第19章 死闘4
絶対に退けない背水の陣での戦い。ここで退けば仲間が死ぬ。ただ、立ち向かう相手に勝てるかは分からない。それでも、2人の目に敗北など見えていなかった。あるのはただ、仲間全員生きて帰る、それだけだ。イアンが帰ってくるのが遅いことから、麒麟を頼りにする事はできないと悟ったレインは、体の痛みを感じながらも強く刀を握り直した。そうして、今にも息絶えそうな仲間達に向かって声を発した。
「お前達は私の自慢の部下だ。私はお前達が逃げようと責めるつもりはない。私は全員を守ることはできないし、全員死ぬかもしれない。逃げるならこれが最後のチャンスになるだろう。……それでも私についてくる覚悟があるなら、最後まで私の後ろをついてこい!」
レインの後方でそれに応える声が上がった。重傷を負いながらも、1人はまだ動けると言って進んで立ちあがり、救護を行っていた部下は動けずにいる仲間に言葉をかけて刀を借り、遅れて並んだ。動けるのはレインとクランを含めて六人。レインは迷いのない決意を秘めた瞳で羅剛神を見据え、部隊長として指示を出した。
「私とクラン2人で前に出る。アイデン、ローガン、ケリーは私と、イサック、ジョシュア、グレイはクランと戦え」
応答が聞こえると、レインはクランに1度だけ視線を送った。
「クランは左を。私は右をいく。無理だと思ったら距離をとれ。私もそうする」
「お互い助け合って、ってことだな」
レインは刀を持つ手に力を入れた。
「そうだ。死ぬな、絶対に」
「了解!」
クランが怒の羅剛神、レインが愛の羅剛神に向かって飛びだしてすぐ、金属がぶつかる音が響いた。
「悲の羅剛神の愛をもらったのか! お前の愛を妾にもおくれ!」
愛の羅剛神は剣を振り回してレインに一太刀浴びせようと迫ってくるが、大振りになった隙をついてレインは斬り込んだ。愛の羅剛神も反応して振り下ろすが、レインはすかさず距離をとって回避すると、タイミングをずらしてから一気に距離を詰めて切り上げた。刀が金属のような愛の羅剛神の体に当たる度、レインは顔をしかめた。悲の羅剛神との戦いで蓄積した衝撃により、レインの腕に痛みを発生させているのだ。その一瞬の間に愛の羅剛神が振った剣の速度と力は悲の羅剛神よりさらに増しており、レインはなんとか反応したものの、肩が軽く切り裂かれた。先程と劣らない動きをしているというのに、レインの動きが鈍ったように見えるほど愛の羅剛神の速度は上がっている。
「まさか、こいつら倒せば能力が移っていくのか?」
レインが先に斬り込んでも愛の羅剛神が遅れをとらずに受けてしまう。そんな愛の羅剛神に一太刀浴びせようとがむしゃらに向かっていく部下に対し、
「無理に突っ込むな!」
と、なんとか部下を斬撃から護り、すぐに斬り込んだ。
「クラン、あいつは一体ずつ倒すと力が残った羅剛神に移っていく。先に片方を倒せば更に強くなるぞ」
レインの側にクランが来た瞬間、2人は素早く作戦を立てる。
「ってことは、同時に倒さないとまずいってことか」
「そうなる。お前達は同じ羅剛神を狙え。私とクランで交替しながら戦い、同時に倒す」
悲の羅剛神の時よりも簡単に受けられるが、レインは鋭い目つきのままぶつかっていった。




