第19章 死闘6
レインの指示に従おうとした部下達は愛の羅剛神の剣により容赦なく切りつけられた。レインはすぐに刀を振るうが、子供を相手にするように簡単にいなされ、刃がかすることもない。むしろ、斬り込んだレインの方が間合いを詰められ、防戦一方となった。刀でなんとか軌道をそらすものの、レインの反射神経をもってしても間一髪で避けるのがやっとの状態であり、一瞬遅れて力を受け流しきれなければ、すさまじい力に弾き飛ばされて壁や地面に体を強打した。体勢を立て直す時間などあるはずもなく、すぐにレインの頭目掛けて突き出される剣を、間一髪避けることで直撃を免れる。部下達がレインを助けようと向かってくるも、もう片方の手で振られる剣に次々と倒れていった。首の肉が薄くスライスされてもレインは刀を振って応戦する。
「下がっていろ!」
その指示の隙に間合いを詰められ、目の前に剣が迫る。それをいなしたのはクランだった。刀が少しぶつかっただけでクランの体は飛ばされ、5メートルほど地面の上を転がった。部下達に気を配るどころか、満足に息を整えることすら許されず、レインは全神経を集中させて一撃一撃を受け流した。受け流しているとは言っても、蓄積した衝撃がさらに腕の痛みを増加させ、意識的に何度も刀を握り直した。肩で息をしながら次々襲いかかってくる剣からなんとか身を護る。レインに気を取られたその時を狙って愛の羅剛神の死角からクランが飛び出した。タイミング、場所、共に完璧だった。相手が人間だったなら。
愛の羅剛神の顔が突然180度回転し、防御に切り替えたはずのクランの胴体を深く切り裂いた。直撃だった。
レインは目を見開き、一瞬完全に思考が停止した。
「クラン!」
レインが叫ぶようにクランの名を呼んで少し遅れてから、遠くでクランの刀が落ちた音が響いた。クランはこらえきれず地面に手をつく。深々と刻まれた傷を片腕で押さえ、痛みに耐え、喘ぐように息をしながら迫る愛の羅剛神を睨む。クランに狙いを定めて剣を振り上げたところでレインが斬り込んだ。立ちあがろうとしてクランがその場に倒れたことに気づき、レインが目だけで周りを見ると、立っているのはレインただ一人だった。血まみれの部下達が倒れ、目でレインの姿を追っている。勝敗は歴然だった。愛の羅剛神は息絶えようとする部下達の方へと体を向ける。
「妾の愛が届かなくなる前に届けてあげようではないか」
聞こえなくてもレインは理解していた。瀕死の部下の息の根を止めに行くのだと。足が震え、何度握り直しても刀を持つ手が勝手に緩む。息もあがり、身体中に蓄積した疲労とダメージが容赦なくレインに押し寄せる。今にも倒れてしまいそうな体だというのに、レインは立つ。もう一度刀を握る。倒れている仲間を見まわして力を込める。
「さ、せるか……。この、化け物が!」




