越した刀をレインは振り返ってつかみ、その流れのまま振り切った。宙に激しく火花が散る。その一方で攻撃は目に見えてレインが押されていた。
「なぁ、怒の羅剛神よ。妾は今嬉しいぞ。こんなにも愛を受けて嬉しくてたまらない」
「歪んだ愛を我輩に語るな。鬱陶しいことこの上ない」
突然愛の羅剛神が攻撃を停止し、怒の羅剛神に体を向けた。
「そうだ。お前もまた妾の愛が羨ましいだろう? 妾もお前の受ける愛が羨ましい。1つになれば問題がない、そうは思わぬか?」
「貴様、我輩に剣を向けるか!」
羅剛神が向き合う姿を見て、レインはいち早く察知した。
「そいつはその羅剛神を殺して力を統合するつもりだ! 同時に倒さなければ!」
その言葉にいち早く動いたのはクランだった。より近い場所にいたからこそ愛の羅剛神に向けて疾駆し、レインもまた一瞬遅れて駆けた。
「妾は悲の羅剛神と共にいる。お前とお前の中の喜の羅剛神も妾に愛をおくれ」
怒の羅剛神は斬りかかってきた愛の羅剛神の剣を真っ向から受け、金属音が鳴り響きながらぶつかり合った。そこへ駆けつけたレインらは愛の羅剛神に的を絞ってぶつかっていくが、片腕でいなされてしまう。その間も怒の羅剛神への攻撃は続けられていた。
「失われた顔の分まで妾が生きてやる。その者達の愛も妾がいただくよ」
愛の羅剛神の剣は突如力を増し、2本の剣を交差させるように受けた怒の羅剛神の剣を同時に弾き飛ばした。
「これでお前も妾と一緒」
その瞬間、愛の羅剛神は怒の羅剛神の胸を剣で貫いた。亀裂は瞬く間に末端まで走り、怒の羅剛神は怒声と共に完全に崩壊した。
レイン達の目の前に堂々と立つのは、全ての力を手に入れた愛の羅剛神だった。
圧倒的な力だった。振り受けただけで弾き飛ばされ、レインでさえ剣を目で追い、防御に徹するので精一杯だった。壁に激突して地面に倒れたレインは、立ち上がろうとしたがうまく力が入らず壁に手をついた。手は震えて握力が乏しくなり、息も上がっている。頬を次々に汗が伝い、限界に近かった。
「頼む、もう少し、私のわがままを聞いてくれ」
刀を握り直した。もう一度戦う仲間の元へ駆ける。瞬きをする間もないほどに速い一振りが目の前で血飛沫を生み、悲鳴が響き、部下の体が崩れるように倒れる。
「下がれ!」




