第19章 死闘
レインは悲の羅剛神、クランは喜の羅剛神、部下達は怒の羅剛神と愛の羅剛神に対峙していた。自他の力量を考えると、それが最善だというレインの判断だった。
「私とクランで2体の羅剛神をやるぞ。簡単ではないが私達で数を減らすしかない」
4体相手にするのでは時間を稼ぐどころではない。分裂したのはレイン達にとってむしろ好機だった。勝機があるのはレインとクランの2人。部下達は時間を稼ぐのがやっとだ。
「4体相手は骨が折れそうだけどな」
レインはふっと笑って、一気に悲の羅剛神の元へと飛び込んだ。刀が剣にぶつかり、火花が散った。羅剛神はまたしても力でレインに攻めるものの、レインは剣を受け流すだけで、先ほどのように受けようとはしない。流れるように悲の羅剛神の剣を避けて、腕に斬り込んだ。刃はかろうじて視認ができるほど速く、刃が空を滑る度に風を切る音がしては、激しくぶつかり合った。火花が散り、金属がぶつかる音が連続して響く。心を押し殺してイアンに向けていたものと一変して、今のレインの太刀筋には一切の迷いがない。一振りの速さが全く違っていた。ただ護るために振るう迷いのない力強い剣術。
「こんなに生きがいいのに、拙者に殺される運命とは悲しいものだ」
悲の羅剛神はそういって片腕でレインの刀を受け、もう片方で攻勢に出た。レインの刀から出る音とは違い、悲の羅剛神の剣は振るう度に重量を感じさせるような低い音を発している。それは鉄の棍棒を振るっているような音であった。
レインは鋭い視線で悲の羅剛神の太刀筋を見極める。同時に2本の剣を目で追い、素早く反応して剣をいなすが、剣は重量がある分振る速度が速くなるほど遠心力を伴って接触した際の力が大きくなる。受け流してはいるが、一撃一撃は確実に刃を伝ってレインの腕に衝撃というダメージを蓄積させていた。
互いの刃は激しくぶつかり合う。レインは二刀流の相手にしても臆することなく冷静に切り結ぶが、無駄な動きがないとはいえ体力を消耗していくのはレインだけだ。次々に振り下ろされる剣の軌道を逸らしきれずに腕が切り裂かれ、血が腕を伝った。
「可哀想に。お前はこれから拙者に切り刻まれて殺されるのだ。これだけの強者、なかなかおらぬのにここで死ぬとは哀れなものだ」
その声は決してレインに届かないが、今までイアンのことを想い、接してきたレインにはなんとなく伝わっていた。人間の言葉は幻属に伝わるだけで幻属から人間に伝わることはない一方通行。それはイアンも悲の羅剛神も同じなのだ。




